【クラスメイトが使い魔になりまして 2】 鶴城 東/なたーしゃ ガガガ文庫

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スキなんて嘘――キライも、たぶん嘘。

落ちこぼれの俺、芦屋想太には藤原千影という分不相応な使い魔がいる。紆余曲折はあったが一応主従関係は継続中。そんななか、藤原本家に呼び出された俺は、売り言葉に買い言葉で千影との婚約を認めることに。おまけに俺たちが婚前交渉しないか、監視役まで付くときた。いや、全裸で懇願されたってしねーよ……一方で、『新魔術』を狙う連中に対抗するため、俺は師匠に特訓を申し込む。
だけどまずは千影と信頼関係を結べ?
なんでこのゴリラ女と、ってうそ暴力はやめ――ごふっ。
喧嘩ップル好きに贈る、険悪主従ラブコメ第2弾!

前回まではソフィアという強烈な魔神が千影に憑依していたが故にその存在感に振り回されて落ち着く暇がなかったのだが、改めて改まって想太と千影、向き合うとなるとここまですれ違っていたのか。
二人とも頑なで意固地なくせに繊細すぎる。
この二人で居てもどうにも落ち着かない空気感って、千影の方じゃなくて想太が原因だったのでしょう。本気で千景に対して心を許していなかったんですよね、これ。彼女に対してだけ他の女性と比べても態度が辛辣でキツイ、というのは決して千影の思い込みではなかったように思う。いや、藤原分家の麗のアプローチに対しても完全拒絶してたけど、あれは藤原家という強圧的な存在そのものへの拒否感みたいなものであったのに対して、千影に対しては彼女本人に思う所あってきつく当たっていた、という感じでしたし。
紐解いて見ると、彼の千影への不信感もわからなくはないんですよ。前回で初めて知った、自分の記憶の封印。それ以前の想太と今の想太は完全に断絶していて、今の想太からすると別人、他人の話にしか思えない。しかし千影が傾倒しているのはその自分の知らない他人の想太なのである。これを果たして面白くない、と思っていたのかどうか。そこまで行くと嫉妬まじり、になるのだけれどそこまで行っているのかどうかはちと微妙に感じられるわけですが、それでも今の自分の方を一顧だにせず自分を消して過去の想太を取り戻そうとしている千影にある種の不信感を抱くのもシチュエーションとしてはわからなくもないんですよね。だからといって、ああいう態度をとってしまうのは意固地もいい所だと思うのですが。
一方の千影は、実のところ今の想太に対しても決してちゃんと見ていないわけではなくて、今の想太と過ごしてきた最近の時間に対しても素直に楽しかったと思うこともあったし、今の想太を気にしている部分もあったわけですけれど、肝心の彼がどんどん自分に対してだけ突き放したような冷たい態度をとってくるわけで、彼女も頑なな性格ですからやっぱり前の優しかった想太が良かった、とどんどん前の想太の方に傾倒していってしまうのも無理からぬこと。
そりゃ、信頼関係なんか結べませんよね、こんな状態じゃ。
お互いに素直になれない、なんて表層のすれ違いではなく、わりと深刻な悪循環だったわけです。ラブコメってる状態じゃないよな、これ。
おまけに、千影の実家の藤原本家への印象は最悪も良い所だし。夢では過去の記憶封印前の幼い頃の自分なんていうどう見ても別人な子が出てきてしまって、余計に過去と今との自身の断絶を実感してしまう、という状況ですし。
そんな今の状態を二人とも自覚さえ出来ていれば解決の緒はあったのかもしれませんけれど、二人ともまるで自覚がなかった。それどころか、信頼関係が結べていないという事実ですら認識していなかったのですから、お師匠の言う通り話にならない段階だったんだなあ。

あの師匠の試練によってようやく二人が現場を認識した上で、本音を突きつけあえたわけですけれど、今回は千影の方が勇気出してて想太の方はずっと受け身で燻っていた気がするなあ。本音ぶつけ合えたのも千影がちゃんと自分の有様に気づいて、踏み込んできたからだし。なので千影えらい。
それでも、ようやくマイナスが解消されてスタート地点じゃないの?という段階に思えるわけだけれど、千影からすると今までずっとスカスカだった手応えがちゃんとした感触として戻ってくるようになったわけだから、大きな進展になるのかな。
しかし、今回は二人の関係をスタート地点に戻すという一歩下がって一歩半進むみたいな話に終始していて、結局前回のソフィア憑依に至った工作の黒幕の話も殆ど進展しなかったんだよなあ。あのまつろわぬ者たちの背後で誰かが動いているというのが明らかになったくらいで。
それどころじゃないくらい、ソフィア再び、のインパクトが大きかったわけですし。あそこまで激烈に酷い振り方をしてヤリ捨てたみたいな形になったソフィアさんですよ。戻ってきたら八つ裂き上等じゃないですか、想太は覚悟したらいいと思うよ。
麗の方もなんか中途半端というか、彼女のポディションが良くわからん。どういう立ち位置を意識しているのだ、この娘。

1巻感想