【天才王子の赤字国家再生術 4~そうだ、売国しよう~】 鳥羽 徹/ファルまろ  GA文庫

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妹が帝国で大丈夫か心配すぎる!


「心配だああああああああああ! 」
新たな皇帝を決めるため、三人の皇子による会談が持たれることになったアースワルド帝国。
ロウェルミナ皇女からその舞台となるミールタース市に招待されたウェインは、これを華麗にスルー。するはずが、なぜか代わりに妹姫のフラーニャ王女が出席することに! 一体、どうしてこうなった!?
懐刀のニニムを付けて送り出すも、不安のつきないウェインは結局自らも帝国に向かうのだが――
新たな外交の舞台で待ち受ける旧友たちとの再会。燻る戦争の火種。そしてもう一人の怪物が歴史の舞台に姿を現す、弱小国家運営譚第四章、開幕!

妹であるフラーニャ王女が最大のウェイン×ニニム派閥の領袖というのはポイント高いよなあ(なんの?)
だが待って欲しいフラーニャ姫、実はロワ皇女も実は何気に濃厚なウェイン×ニニム派なのですよ? ただチビっとそこに自分の分の席もお裾分けいただけたら、という嗜好があるだけで。
というわけで、これまでウェインやニニムのマスコットで癒やしという立場だった妹姫フラーニャが、一躍王族として外交デビューするお話である。そこで、彼女もまた「あの」ウェイン王子の妹だ、と評され讃えられる才能を開花させていくことになる。
ウェインと違って才気煥発という風情ではないフラーニャ。これまで王国内で大事に育てられてきた彼女は、王族として仕事を任せられるのはこれがはじめて。なので、ウェインの代役として会談に出席して面通しするのがお仕事で、それほど難しいことは求められていなかったんですよね。求める方がこの場合おかしいわけですが。それでも、王族が出席するだけでこの場合は十分だったわけです。ミールタースの市長やロワ皇女という曲者たちを相手にして器用に立ち回れるはずもなく、兄ウェインに事前に教えられた通りに振る舞うだけで精一杯、帝国の皇子たちとの面会では自分を保つだけでも一杯一杯だったわけですが……。
ミールタースで行われている市民会議、その様相に興味惹かれてのめり込みはじめてから、彼女の成長がはじまるのである。ウェインと違って智謀策謀を巡らすような性質ではないフラーニャですけれど、いざ何かに集中した時の集中力と理解力、そして一旦こうと決めた時の度には目を見張るものがありました。何より、その真摯さとひたむきさはウェインとはまた全く異なる種類のカリスマだったんですよね。この娘はこの娘で、予期せぬトラブルに対して本領を発揮してしまうタイプだったのか。
それにしても、相変わらずウェイン王子は何もかもが事前の思惑通りに行かないですねえ。いや、実際のところウェインは自分と同じ策士タイプ、それでなくても合理的に物事を捉える人種の思考や行動の予測に関しては神がかりに正確なんですよね。武断派の第二王子や陰湿な謀略家の気質である第三王子の動向なんぞはほぼトレース出来ていますし、だからこそその思考を誘導するのも容易くあるわけです。ロワ皇女なんか、ウェイン自身と傾向がそっくりなせいか以心伝心レベルで意図を読み取ることが可能ですし。多少振り回されるきらいがあるとはいえ、その意味でもロワとは相性いいんだよなあ。
しかしその分、論理的とは程遠いバカや狂人相手だと見事に予想の斜め下をいかれてしまうために、毎度そのおかげで大変な目に遭ってしまうわけですなあ。
そして、何気にこの手のバカや狂人が周辺諸国の権力者にわんさと居るのがなんともはや。
しかし、終わってみると帝国内の後継者争いはもはや後戻り出来ないほどの混迷を深めてしまう
一方で、ウェインてば帝国内にしっかりと足がかりを作っちゃう結果になってるんですよね。ロワ派との人脈のみならず、ミールタース市という交易拠点がフラーニャを通じて相当の王国シンパになっちゃったわけですしねえ。
ロワも、前に出た時の宣言からするとかなり野心あらわにガツガツと動くのかと思ってたら……。いや、これを日和ったというのは可哀想ですよね。大国一つを兄弟と争って自分から奪い取って背負うという重圧は、余程の覚悟と野心がなければ躊躇うのも仕方ないものがあるでしょう。彼女自身のモチベーションとなるものが、今のところまだそれほど確固としたものがあるというわけではなさそうですし。その意味でも、以前からウェインを欲しているのは共犯者を欲していたとも言えるのではないでしょうか。あるいは、ウェインがその本心を明らかにすれば、彼が目的としているものに帝位が必要とわかれば、ロワもガチになりそうなんですけどね。この皇女さまも、ウェインとニニムのことほんと好きですからねえ。いずれにしても、皇子会談の失敗によって否応なくロワ派閥の権威はあがっているわけで、いつまで中立でいられるか。ウェインも、後継者争いに無視できない影響力を及ぼすことになっちゃいましたしねえ。帝国留学中に友人となった二人、前に話題になってた連中がついに顔を見せましたけれど、彼らは第二、第三皇子の派閥の一員ということでロワやウェインとは物理的にも組織的にも離れた位置にいるわけですけれど、そこに文官、武官の親しい人物が配置されている、というのが物語上けっこう重要なキーワードにも見えるんですよねえ、将来の布石みたいな。

その前に、もう一度西のレベティア教と本格的にやり合うことになりそうですけど。それに、まだ匂わされる程度ですけれど、南の方でも何やら動いているようですし、どんどん動乱が大きくなっているなあ。
さて、今回もウェイン×ニニム派にはシーンこそ少ないものの美味しくいただける場面があってよかったです。ウェインが過労で倒れたあとのニニムの様子は、普段の毅然とも飄々ともした姿が完全に崩れたものがあって、ほんとニニムはウェイン命なんですよね。
そして、さり気なくフラーニャ×ナナキも実はニニムたちに負けず劣らずいい雰囲気だったりするんですよねえ。ナナキくんもクール少年に見えてフラーニャ命ですし。自分よりも実力上の相手だろうと、フラーニャが関わるなら絶対負ける気なし、というあたり凄く男の子してますし。フラーニャの方もナナキのこと男の子として意識している部分が見受けられるので、こっちも大変ご馳走様なんですよねえ。フラム人関係の問題、是非ウェイン王子には頑張ってほしいものです、妹たちのためにも。

シリーズ感想