【ラストラウンド・アーサーズ 3.雪の少女とアーサー殺しの王】 羊太郎/はいむら きよたか  富士見ファンタジア文庫

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大切なものはいつだって失ってから初めて気付く。魔女とトリスタン卿を従え『正義』を語るアーサー王候補―片岡仁の強襲によって、瀕死の重傷を負ってしまう瑠奈。絶体絶命の危機を救ったのは―冬瀬那雪だった。
「どんな代償を払ってでも、助けるって覚悟はある?」
湖の貴婦人だった彼女の手を借りて、凛太朗は真なる力を求め、魔人であるもう一人の自分と対峙することに!踏みにじられた居場所と大切な人を取り戻すため、そして偽りの正義を打ち砕くため、マーリン覚醒の刻!!

そう言えば、もう当初のクズアーサー要素と外道マーリン要素って殆どなくなってしまったような気がする。凛太朗は真面目に主人公してるし、瑠奈もわりと真面目にヒロインしてるし。変わらず不憫なのって、ケイ卿だけじゃないのかしら。今回なんぞ、ほぼほぼ存在抹消されてしまってましたし。物理的に消えてたしw
ガウェインが毎回やられ役なのは変わらないのに騎士として株をあげ続けてるのに対して、ケイお姉ちゃんと来たら……。まあ今回一番割りを食ったというかえらい目にあってたのはエマな気がするけれど。アーサー王候補から脱落してしまったエマには実質戦う力がなくなってしまっているにも関わらず、狙われる羽目になってますし。あれ、零華の本心を鑑みると那雪がいなくても命だけは大丈夫だったかもしれないけれど。
いや、一番ひどい目にあったのはトリスタン卿かもしれませんよね。騎士の方は誰が主人か選べないわけですから、よりにもよってあんな小物に。しかも、妖女にイイように操られるだけの度し難い愚劣者に従わされてるわけですから。それにしても、諦めて抵抗しなさすぎ、という体でしたけれど。
片岡くん、小物ムーブはいいんだけれどあそこまで英雄願望拗らせるような小僧ってホントにいるんだろうか。あれこそファンタジーに見えるんだけれど、こんなやつホントに居るのかよという奴が実在するのがこの現実世界だからなあ。やられ役としては最高のムカつくアホっぷりだったので、助演男優賞にあたるのかもしれないけれど、あれだけやらかしてたんだからそれ以上にもっとしつこいくらい「ザマァ」してくれても良かったんですよ? ああいう輩は一発殴っておしまいよりも、徹底的に心をべきべきに折ってしまう展開のほうがすっきりするんですよねー。
マーリンも外道を名乗るなら鬼畜外道らしくネチネチと弄り倒してもよかったんですよ?w
でも、凛太朗もなんか自分のダークサイドを封印してしまった節もあるので、妙に素直になっちゃって。あれって瑠奈との過去も思い出したってことでいいんだろうか。でないと、これまでの事で瑠奈のこと気にいっているにしてもあそこまで入れ込むまではまだ深入りしていないもんなあ。
それよりも、那雪の方が中途半端に湖の貴婦人だったと正体を明らかにしてしまったのが気がかりである。普通正体を明かしたならば、それをきっかけに距離感詰まるものなんだけれど、彼女の場合湖の貴婦人というのはバラしても、そのうちの誰なのかについては言えないままなので、逆に距離を置くことになっちゃってるんですよね。もともと、瑠奈との間を取り持ちつつ自分は離れるつもりだったっぽいから仕方ないのだけれど、あそこまで露骨に寂しそう悲しそうにされるとねえ。過去のエピソードにしても、何らかの理由があったっぽいのは明らかなんだけれど、どんな理由があったにしろ実際マーリンのことぶっ殺しているだけに、よっぽどでないと言い訳きかないよなあ、これ。それを理解しているからこそ、なんだろうけれど。

その点、モーさんの方は色々と動機やらがわかりやすい。この子、根本的に性根が正しい騎士なんですよね。反逆の騎士という銘に振り回されて、不意打ちやら闇討ちやらひねた行動取っているけれど、真っ当さでは円卓でも随一なんじゃないだろうか。だからこそ、反逆に走らざるを得なかったというべきか。
ぶっちゃけ、誕生日にかこつけて殺されかかったモーさんとしては、他の円卓やマーリンみたいにアーサーを支えられなかった、という罪については免除してもいいんじゃないの、と思わないでもない。アーサー王がトチ狂って予言にある自分を殺すであろう人物の誕生日の子供を集めて皆殺しにした、という話、マーリンが居なくなったあとらしいし、それで殺されかかってるモードレッドって騎士として仕えだしたのってアーサー王がもう王としてあかんくなりはじめてる時期から、ということになっちゃいますし。ちょっと一切の時系列どうなってるかわかりませんけど。
モードレッド視点からみるとアーサー王って暴君以外の何者でもないもんなあ。モーさんについて反逆した他の騎士たちも、うまく行かなかったからって恨み言ばっかり残してしまうのって根性据わってないよなあ。ああいうのを見てしまうと、思いつめすぎて短絡的にディナダン卿を暗殺せずになんとか説得出来るまで粘れば良かったのに、と思ってしまう。いや、あのディナダン卿の様子からして、真摯に言葉を尽くせば最後にはモーさんの方味方してくれたと思うんだよなあ。
ああいうおっさん、情に流されるんですよねえ。だからこそ、好ましいタイプなのですが。情に流されるからこそ、流されきって自分を殺した相手をすら見捨てられないわけですから。
あのまま脱落、と行かずに彼女らコンビが生き残ったのは結構重要そう。モルガンがあれだけ暗躍しているとなると、頼りになるカウンター勢力は居てくれた方がありがたいですし。まだ、瑠奈自身と零華自身がちゃんと接触していないのが気がかりというか、あの二人が絡むとどうなるんだろう。その化学反応はちょっと楽しみではあります。

シリーズ感想