【お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件】 佐伯さん/ 和武 はざの  GA文庫

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藤宮周の住むマンションの隣には、学校で一番の美少女・椎名真昼が住んでいる。特に関わり合いのなかった二人だが、雨の中ずぶ濡れになった彼女に傘を貸したことから、不思議な交流が始まった。
自堕落な一人暮らしを送る周を見かねて、食事をつくり、部屋を掃除し、なにかと世話を焼く真昼。
家族の繋がりに飢え、次第に心を開いて甘えるようになる真昼と、彼女からの好意に自信を持ちきれない周。素直でないながらも二人は少しずつ距離を縮めていく……
「小説家になろう」で絶大な支持を集める、素っ気なくも可愛い隣人との甘く焦れったい恋の物語。
これ、タイトルからしてどれだけ甘やかされてしまうのかと思って読んだら、いや別に駄目人間にされてなくないですか!?
もともと周くん、一人暮らしに対する適性がなくてかなり生活を持ち崩してしまっていたところに、真昼と知り合って何くれとなく彼女のお世話を受けるようになった結果、まともな生活リズムを取り戻しているので、これむしろいつの間にか駄目人間から脱却させてもらっていた件、じゃなかろうか。
真昼も優しいばかりなどではなく、チクチクと毒舌気味に自堕落な生活習慣に対して指摘もしてくるし、しっかり矯正されてますよ、これ。まあお世話になりっぱなしで自力で自炊とか片付けしようという段階までまだまだ発展していないので、既に居なくなると困るところまで彼女の存在が重要になってしまったと考えるなら、だめにされているとも言えるのかもしれないけれど。
とはいえ、最初からズカズカとお互いのプライベートに踏み込むほど二人共図々しいタイプの人間ではないので、ちょっとしたお礼の交換から隣人として適切な交流に留まっていたんですよね。そこからの進展も劇的なものではなく、相手に何かを求めて近づくのでもなく、ごくごく自然に関係が続いていくことでパーソナルスペースが重なっていく過程がいいな、と思うんですよね。
まだまだ全然甘酸っぱい云々の関係には至らないのですけれど、建前や取り繕った余所ゆきの顔ではない普段着の自分を見せることに忌避感を感じなくなっていく隣人の存在は、楽しいとか心地よいとかではなく、まず傍に居ることに違和感がなく自然、というところから始まっている。そこから、学校での様子と家での様子のギャップに興味が湧き出して、相手のことを見ているうちに自分だけが知っているその人のことが増えていく。そうして徐々に芽生えてくるのが、他の誰もが知らないその人のことを知っているという細やかな独占欲。二人の関係が二人だけの秘密だという共犯関係が高じていって、共感が繋がっていく。
日常生活の中で、そんなふうに過ごしていたら一日の大半をどうやったってその相手の人のことばかり考えて過ごしてしまうというようなもの。それは、どうやったって気になってくるものだ。ネガティブな関係ではなく、よくお世話されお世話して、自分の生活の中にいつの間にか深く食い込み、自分の時間空間を共有している相手となれば尚更に。
それでも、ジリジリとしたものに過ぎなかった変化も、周の母親にバレたり友人にバレたりという外部からの刺激によって、自分たちの関係について強く意識し自覚していくことになるのは当然でしょう。
まあ、真昼の誕生日を知ってプレゼントを贈ろうと真剣に悩みだした時点で、行き着く先はキマってしまったようなものなんでしょうが。
周くん、なにげにしれっと恥ずかしいセリフを無自覚に言いまくってるのは、真昼からするとズルいってなもんでしょうね。あんなセリフ臆面もなく言われたらたまったもんじゃないでしょうし。
とはいえ、まだはじまっていることに何も気づいていない段階で、でも傍から見るとどう考えてもカウントダウン状態。ほんとに甘酸っぱくなってくるのは、お互いに自覚して動き出してからなのでしょうけれど、時間の問題だよなあ。