【突然ですが、お兄ちゃんと結婚しますっ! ２．わかった、指輪のサイズを教えてくれ。】 塀流通留／ねぶそく MF文庫J
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この小説は、お兄ちゃんが妹たち(実妹、義妹、似妹)と楽しく仲良く暮らすだけの妹ラブコメである。――はずだった。それなのに――! 彗の誕生日に愛する妹たちに突きつけられた「兄妹和親条約」。それは一年間妹たちに落とされなければ、永遠の妹ハーレムが約束される夢のような条約だった。あの手この手で迫り来る妹の誘惑を彗は理性を酷使して耐え抜いていくのだが――「将来わたしと彗が結婚した時、凛音と青葉の横に神子がいてもわたしは許せる」相変わらずお前らお互い大好きだな!? ……ん? 神子、だと……!? ド直球の妹ラブコメ第二弾! 色々進展あるかも?義妹の空がダメかわいい。
義妹とはいえ、最近帰ってきた実妹の凛音や似妹の青葉と違って、親の再婚によって小さい頃から一緒にいる空ですけれど、勉強は出来なくて夏休み全補習になりかけたり、運動音痴でマラソン大会は最下位どころか完走が心配されてしまうほど。料理や家事の類もあんまり出来ず家でぐーたらするばかり。優れたるはその美貌、その容姿のみなんだけど、その容姿が原因でかなり陰湿なイジメにあっていた過去があるせいで自分の見てくれを武器にして目立つことをする気はさらさらなし。将来的には義兄の嫁、という名のニートを目指す志高き引きこもり。それが舞並空という妹種である。
……ダメじゃん。
でも、そのダメさ加減をこそが彗や他の妹たちに可愛がられている要素でもあるんですよねえ。なんだかんだと、手のかかる末の妹みたいな感じになってますし。
それにしても、和親条約によってある程度関係が安定したからかもしれませんけれど、普段から妹同士の仲が良すぎでお互い大好きすぎて微笑ましいやらなんとやら。兄を誘惑して落とすための条約関係でありながら、意外と兄中心に回っている生活ではなくて、妹同士でも普段からイチャイチャしてるっぽいんですよね。すでにライバルではなく家族として過ごしているのである。一緒にゲームして遊んだり、補習回避のためにマラソン大会で頑張らなくてはならなくなった空のために一緒にトレーニングしたり、一緒にバーベキューしたり、とギスギスする様子は一切なく実に楽しそうに過ごしている。
あの和親条約って、誰が選ばれても結局他の娘も妹としてそばにいられる内容なので、実は誰が選ばれても影響ないのかもしれない。空なんぞは、自分と結婚しても凛音も青葉も一緒で子作りもオッケー、とまで公言しているわけですから。
そして、妹であることを理由に妹たちからのアプローチをやんわりと拒否している彗ですけれど、彼は彼で妹たちを一人の女性としてすでに意識していると自認してますしね。女性として異性として意識している事と、結婚していいと思うまで好きになることはまた違うこと、なのは確かですけれど、すでに女性として意識させることについてはクリアしているだけに、妹たちもそれほどガツガツしていないのかもしれません。
しかし、そんな条約外からまさかの侵略を開始したのが外妹種（違う家庭の兄を持つ女）である幼馴染安国寺神子だったのである。
とはいえ、拒絶反応を示したのは彼女を知らない実妹と似妹であって、神子をよく知る彼女自身幼馴染でもある空は、オール受け入れ態勢だったわけですけれど。空ってば、一番ダメだけれど一番器でかいなあ。養ってくれる相手が増えれば増えるほど自分ぐーたら出来る、という発想があるのかもしれませんが。神子は、ギャル系でありますが家庭的でありますし、世話好きで空にもよく構って甘やかしていましたから。
しかし、知らない間に幼馴染に知らない妹出来ていた上に、実妹はともかくとして似妹とか新キャラとして今回から登場した凛音の新しい家族で出来た実妹の義妹、つまり「異妹」と呼ばれる昴流の存在とか、神子からしたらわけわからんわなあ。しかし似妹とか異妹とか外妹種とか、この名付けのセンスは笑ってしまうけどなかなか凄い。それぞれぶっちゃけると妹でも何でもなくて、妹としてひとくくりにしようとすると、妹という定義が曖昧になりすぎて妹という概念の存在感自体が薄まってしまいそうなところを、命名による属性付によって妹という概念を強固に固着化することに成功してるんですよね。なんだかわからんけど、妹なんだ！と無意識に納得させられてしまっているのである。似妹の青葉とか、年上だしどうやったって妹としては偽物なのに、何となく読んでいる中では妹として受け入れてしまっているわけですから。
にしても、だ。彗と神子が和親条約を前提に新たに結んだ約束って、客観的に見るとただのキープですよね。神子としてはかなりちゃんと告白したにも関わらず、あの答えは餌のぶら下げ方も加味して結構酷い気もするぞ。神子は、今回見てるとかなり多くのシーンで勇気出して踏み込んでるんですよね。非常に頑張ってたのが見て取れる。まあ神子本人は全然気にしてないみたいだからご当人同士の合意の上なのでいいんですが、苦笑は浮かんでしまうところです。
