【賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求 ~愛弟子サヨナのわくわく冒険ランド~】 有象利路/かれい 電撃文庫

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その男、最強にして変態――。弟子サヨナ絶望の日々を描くわくわく冒険譚!

「ところでコレ、ホントに出版するの?」
編集長の鋭い眼光とその言葉に、担当編集の命は風前の灯火であった。

本作は『賢者にして勇者である最強の称号《賢勇者》を持つ男が、弟子(おっとり巨乳美少女)とともに社会の裏に隠れた悪を断罪する』という“ザ・今時のライトノベル作品”としてスタートした。
だが作家からあがってきた原稿は、全裸のイケメン(賢勇者)をはじめ、筆舌に尽くしがたい変態仲間たちが織りなすナンセンスギャグギガ盛りの――いわば「なぜか堂々としている社会悪」的な何かであったのだ(ついでにヒロインの胸も削られていた)。

「だ、出版(だ)します! 面白いですから!」
超言い訳っぽい担当の言葉は真実か!? ――その答えは、君の目で確かめろ!
……凄えな、これ。いやマジですっげえなこれ! 凄えなこれ!?
なんかもう最初、凄えとしか語彙が出てこなくて参った。いやだって、凄いんだもん。キレキレ過ぎじゃないですか、このギャグ漫画。いや、漫画じゃなかったライトノベルだった。でもこのキャラ同士の掛け合いのテンポって4コマ漫画のそれに近いものを感じたんですよね。超面白いギャグ4コマ漫画を文章で読んでしまったような。いやそれにしても、ギャグの切れ味が半端なさすぎて圧巻ですらあるのだけれど。
正直、ここまでキレッキレにキレまくってるギャグラノベってちょっと他に類を見ないんじゃないだろうか。これでも結構たくさん読んできた自負はあるんだけれど、本作はガチで尋常ではないものがある。読んでて最初の方は、自分はとんでもないものを読んでいるんじゃないだろうか、という畏怖を笑い転げながら感じるというなかなか器用な有様になってしまったほど。
圧巻ですらあった。ちょっと白目剥いてたかもしれない。
ただ、序盤がそれだけ神がかっていたのに比べてしまうと、中盤以降はちょっと落ち着いてしまう。少なからず、魔王のカグヤちゃんが作中でもツッコまれてたけど、普通すぎて存在感が低かったせいかそこで少々冷静さを取り戻してしまったのかもしれない。
メタネタを後半に行くほど多様しすぎて、それに頼ってしまいがちになってしまったのも個人的に勢いを減じてしまったと感じたところです。メタネタは嫌いじゃないどころか、【ゴクドーくん漫遊記】でそんな手法があったのか、と感銘を受け以来うまく使っている分には好きなネタですし、本作におけるメタネタはKADOKAWAの御乱行な扱い方といい実にアレすぎて、血塗れの釘バットを振り回して時々振り回している自分にもヒットしているような暴れっぷりは清々しいほどで、いやもうこれぞメタネタの使い方の焚書本、という感じの凶悪な使い方で実に良かったのですけれど、若干繰り返しすぎて後半しつこく感じてしまったなあ、という向きがあったんですよね。ギャグネタの比重としても、後半に行くに連れてメタネタが増えてちと喰い飽きてきたというのがあるのですよ。あれなら、もっとシモネタでも攻めてくれても嬉しかったのに、というところで。まあこのあたりは、個人の好みもあるので、自分の感想に過ぎないのですが。
あと、終盤に向かって弟子っ娘サヨナの物語が進展するのですけれど、これが残念なことにギャグ作品としての勢いや切れ味に対して手綱を締めるようなバランスになってしまった感があるんですよね。ギャグの切れ味を増す方向ではなく、ギャグによってシッチャカメッチャカに引っ掻き回されて笑いに塗りつぶされるところを、変に落ち着かせられて平静さを取り戻してしまう要素になってしまったというべきか。クライマックスで今までの登場人物(変態)をオールキャストで登場させて、場をぐちゃぐちゃにして引っ掻き回すという展開も、燃え要素のある笑いではあったのだけれど、序盤の「なんじゃこりゃーー!」というあの訳のわからなさ、不条理、ナンセンスを沸騰させたようなそれとは違って、どうしても統制された理性を感じてしまったんだよなあ。
精神汚染から開放されてしまった、みたいな。それがちと残念というか物足らない部分であったのです。前半ほんとに自分の中でも伝説になるんじゃないか、という勢いだったからなあ。
いやそれでも、ほんとにとんでもねー作品なのだけれど。色んな意味でとんでもねー作品だったんだけど。
ただ、サヨナちゃんの弟子生活見ている限り、あのお師匠様を最終話であんな信頼する要素は一ミリも存在しなかったと思うんだけど! 概ねひどい目にしか合わされてなかったですよね!? なにかしらお師匠様として尊敬されるようなこと、されたことなかったですよね? むしろ、いつ縊り殺すかカウントダウン、終末時計の針一秒も止まりません! みたいな感じだったと思うのだけれど。
年頃の女の子が何回何度何人の汚い男の裸、全裸、生まれたままの姿を見せられたのか。そのうち、ろくに反応もしなくなったあたりに、サヨナの汚れちまった感が出ていて実にワクワクでした。冒険って誰が誰に対して冒険ランドだったんだろう。冒険というか暴挙に全裸頭頂してた気もするけれど。しかし、【境界線上のホライゾン】の主人公・全裸に続く主人公の全裸率だったなあ。モザイク無し時間で換算すると容易に上回っていたかもしれない。画面上における汚いおっさんどもの全裸になってはいけない公共の場所での全裸率に関して言うなら、圧倒的ですらあったかもしれない。なぜ、清涼剤としてサヨナちゃんの全裸が存在しなかったのかが深刻な謎である。もはや途中から老若男女の区別なく衣服とか必要なかったんじゃなかろうか。全部全裸でも良かったんじゃないだろうか、特に問題なさそうだし! だし!

なにはともあれ、ヤバイ! 酷い! 最低♪ の三拍子揃った大怪作でした。いやあ、もう凄えわ、うん。