【なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか? 4.神罰の獣】 細音 啓/neco  MF文庫J

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英雄シドの剣と武技を継承し「真の世界を取り戻す」決意をした少年カイ。聖霊族の英雄・六元鏡光との共闘で謎の怪物・切除器官を撃破。こうして世界輪廻を招いた元凶は、最後の四英雄・幻獣族のラースイーエに絞られた。一方で、順調すぎる世界の解放に戸惑いを覚えながらも、ジャンヌは幻獣族の支配するシュルツ連邦への進出を決意する。切除器官を従えて暗躍を続けるラースイーエ、存在が明かされた二人の“シド”―「この世界の秘密を知る者たち」とカイたちが邂逅を果たすとき、五種族大戦の影に潜んでいた「真の支配者」が目を覚ます―

バルムンクさん、度胸もあり柔軟性もあり人の話も聞き威厳があり、とほぼほぼパーフェクトリーダーなんだけれど、その分完璧すぎて面白みのない人だなあ、とも思ってたんですが、小さくなった鏡光のお世話係になぜかなってしまったおかげか、フリーダムな鏡光に振り回され突っかかっていなされてと空回りしまくる姿を見せてくれて、なんか好きになってしまいましたよ、この人。なんだろう、この相性の良すぎるコンビは。本来なら長年生存をかけて争った相手同士にも関わらず、漫才コンビのようになっちゃってまあ。バルムンクも真面目すぎて鏡光の自由さについていけてないんだろうけど、その生真面目さは良いツッコミキャラの資質ですよ、うん。
さて、ラースイーエの野望というべきか、他の種族の領域にまで手を出し世界輪廻を招いた元凶として暗躍しているラースイーエに対抗するために、聖霊族とも休戦がなり落ち着いて振り返ってみると幻獣族以外とはある程度休戦状態が成立している状態になったんですよね。悪魔族も今のところはハインマリルを通じて交戦状態からは遠ざかってたし。
とはいえ、切除器官なる異常な敵の出現に意図が読めないラースイーエ、と余計に状況は混迷を深めていたところで、ついにカイもこの世界に元の世界の英雄シドとは違う「シド」が存在していることを知り、その人物を追いかけることになる。
幾つもの世界の謎が明らかになってきたとはいえ、むしろ謎も深まり絡まりますますわからなくなってきた、とも言えるんですよね。英雄シドが正史においてなにをやらかしたのか。その結果とこの世界輪廻後の世界とはどう繋がっているのか。今回、切除器官と融合したラースイーエが新たな世界の改変を行いかけたことからも、世界の在り方が正史とこの世界輪廻後の世界の二つだけではなく、ラースイーエが持ち得た力のように何らかの鍵さえ持っていれば幾度でも世界の在りようが変えられる、とわかったのは……いやこれ、余計に足元不安定な感じになりますよね。
ただ、この状況のメインプレイヤーとなるのは種族の英雄であるラースイーエたちではなく、どうやら預言者に認定された「シド」の名を冠する者たちの方であるっぽいんだよなあ。ラースイーエはこの場合イレギュラーなのか、それとも正式な反逆者なのか。今回のサブタイトルは神罰の獣だけれど、神を罰する獣という意味であるらしいし。
ただこの新しい二人のシドたちって、妙にイキっているし自信満々で自分が一番強いし偉い、みたいな態度が逆に底が浅くてショボそうな気配がしてしまうのだけれど、細音さんの作品の場合こういうキャラはそのとおりに強くて偉いケースが多いので、自己評価通りなのかしら。
ともあれ、新たな第六の種族の出現で余計に既存の種族たちの共闘の流れが出てきたか。なんだかんだとハインマリルとも協力することになったし……ってか、悪魔族明らかにバックに例の人がいそうなんですけど、あからさますぎるw

シリーズ感想