【公女殿下の家庭教師 3.魔法革命で迷える聖女を導きます】 七野りく/cura  富士見ファンタジア文庫

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王立学校に入学して3ヶ月。アレンは、家庭教師業の傍ら、ハワード・リンスター両公爵家による合同商社立ち上げの責任者という大役を任されることに。公女殿下ティナたちもまた前期試験を控え、慌ただしい日々を過ごしていた。そんな中、ハワード家の次期公爵であり、王立学校の生徒会長でもあるステラは、妹であるティナたちの急成長を目の当たりにしたことで、すっかり自信を失ってしまい―!?
「…兄さん!ステラが…いなくなったんです」
無自覚規格外な教師が、迷える少女の歩む道に灯りを点し、その手を導く魔法革命ファンタジー!

これはステラ辛いよなあ。大事な人からの信頼というのは、嬉しくもあり自信にもなるものだけれど、その信頼を分不相応だと感じてしまうようになると、途端に重荷となってのしかかってくるものなんですよね。特にステラの場合は、その相手となるカレンは親友であると同時にコンプレックスの対象であるから、時として彼女からの根拠のない信頼は暴力となってしまう。
元々、カレンには引け目を感じていて生徒会長という立場にも負い目を持っていて、実家の父親からは認められないと思っていて、それで家まで飛び出したのに思うような実績をあげられず、ステラの内面は相当に汲々としていたように思われる。それでも、表に出さず心の軋みに立派に耐えていたところに、妹ティナの覚醒である。軽々と自分を飛び越えてしまった妹、ハワード公爵家の嫡子としてどちらが相応しいのか誰の目にも明らかな有様になっていまった、と思い込んでしまうステラ。
でも、この状態でもなお、ステラは耐えてるんですよね。自分を律して、妹の解放を喜び、自分ももっと頑張るのだと、自身を叱咤激励して。立派です。妬まず嫉まず、自己の研鑽に思いを馳せるその姿勢は立派の一言。克己心の塊と言っていいでしょう。
それでも、どこかで悲鳴はあげられていたのです。誰かに慰めてほしかった。この辛さをわかってほしかった。自分の弱さを、情けなさを、受け入れてほしかった。
ところが、そんなステラに対してカレンは易易と器の大きさを見せつけて、どちらかというと庇護の対象だった友人のフェリシアも、自分とは比べ物にならない重責を背負いながらその才覚を発揮していることを知ってしまう。もうひび割れぐらつき揺れるステラの心を半ば察しながら、カレンはこう言うのだ。
「ステラは強いから大丈夫」
うん、これは心が折れますよ。実にきれいなへし折れ方でした。なまじ、ギリギリ土俵際で自力で耐えきりそうな様相すらあっただけに、そこから丁寧に幾度も追い打ちをかけて心を折り畳んでいく展開は、いっそ唆るものを感じるほどで、はい。
まあ心折れたからと言って、闇落ちしたりニートの引きこもりになってしまうような娘ではないので、アレンが手を差し伸べればチョチョイのチョイではあったのですけれど。
ティナみたいな外的要因が絡んだ問題が関わっていたわけではなく、純粋にステラのメンタルの問題でしたからねえ。ある意味、一番アレンくんからしたら簡単な案件だったように思います。ガチで闇落ちしていた場合、何気にアレンくんってそういう聞く耳を持たない相手には手を焼きそうな気もしますけど。
しかし、アレンが慕われ懐かれるのって女の子限定じゃなくて、男女の区別なく普通に男の子もアリなのか。何気にティナたちに負けず劣らずの懐きようをみせているオルグレン公爵家の四男坊のギルくん。ワンコ系と作中でも言われていますけれど、この子はこの子で先輩のこと好きすぎるでしょう。アレンも同性なせいか、女性陣に比べても遠慮や気兼ねなくイジっているのが余計に仲の良さを感じさせるんですよね。リディヤがこのギルくんになんか当たり強めなの、完全に男同士仲よさげなのに対する嫉妬ですよね。
しかし、これでアレンてば四大公爵家のうち三家に密接なコネがあるということなのか。まあオルグレン公爵家の方は、ギルくん個人だけで距離がある、どころかちときな臭い雰囲気が流れてはいるけれど。でもまあギルくんのあの優秀さを見てるとそのうち実家を抑えることにもなりそうだし、そうなると国を支える公爵家の中核をなすのがアレンくんになってしまうわけで、なんかナチュラルに王家に対してマウント取り出してませんかね、これ?
むしろ、その気なのがハワード、リンスター両公爵家のご当主さん近辺なだけに尚更色んな意味で包囲網が敷かれていってるような。
ただアレンが相変わらず煮え切らないんですよねえ。リディヤもあれだけはっきりと態度で示しているし、リンスター公爵家なんぞ家をあげてアレンを持ち上げようとしていて、夫人については息子同然と公言しているわけですよ。これでまだ身分がどうのいずれ彼女にもふさわしい相手がだとかグダグダ言ってるのって、ここまでくると不誠実にすら思えるんですよね。だいたい、ちゃんとするつもりがないならあそこまでの度を越したスキンシップ、イチャイチャをしたらあかんでしょうに。
いつまでも理由を探して逃げてたら、男としても主人公としても格を下げてしまいますよ。なので、彼にはもうちょっとはっきりした覚悟を見せて欲しいですねえ、ほんとに。

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