【ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~】 餅月望 /Gilse TOブックス

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崩壊したティアムーン帝国で、わがまま姫と蔑まれた皇女ミーアは処刑された――はずが、目覚めた彼女は12歳に逆戻り?? 第二の人生でギロチンを回避するため、帝政の建て直しを決意する。手始めに忠義に厚い下っ端メイドと、左遷されたが優秀な文官を味方につけ、失敗した過去をやり直す日々が始まった。けれど、ミーアの本音は「我が身の安全第一」。仇敵を遠ざけ、人脈作りに励むうちに、なぜか周囲の忖度で次々と奇跡が実現! やがて、身勝手なはずの行動は大陸全土の未来を大きく変えていくのだった……。「こ、これぐらいわたくしにかかれば簡単ですわ! 」​保身上等! 自己中最強! 小心者の元(?)ポンコツ姫が前世の記憶を使って運命に抗う、一世一代の歴史改変ファンタジー!
いや、ほんとにポンコツで性根が小物なお姫様だな! 
帝国の崩壊に伴い逃亡したものの敢え無く捕まり、三年以上を地下牢で過ごした挙げ句にギロチンにて処刑されてしまったミーア姫。ところが何がどうしてか、首が切り落とされた瞬間に子供時代に逆戻り。地下牢での悲惨な体験、処刑というあの恐怖の最期を回避するために色々と頑張ろうとする姫様なのだけれど、根が小物なものだからヤることなすことみみっちいんですよね。大胆な改革とか全然出来ないし思いつかないし、基本自分ファースト最優先なので世のため人のためとか自分を犠牲にして、とかは出来ない娘なのである。
でもダメな娘ではあっても嫌な子でも悪い子でもないんですよね、ミーア姫。それどころか、根本的な所でとても素朴な善良さを備えている娘なのである。小物すぎて、悪いこと出来ない暴君として振る舞えない、というのもあるのだけれど、人間性がとても素直で善良なのですよ。だからミーア姫が自分ファーストー!と吠えながらあれこれ自分に都合の良い事をしようとしても、どうしても自分だけが得をする、という方法は取れないんですよね、小物だし。
あんまり考えなしにあれこれやってしまった事も、良いように受け止められ勘違いされ誤解され、挙げ句に帝国の叡智なんて呼ばれるようになってしまうわけですけれど、そういう風に捉えられてしまうのってみんなが想像しているような深慮遠謀では全然ないのだけれど、でも彼女の善良さから転がりでたものだからこそ、良いように捉える事ができるとも言えるんですよね。
それにこのミーア姫、アホの娘だし頭もあまり良くないのは確かなんだけれど……何気にすごく勤勉なんですよね。前世で最後まで彼女の味方として働いてくれていた文官のルードヴィッヒに散々叱られて教え込まれた、というのもあるんだけれど、わからないことややりたいと思った事があるとそのままにしないで自分からすごく勉強するんですよ。理解力に長けているわけじゃないから、なかなか身につかないしそこから新しい発想が出たり、という冴えがあるわけじゃないのだけれど、基本的なところはしっかりと押さえて間違えないので、ボロが出ないのである。下地、ほんとしっかりしているのである。それに、言われた事は素直にちゃんとマメにやるんですよね。
そして、自分の立場に胡座をかかない。自分が帝国の一番エライ姫様だからといって、調子には乗るのだけれどそこで周りを見下したりとかも元々あんまりしない娘だったんだよなあ。あんまり偏見もないんですよね。地位の低い相手に対しても、フラットな対応をしてるのである。あれ、打算じゃないくて素っぽいんですよね。
酷い滅び方をした前世の帝国でも、なかなかうまく行かなかったけれどミーア姫、ルードヴィッヒと一緒にあれこれ何とかしようとちゃんと動いてもいるのです。決して、生まれ変わってから心いれかえた、というわけではなくて元々あった資質だったのでしょう。彼女に与えられていたずさんな教育が、無知をもたらし彼女を悪女にしてしまった。
まあ堪え性ない所も多分にあったようなのですけれど、数年に渡る地下牢生活が、今世では姫様に王族とは思えないバイタリティを付与してしまったようですが。貧民ですら味わわないような最下層の生活を何年も続けりゃ、そりゃ価値観もある程度変わっちゃいますわなあ。
とはいえ、トントンと姫様の都合の良いように展開していくのも事実なのですが、それを語る地の文がえらい辛辣というかキレキレのツッコミを入れてくれるわ、毒舌で姫様や勝手に勘違いする面々を斬って捨ててくれるので、読んだ時の感触としてバランスが取れてるんですよね。姫様のアホさと小物っぷりがより強調されるというか印象づけられるというか。
でも、それをバカにする気持ちにはならなくて、ひたすら微笑ましいんですよ。ミーア姫のアホさはただただ可愛らしい。その善良さと愛嬌が彼女を愚か者ではなく、愛おしい人にしてくれるのである。
彼女のことを叡智ともてはやす面々もね、ほんとに仲良くなっていく過程で知らず知らず彼女の英邁さや凄さではなく、そのアホ可愛い人となりに惹かれていってるのがなんとなく伝わるんですよね。
侍女のアンヌやルードヴィッヒが前世で結局最後まで彼女を見捨てられなかったのも、そういう所だったんでしょうし。
愛され系ポンコツ小物姫の奮闘記、是非にご笑覧あれ。