【ファイフステル・サーガ 4.再臨の魔王と女神の巫女】 師走トオル/有坂 あこ  富士見ファンタジア文庫

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灰エルフの軍勢を退け、一時の休戦状態へ持ち込んだカレルに、息つく暇もなく“狂嗤の団”切り込み隊長コルネリウスへの婚約話という難題が降りかかる。コルネリウスとともに内乱中のヴィエレヒト司教領を訪れたカレルは婚約者の少女ヘンリエッテと出会う。
「当面は婚約者としてお力をお貸しいただきたいのです」
わずか十一歳という年齢ながら、殺された父の無念を晴らすべく国を統べる大司教になりたいという彼女の力になるため、カレルたちは内乱鎮圧へと動き出すことに…。英雄は少女を王国の救い手として導けるのか!

これですべての主要プレイヤーが揃ったのか、それともまだ増えるのか。とはいえ、今回の修道騎士ノルベルトと大司祭を目指すヘンリエッテは政治的には極めて重要人物であるものの、自らが主導して政治を動かしていくタイプではないので、やはりメインはアレンハイム公カレル、五芒国折衝ヴェッセル、そして灰エルフの族長の一人であるギルセリオンの三人が主導していくのか。
とはいえ、一応目的を同じくしていて立場の違いはあるとは言え同じ方向を向いているカレルとヴェッセルに対して、ギルセリオンだけまだ独自の方向で動いているんですよね。魔王の復活に背を向けていること、同じ灰エルフの他の一族からこっそり距離をおいていることからも、共闘できる余地はあると思うのだけれど、今回司教領の内乱を煽ってたりするからなあ。
ともあれ、宗教組織の中枢に後ろ盾という形で食い込める形になったのは非常に大きいのだけれど、相変わらず大公になっても少人数で司教領に潜入したり、とフットワークの軽いカレルである。これもコルネリウスという単独での一騎当千な戦闘力を持つ人が一緒にくっついてきてくれるからこそ、なんだろうけど、大公という地位と灰エルフとの戦闘での勝利という名声をもって高まっている政治力を、自分自身を混乱している司教領に突っ込ませることで最大限活用しているわけだから、大したものである。
もちろん、それだけ危険も大きいわけでコルネリウスの護衛があるとは言え思わぬ危機もあるはずなのだけれど、それに関しては自分の死を見る予知夢というアドバンテージもあるわけで。カレルの介入がなかったらまず間違いなくメルヒオール大司教側の勝利になってたわけだから、今回もなかなかの綱渡りだったんですよねえ。
そのカレルの介入も、ノルベルトの機転とヘンリエッテの決意と覚悟がなければ不可能だったわけですから、今回の一連の最大の立役者はやはりこの二人だったのでしょう。図らずもヴェッセル宰相とマリオン女王と同じく頑張る妹の為に頑張るお兄ちゃん、という構図になるんですよね。いや、ノルベルトとヘンリエッテに関しては実はさらに異なる真相が待っているわけですけれど。
このこんがらがった人間関係、特にノルベルトのそれって今後意味を持ってくるんだろうか。ノルベルト本人はさっぱり政治的野心を持っていないのだけれど、何気にそれをヴェッセル摂政は魔王の左腕を使っているが故にわからないんですよね。
まあ今回はそれよりも、ヘンリエッテが想像以上にコルネリウスの手綱を握れてしまっていたあたりが注目でしょう。亡くした妹のこともあって子供に甘いというか優しいコルネリウスですけれど、ヘンリエッテはその聡明さも健気さも意外と押しが強い所も、そして弱さもコルネリウスのツボをつきまくっていたようで。いや、あの気難しい怖いお兄さんに対してあれだけガンガン押せるヘンリエッテも凄いですわ。しばらくは様子見していたようですけれど、途中の事件を通じてコルネリウスの人となりを察したんでしょうなあ。
婚約者とはいえヘンリエッテはまだ11歳あたり。子供過ぎて、いやまあ子供だからこそコルネリウスも無視できなかったわけですけれど、コルネリウスとしても妹のようにしか見えてないでしょうし、ヘンリエッテの側だってまだ恋だの好きだのという段階じゃないのでしょうけれど、お互いに心のうちにまで踏み込んだ関係になってて、なかなか将来が楽しみな二人です。
そして、ラストのエルフのミーリエルが帰還したことで、カレルに新たな問題が浮上。いやこれはまあ近いうちにあるだろうな、と思ってはいた展開なのですが。
というところで終わりながら、五巻の継続はまだ未定、というのは厳しいなあ。

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