【機甲狩竜のファンタジア 3】 内田 弘樹 /比村 奇石  富士見ファンタジア文庫

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『雲海の塔』の激闘を経て、より強固な絆を得た5号戦車パンターの乗員たち。それと同時に、女騎士・シェルツェをはじめとする少女たちは、トウヤへの好意を自覚しはじめていた。そんな彼女たちの前に、シェルツェのライバル(自称)のアンリが、新戦車『ケーニヒス・ティーガー』と共に立ちはだかる。その一方で、モンスターの大軍が王都に向けて進攻中との情報も入ってきて―。絆と戦術で戦車を駆る少女たちの機甲幻想譚、決戦の時は今!

みんな大好き「ケーニヒスティーガー」の登場である。超重装甲な鉄壁の防御力に一方的に敵戦車の装甲を貫通する火力という無敵戦車の名前を恣にした重戦車。昨今ではアニメ「ガールズ&パンツァー」での活躍も目新しいでしょう。黒森峰女学園の主力戦車として縦横無尽の働きを見せた名戦車。まああんなに動けるわけないんですけどね。
そう、かの戦車の最大の弱点は足回りの惰弱さとエンジンのパワー不足による鈍足。本作でもその点を特に強調して描かれることになってしまったわけで。
いやはや、モンスター相手の四つに組んでの格闘戦を要求されるこの世界で、動くと死ぬ! な戦車で戦え、というのかなり悲惨なんですよね。アンリもよりにもよってなんでこの戦車を、とイイたくなるところですけれど、頑丈さと火力はほんと凄まじく、動かなかったら超強い!というのは間違いなく、ティーガーが防御戦において幾度も連合軍の攻勢を跳ね返したのは間違いない話なんですよねえ。
ただ本作ではちょっとそのへんのティーガーの長所よりも、短所の方にスポットを当ててしまったが故に肝心のティーガーの活躍という観点ではあんまり見せ場なかった気がするんですよね。確かに、装甲厚くてモンスターの突撃にもびくともしない、というのは長所かもしれませんけれど、なんかこうその描かれ方はティーガーに花を持たせるという意味ではなんか違うなー、という感覚でもあったんですよねえ。街道の怪物じゃありませんけれど、ティーガーの華というのはやはりその防御力で敵を寄せ付けず、その圧倒的火力で一方的に敵を薙ぎ払うというものであり、もしくは殿を一両で受け持ち敵の追撃を跳ね返して悠々と大した傷も追わずに戻ってくる、みたいな戦い方を想像してしまうんですよね。
いわゆるパーティー戦闘における前衛タンク役というのは間違っていないのですが、今回の戦い方はなんというか、イギリスのマチルダにでも任せなよ、とイイたくなってしまった泥臭さで、いや足回りの苦労とかも含めてリアリティ重視なんでしょうけれど、パンターも含めて折角戦車という兵器を持ち出してきているにも関わらず、その戦車の魅せ方といてちとエンターテイメント性が物足りなかったかなあ、と思うところなんですよね。戦車ならではの派手なアクションが食い足りなかった感じで。

パーティー内の人間関係もついにトウヤの幼なじみで相棒であったヨシノにスポットがあたったのですが、ヨシノがトウヤに感じていた引け目というのが過去回想も特になく、シェルツェの予想からどうやら事実らしいというところに引きずり出されて、ちょっと唐突感もあったんですよね。せめて、トウヤが片方の目を奪われた時の様子を臨場感たっぷりに描写してくれてその時のヨシノが抱いた情念を描いてくれていたら、もっと感じ入るものもあったのかもしれませんけれど。ちとこの過程だと他人事感があるんだよなあ。肝心のトウヤからしてこのときの記憶がないから、何の話やらという感じもありましたし。
そう、そもそも肝心のトウヤがわりとそっちのけにされたまま、女性陣の間で結論が出てしまったのも主人公置いてけぼりで良いのか、というところもありましたしねえ。ヨシノとシュルツェ以外の二人に関しては、おまけでくっついてきたような無理やりなところもありましたし。
この三巻でしめないといけなくなった、という状況からまとめなくてはいけなくなったというのもあるのでしょうけれど。
モンスターとの共生が必要になる、という世界観の問題についても殴って力を示して話し合い、というのは正しいルーティーンなのかもしれませんけれど、それに説得力をもたせるための蓄積がやはりこの短い期間では足りなかったかなあ。
ともあれ、ここでのノウハウが次のシリーズ【ミリオタJK妹! 】にも活かされたとも思えるので、戦車を登場させるアイデアも含めて、悪くはないシリーズだったと思うのですが、やはり物足りない部分は多々あったのかなあ、と思うところです。

シリーズ感想