【僕は何度も生まれ変わる 2】 十文字青/だーくろ(gumi/gg2)  角川スニーカー文庫

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享年29歳。僕は日本で死んだ。生まれ変わった異世界では同じ顔をした女に、しかも毎回18歳で何度も殺された。呪いのような生と死の螺旋。5度目の人生、魔王の庶子ロワとして生まれた僕に、最大の好機が!色々あって、暴虐無道の帝国に抵抗する連合軍の指揮を任されたのだ。僕が総帥って…でも、やるしかない。ここには僕の家族が、友が、仲間達がいる。―さあ、僕の手で物語を動かそう。戦場で交錯する歓喜と慟哭。巨人族、魔族、傭兵達、バラバラだった国々と種族が一つとなり、帝国への反撃の狼煙があがる。連合軍を率いる“僕”のかつてない大反攻作戦が始まる!
……おおぅ。いやうん、忘れてた。一巻の前半で何が繰り返されていたのかを、完全に忘れていた。いや、正確には忘れていたんじゃなくて、あれはもう終わったこと。助走期間のことであって、すでに踏切板は蹴ったあとだと思っていたのだ。思い込んでいたのだ。
それまでの人生と、この五度目のロワの人生に何の差もなかったというのに、ただ詳細に細かく丹念にロワという少年の軌跡を描いていたから。他の人生よりも長く長く描かれていたから。これまでの人生よりも遥かに帝国の脅威に対して敢然と立ち向かえていたから。不利であっても一方的ではなく、堂々と渡り合えていたから。前の人生の登場人物であったピエトロジョーが生き残り、今この人生で新たな大切な仲間として加わってくれていたから。
この人生こそが、集約点なのだと思っていた。集大成なのだと思いこんでいたのだ。
きっと、一人の人生を描く重さ、という点においてそれまでの「僕」とこのロワという僕に本当は何も変わりはなかったのだろう。それでも、これだけ重厚に国の歴史、戦争の経緯、登場人物たちの人間関係の変化からその成長に至るまで、一切手を抜くことなく妥協することなく、一つの物語としてきちんと立脚するだけの幅と厚みと情熱と真剣さを以って描いてきた物語を、積み上げてきたものを、果たして自ら打ち崩すのにどれだけの意志力が必要なんだろう。
最初から崩すために積み上げた塔のような脆さも隙間も見当たらない。これは、百年敢然と聳え立ち続ける塔を築くだけの仕事であり工程の丁寧さであったのだ。
それを無残に叩き壊すことに、痛みを感じない書き手がいるだろうか。まあもっとも、その痛みにこそ快感を感じてしまう業もまた、作家という職業の中に生じるものもあるのだろうけれど。これはそんな快楽犯の類ではあるまいに。この破壊もまた、グランドデザインを描ききるための大切な工程なのだ。それでも、よくやれたものだ。よくぞ、やったものだと感心する。
しかし、ここで終わってしまえばすべてが台無しになってしまう。全部が無駄だ。意味をなさない。いわばある種の焦土戦術だ。後ろを見てみろ、見渡す限りの焼け野原だ。何も残っちゃいない。何も残さなかった。全部全部、描いてきたもの消し去ってしまった。残るは、ただ深い深い一縒りの因縁だけだ。それ以外は、本当に本当にぜんぶ焼き払ってしまった、炎の中に焚べて灰にしてしまった。
バッドエンドという結末ですらない、真実ただの消し炭である。
これに意味を与えるには、決着をつけなければならない。彼女と僕の因縁にケリをつけなければ、すべての原因であり根源である二人の関係の正体を突き止めなければ、本当に全部が無駄死にになってしまう。打ち切り作品というものは、往々にして業深いものだ。それでも、その途絶に至るまで築き上げてきたものがあり、残されるものがあるはずなのだ。振り返って、その先を想像する余地だけは残っている。決してありえなくても、可能性という因子だけは残されているのだ。しかし、これには何もない。本当になにもない。
それを「在った」へと変換できるのは、唯一この壮大な生まれ変わりの物語が描き切られたときだけだ。これほど、後のない作品を、後を無くしてしまった作品を私は知らない。
続刊を出さなきゃ、出さないと、本当にもうこれ、出さないと、ダメだ。

正直、中身というか個々のキャラクターについてもちょっと書けないというか、どう触れたらいいのかわかんない。もし全部終わることが出来たら、振り返ることができるんだろうか。わからぬ、わからぬ。

シリーズ感想