【札幌市白石区みなすけ荘の事件簿 ココロアラウンド】 辻室 翔 /霜月 えいと  富士見ファンタジア文庫

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人類の一部が代償つきの超能力を得るようになった世界―の札幌。白石区にあるみなすけ荘には個性豊かな能力者たちが住み、増加する超能力犯罪に挑む自治組織を営んでいた。住人の藤坂工輝は「死ぬと生き返る」能力を駆使し、高校生ながら事件解決に一役買っていた。そんな彼の最大の関心事は新住人の女子高生・八野心。なぜか自分の能力を明かさない彼女の秘密に、ある事件をきっかけに触れることになるが―
「…わ、私の能力を知っても、味方でいて、くれますか?」
だがその事件は、心を巻き込み、札幌を危機に陥れようとしており!?心を救うため、みなすけ荘メンバーが立ち上がる!第31回ファンタジア大賞“銀賞”受賞作。
工輝と久地中さん、みなすけ荘の男性陣二人、ふたりともホントに気持ち悪いからね、それ! 気持ち悪い系男子だからね! 愛が気持ち悪い!
しかし、そのしつこく粘っこく重たいすなわち気持ち悪い偏愛もまた、一途だと愛おしくなるもので。いやもう、本当に気持ち悪いんだけど本人は本気だし真剣だし愛しているからこそ語り倒すわけですよ。工輝くんの場合は、小胸に対する愛なんだけれど理想的な小胸の持ち主である心からすると、気持ち悪いんだけれどそれだけ夢中に純真に愛してくれると嬉しいんですよね。そりゃ、相手が人間そのものから気持ち悪い相手だと生理的にごめんなさいかもしれないけど、工輝は人生の恩人であり筋金の入った優しさの持ち主であり、彼の献身と一生懸命さは傍目から見ていても庇護欲を掻き立てられますし、その一生懸命さと一途さが自分に向けられたときたら、キュンキュンしてしまうのも無理はなく、止めに心にとっての長年のわだかまりや不安を一掃して心を晴らしてくれた人なのでありますから、そりゃあ絆されますよね。……ほんとに気持ち悪いんだけど!
おなじみなすけ荘のメンバーで、恋人である佐山花恋への愛がおもすぎて気持ち悪い久地中さんの方も、あれ花恋さんとめでたくラブラブになるまでいったいどんな紆余曲折があったか若干気になるところであります。花恋さんが花恋さんで元ヤンの魔法少女系超能力者という属性過多すぎる伝説持ちなだけに、本当に何があって今結婚資金を貯めてる同棲関係、みたいなところまで関係が進展したのか過程が気になる。久地中さんって能力からして元ストーカーだったんじゃないのか、と疑ってしまうんだけど、今となってもあの彼の愛の重さを何だかんだと受け止めてイチャコラしてしまえてる花恋さん、そういうの本来は耐性なさそうな人なだけにこの二人、微妙に彼らの物語のハッピーエンド後、てな感じがあるんですよね。
工輝くんもまた、闇堕ちしかけてたり人生に挫折しそうになってたり、と暗黒時代を経て今の情けは人の為ならずをモットーにひたすら人助けしまくって情けをばら撒いている、人呼んで困ってる人狩りな日々を送っている、色々あって今に至るの主人公なんですが。わりと壊れてるというか人生踏み外しかけてる生き方しているわりに、独りよがりにならずに周りの人に頼ったり生き方と現実とのバランスのとり方が上手いんですよね。これは、死ぬたんびにあの世とこの世の狭間か普段は異世界転生用の面接室か、というような空間でメンタルケアやカウンセリングをしてくれて現世にお繰り返してくれる女神様のおかげなんでしょうけど。優しく労りながら、無茶したらちゃんと叱ってくれて、となんでしょうこの現地嫁のような癒やし系お姉さんキャラは。工輝の小胸主義って小胸な女神様に出会う以前なのか以後なのか。以後なのだとすると、結構重症なのかもしれない。あれだけホイホイと簡単に死んでしまえるのも、信念ゆえだけではなく死んだら女神様に会える、という点は無視できないものだろうし。
でも、これだけ気持ち悪いタイプの人なのに、そのばっさりした所は気持ちよくもあるんですよね。今回の事件の犯人の自己正当化を、一言で切って捨ててくれたのは一番の痛快どころでありました。彼が、女神様に会わなかった場合の自分の末路だったかもしれない、という向きはあったにしても。

しかし、あの園山さんの格好、能力とは厳密には関係ないよね? 能力の発動条件聞く限りでは別にブルマとか関係ないよね!? あれ絶対趣味のただの痴女でしょう!?
あと、人助けして回っていたその報いとして、工輝に助けられた人たちが集まりましたけど……あれ、最初の母娘が通報してくれた以外は特に意味なかったような。たくさん人が集まって目立つことで、みなすけ荘のことを知ってる人と巡り会えた、という理由付けなんだろうか。

よく見ると男のみならず、女性陣の方にも何人か気持ち悪い系の人がいる(牧下さん貴女だ)気持ち悪い系キャラ過多な作品でしたが、そんな彼ら自身は気持ちいい人たちばかりで、能力の弊害への苦しみなど重いテーマもありながら、痛快に楽しめる良作でありました。デレてる心のおずおずとしながらも積極的なところは、非常に可愛いものがありましたよ、うん。