【処刑少女の生きる道(バージンロード) ―そして、彼女は甦る―】 佐藤 真登/ニリツ  GA文庫

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この世界には、異世界の日本から『迷い人』がやってくる。
だが、過去に迷い人の暴走が原因で世界的な大災害が起きたため、彼らは見つけ次第『処刑人』が殺す必要があった。
そんななか、処刑人のメノウは、迷い人の少女アカリと出会う。
躊躇なく冷徹に任務を遂行するメノウ。
しかし、確実に殺したはずのアカリは、なぜか平然と復活してしまう。
途方にくれたメノウは、不死身のアカリを殺しきる方法を探すため、彼女を騙してともに旅立つのだが……
「メノウちゃーん。行こ!」
「……はいはい。わかったわよ」
妙に懐いてくるアカリを前に、メノウの心は少しずつ揺らぎはじめる。

GA文庫大賞、7年ぶりの《大賞》作品!
――これは、彼女が彼女を殺すための物語。

これ、「生きる道」にバージンロードというルビを振るの、話の内容を読んでメノウとアカリの旅の目的を知って、「生きる道」という言葉に込められた意味を理解したあとにもう一度見直すと、凶悪の一言なんじゃないですかね。
処刑少女 メノウの生きる道をバージンロードと言ってのけるこのセンスには喉の奥から呻き声が漏れ出てしまう。

生きる道を見つけなさい。生きてきた意味を見つけなさい。それが、彼女の遺言であり祝福の言葉だった。その人は正しく強く優しい道を、光の道をあるき続けてついに見つけることが叶わずに、迷い果ててしまった。正しくても、真っ当でも、善き在り方を続けても、生きる道が見つかるとは限らない。
メノウは悪人である。陽の光の下を歩けない、外道であり卑怯者であり、おぞましい人殺しである。それを選んだ。異世界人の人災によって自分も含めて何もかもが漂白された真っ白の果てに、それでも自分でその道を選んだ。復讐のためではなく、憎しみのためでもなく、正義のためですらなく、ただ誰かがやらなくてはならない悪行を、誰かの代わりに自分が引き受けるために。
その意志は尊く、しかしその在り方はあまりにも悪である。処刑人は自らを悪と規定する。言い訳もせず、必要だからと正当化もしない。迷い込んでくる日本人たちに罪はなく、彼らはおおむね善良で決して殺されるべき人々ではないと理解した上で、殺す。その所業を世界のためだとか正義のためだとかと糊塗したりせず、それを悪を見なしてその身に引き受けている。
処刑人とは、そんな存在でありメノウはその中でももっとも純粋な必要悪の概念を体現しているのだろう。だから、彼女は自らが救われることなど、かけらも望んでいない。誰かのために人を殺し続けた彼女は、だから、これまでメノウは自分が生きる道を見つけようだなんて、考えたこともなかった。
そんな彼女の、この物語はそんな彼女の、生きる道を見つけるための旅の物語なのである。今まで生きてきた意味を見つけるための、旅なのである。

翻って、アカリの生きる道はすでに見つけ終わっている。見つけ終わって、そこにたどり着くためのリスタートがこの旅なのだ。彼女の生きる道は、死に至るための道だ。彼女の生きてきた意味は、最愛の人に殺されるためにある。
アカリはとっくに、メノウを許している。彼女の悪を、この上なく受け入れてしまっている。
だから、この旅はメノウにとっても終焉に至る物語になっている。アカリの存在に染め上げられて彼女を喪えなくなっても、アカリに許されて彼女を喪うことになっても、いずれにしても変わらない。
だから、ある意味メノウにとっての幸福は約束されているのかもしれない。だから彼女の生きる道は、バージンロードなのだろうか。
メノウとアカリ、二人にとっての幸福は、二人にとっての終着点だ。そこに広がるであろう光景を、彼女たちは知らずして既に望んでいる。だから、これは二人にとっての破滅の物語なのだろう。二人が幸せな結末を迎えるための、約束された破滅の物語なのだ。二人で歩くバージンロードのその先に、幸福な破滅が待っている。それだけが、二人を救う。

でも……果たして、本当にそれだけがこの物語の約束された結末なのか。
鍵は、導師の言葉にあると思われる。
「いつの日か幸福によってすべてが壊れ、それでもなお生き残ることが出来たなら――」
メノウに悪を説いた、この世の悪を引き受けた導師【陽炎】が本当に望んだものはなんだったのか。
「お前は、その時、私を超えろ」


バージンロードとは、今まで歩いてきた道とも言われている。その上を歩き、その先で待っているのは新たな未来をともに歩む人だ。その先にあるのは未来そのものだ。
決して、終着点などではないはずのである。
処刑少女の生きる道、メノウはそれを本当の意味で見つけることが叶うのか。
永く、困難な旅路のはじまりの巻です。



ヤンデレさではモモばかり目立ってるけれど、あれリボンの件鑑みてもアカリも相当アレだよね。ってかこの二人、絶対仲良く出来ないだろうなあ、というのが透けて見えすぎる。何気に、リボンに対する嫌がらせは、モモのリミッター解除も加味してあの場における最適解なんだろうけど。あとで、メノウからモモに新しいプレゼントが贈られるとわかっているからこそなんだろうけど。
それでも、女の怖さが滲み出ててアカリも能天気なだけの娘じゃないのよ、という闇が……。

アーシュナ姫ちゃまは、瞬間瞬間が生きる道そのものだなあ。ある意味、刹那で完結しすぎていてそれ以上も以下もないというべきか。そして、あの衣装である。作中にて書かれている衣装の形状を忠実にイラスト化すると、あんなんなっちゃったというありさまで。
餓狼伝説の不知火舞の衣装を上回る、動いたらぽろり確実な服を見たのははじめてだw


佐藤 真登作品感想