【ラストラウンド・アーサーズ 4.最弱の騎士と最も優れた騎士】 羊太郎 / はいむら きよたか 富士見ファンタジア文庫

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「ごめんね…凛太朗君…私…約束…守れなかった…」
魔人の力を引き出し覚醒したことで、瑠奈に振り回される賑やかで騒がしくもどこか心地よい日常を取り戻した凛太朗だったが、その代償によって那雪は世界から消失してしまったことを知る。彼女を救い出す唯一の方法は聖杯を手にすること。しかし伝説時代のアーサー王すら手に入らなかった聖杯の探索は、凛太朗たちの想像も超えた困難なもので―。
「私が、貴方を家臣にするのに相応しい、世界一の王になれるってこと…貴方に証明するわ」
聖杯を巡りすれ違う想いはアーサー王とマーリンの命を懸けた決闘にまで発展してしまい!!
もう開き直ってやけくそでビキニ水着営業をノリノリでやってるケイ卿、そんな貴女が大好きです。もう嫌がるのも恥ずかしがるのも擦り切れて摩耗しちゃってるあたり、最高ですよね?
こんなのしてくれる騎士とか居ないからなあ。なので瑠奈の王道にはやはりケイ卿は必須なのである。
……あれ、何気にガラハッド卿もやってくれそうな気がしてきたぞ、それもノリノリで。飄々として超然としたパーフェクト騎士なガラハッドでしたけど、彼女の浮世離れした部分って瑠奈の無茶振りもわりと楽しそうにやっちゃいそうな気配があるんですよね。恥ずかしがったり騎士らしくないとか嫌がったりする姿があんまり浮かばない、どころか面白そうと楽しそうにやってる姿が結構簡単に思い浮かんでしまう。あかん、ケイ卿アンデンティティのピンチじゃないのか、これ。
本来ならケイ卿パワーアップイベントでもあった今回の話ですけど、実際これまで見事なまでの戦闘では役立たずだったケイ卿がガラハッド卿から貰った剣によって限定条件下ではありますけれど大いに活躍できそうな余地ができたわけですけれど、なんだかんだと美味しいところはガラハッド卿に取られちゃってて、クライマックスの方でも目立てていたかというと……やっぱりガラハッドが持ってっちゃってた気がするぞ。しかも、最後瑠奈がやらかしてくれちゃいましたし。あの瑠奈の空気読まねえやらかしで、見事にガラハッド卿にも隙というかギャグもコメディも出来ますよー、という要素がエンチャントされてしまいましたしね。犬神家までやっちゃったら大概なんでもできますよ? 一方でナチュラルにケイ卿にはマウントとっているようにケイちゃんみたいなイジラレ属性ではなく、むしろ瑠奈と一緒にケイ卿の事弄る側であることがすでに発覚していますし、これはケイ卿さらなる受難の時代のはじまりなんじゃないだろうか。

さて、ここまで引っ張ってきた那雪の正体がいつ凛太郎にバレるか、というテーマは那雪を見舞った受難によって一気にシャッフルされることに。正直、那雪の正体であるニニムとマーリンの関係は凛太郎が知ったときにはどうやったって一波乱起こるしかなかったんですよね。凛太郎ってなんだかんだとさらっと水に流せるような爽やかな性格していないし、たとえ許せていたとしてもグジグジと引っ張って拗らせてしまうのは必定だったのです。那雪の方は罪悪感で押しつぶされる寸前で、グジグジする凛太郎をスカッと押し倒せる立ち位置じゃありませんでしたし。色んな意味で状況を吹っ飛ばせる性格の瑠奈が、二人の間を結果として取り持つのかと思ってたのですが。
那雪の置かれた状況が凛太郎をウジウジグダグダしている余裕を一切なくしてしまったわけで。凛太郎って超有能すぎて何もかもが退屈すぎるぜー、というスタンスでこの戦いに首突っ込んできたくせに、わりといつも余裕なくて必死だよなあ、と思うところがあったのですけれどここに来て必死さがカンスト到達してしまったわけで。一切の余裕なく、那雪を救うために達成不可能の試練に突っ込んでいくことに。なんだかんだと、いつもサポートに回って一杯一杯な凛太郎を助けてる気がするぞ、瑠奈王さま。王様なのに。
ここで瑠奈と凛太郎が実は幼馴染で、瑠奈が王様目指したのも凛太郎が自分の能力を鍛え伸ばしてきたのも、根底に二人の出会いと約束があったのだ、というわりと二人にとって重要な過去の出来事をこの段階で凛太郎に気づかせるとはこれも思わなかったわけで。結構急ぎ足じゃないですか? もっとじっくりここぞという場面でもってくるネタだと考えていたのですが。いや、聖杯探索の罠にはまってにっちもさっちもいかなくなった凛太郎、最大の不覚という場面なのでここぞといえばここぞとも言えるのでしょうけれど。
那雪の正体と凛太郎のぼやけた記憶にある大事な幼馴染との約束。これを同時に持ってきたということは、扱いに差を与えたくなかったということなのか。正直、ニニムとマーリンの愛憎塗れの関係を思うと、那雪とニニムはまた別人でマーリンと凛太郎も違う人間だから、那雪は大切な仲間だけれど恋愛感情はない、という凛太郎の態度はええーってな感じなんですけどね。いやそんな割り切れるもんかいな、てなもんじゃないですか。だいたい、いうほどマーリンと凛太郎別人扱い自身がしてないじゃん。めっちゃマーリンじゃん。
さて、そこから瑠奈がどれだけ巻き返せるのか。那雪の献身に全然負けないくらい瑠奈も何だかんだと凛太郎のこと助けまくってますからね、現世では決して引けをとってなくて互角だと思うのですが。

それにしても、冒頭は面白かったなあ。よく、大いなる戦いを前に今まで通りの日常を過ごすことで「こんな事をしてる場合なのだろうか?」と主人公が葛藤したり悩んだり燻ったりしてるシーンは珍しくないですけれど、そうやって穏やかに日常を過ごすのは大事なことで、それを無駄に感じてしまう主人公が焦っていたり考え違いをしていたり、という方向にあるものなのですが。
本作の冒頭での凛太郎の場合はあれですもんね。選挙ポスターの瑠奈の水着写真のおぱーいの部分を画像修正ソフトを使って偽りの大きさに増やすために、黙々とPCに向かいマウスカチカチ鳴らして、ふと我に返り「俺は一体、何をやってるんだーーーー!!」と魂から絶叫。
ほんとそれな! 
いやここまで本当に何をやってるんだ、とこんな事やってる場合じゃねえってな主人公に共感同意できるシーンははじめてだったぞぃw

シリーズ感想