【ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード)14】 】 羊太郎/三嶋 くろね  富士見ファンタジア文庫

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リィエルの一件を乗り込え、ようやく訪れた平穏。女王陛下の尽力により数十年ぶりに開催されることになった魔術祭典に、アルザーノ帝国魔術学院、聖リリィ魔術女学院、クライトス魔術学院―アルザーノ帝国の各地から有力生徒たちが結集する。
「世界の大舞台で魔術の腕を競い合ったお祖父様が見たという光景を、この眼で見たいんです!」
その中には、もちろんシスティーナの姿もあり―。帝国代表の覇を競う中、因縁の少女・エレン=クライトスと再会することになるのだが…。選抜会に潜む卑劣な陰謀、そして失われゆく自分たちの未来を解放するため、システィーナは天高く飛翔する!

白猫成長したなあ。魔術祭典の帝国代表選手を選抜するための国内大会、ということでシスティーナの大会での大活躍が描かれる回なのかと思ってたら……えらいまた変則ルートに。いやもう白猫が既に学生レベルを大きく逸脱する実力を持ち得ているのはわかっていました。仮にもアルベルトの助手を務めましたし、イヴにも認められて実戦にも参加して強敵をその手で下しているわけですから。それでも、正直ここまで名実ともに学生レベルではないとは思わなかった。もう学生しか出ない大会では白猫の舞台としては役不足なのか。
その意味では、既に白猫はもう完全にグレンやルミア、リェエルが在籍している暗部の領域に足を踏み入れているんですよね。本当の殺し合いを前にして怖くて身が竦んで何も出来ず泣いてしまっていた白猫はもう本当に過去になってしまったである。実力も精神的にも足りず届かず、親友や大切な人たちが関わっているだろう事件を前にしても、傍観者でいるしかなかったシスティーナ。余裕もなく自分を突き放す人たちに八つ当たりするしかなかったシスティーナ。そんなかつての彼女を覚えていれば、この巻で見せた彼女の結実は胸が震えるような感動がある。システィーナが見苦しくみっともなくのたうち回り、無様に喚き見れたものじゃない姿を晒しながら、それでも一歩一歩着実に学んで、技を身につけ、恐怖を乗り越えて戦いの場に身を投じ、自分を切り売りしながらグレンたちがいる場所に這いつくばりながら登ってきたのを知っている。
知っているからこそ、エレンが言っていたような苦労知らずの天才だなんて、間違っても思わない。真実の修羅場に自ら飛び込み、命をすり減らして飛躍し、そうして開花した今のシスティーナの凄みを、実力を天才の一言で片付けられてなるものか、と言えるのである。
それはただ実力能力だけの問題ではなく、脱出できない永獄ループに囚われて二進も三進もいかなくなって行き詰まってしまったグレンに対して、精神的に余裕もなくして追い詰められた彼の八つ当たりに対して、びっくりするような包容力と理解力を見せたシーンなんか、いやもうどれだけヒロインとしても成長してしまったのか、と度肝を抜かれたのでした。グレンが隔ててしまう日常と非日常の境目を、この娘はもう容易に、無理もせず、相手に無理も強いず乗り越えてくるようになったんだなあ。ただ指を咥えて隔てられた向こう側から恨めしげに傍観するだけだった自分を、この娘はこれほど見事に克服してみせてくれた。もうグレンの中では白猫はセラを思い出させてくれる存在ではなく、白猫の存在そのものがグレンにとっての救いになりつつ在るんですよねえ。ほんと、自力でメインヒロインに相応しい存在感を手に入れてみせたわけだ、この娘は。

とまあ、圧倒的なまでの白猫回だった今回ですけれど、今までにない仕掛けが施されていたギミック的にも面白い回でありました。白猫メインにも関わらず、何気に美味しいところをちゃっかり着実にゲットしているイヴさん、最近目立たないルミアと違って着実にポイント稼いでるなあ。登場当初から貯めまくっていたヘイトも、だいぶ解消されてしまっているのがグレンの態度からも伺えるわけで。いやまじでイヴさん、セラの件で長らくこじらせ固執するはめに陥ってなかったらマジでヒロインとして揺るぎない地位をゲットできてたかもしれないのに、もったいない。

そして、本編の要となるだろう禁忌教典に関わる重要人物がしれっと向こうから飛び込んできて、ストーリーにもギアが入った感じ。そろそろクライマックスに突入するよ、と言わんばかりの伏線が飛び交い積み重なっているだけに、いつ導火線に火がつけられるか、ワクワクする状況になっていました。今回の話も、魔術祭典の代表選手を選抜するための大会で、本番はこれからなわけですしね。楽しみ楽しみ。

シリーズ感想