【ワールドエンドの探索指南】 夏海 公司/ぼや野 電撃文庫

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ボクたちが生き延びるには『地図』が必要だ。安全な場所が記され、『ミサキ』と呼ばれる怪物たちを見つける道標となるものが。丘の上に立つ謎の“学園”で目覚めたボクは、今日も仲間たちと探索に出かける。6人でチームを組み、無人の街を調べ、力を合わせてミサキを倒す。貢献に応じて支払われるポイントで装備を新調し、更なる奥地を目指す。これがボクらの毎日。いつ終わるとも知れない冒険の中、ある時、ボクはこの世界への違和感を訴える女の子と出会い―。

そう言えば、なんであの怪物たちが「ミサキ」なんて名前つけられているのか説明ありましたっけ。なかったよな。いきなりミサキという単語が出てきて、なんだそれはと思っているうちにそれが怪物全体につけられた名前だと話の展開から理解して……という感じで。
やっぱり、7人ミサキが原典なんだろうか。だとすると、随分な皮肉が込められた命名である。
冒頭から中々に壮絶な展開。カラー口絵を見て素直に読み始めてたら、そりゃ一撃食らうだろうなこれは。それだけイラストを贅沢に使っているとも言えるわけで、ほぼレギュラークラスで出演しているにも関わらず、なかなか挿絵で描いてもらえないキャラとか羨ましいんじゃなかろうか。
同時に最初のスタッカートの面々、個々を面影までイメージできるわけですから強烈さも増すというもので、これ以上なく効果的とも言えるのでしょう。
自分の場合、ちらっとネタバレされてたからなあ。それがどういう形かは知らなかったものの、心構えだけは出来てしまっていただけに。
でもまああれ、タイキの方にも大いに問題ありなんでしょうね。正論が正論だから、正しい結論だから受け入れられるというものではない。正確な分析を導き出すのと、それが正確だ、極めて確率の高い可能性だ、と認めさせる事、物事を納得させる能力は全く別物なんですよねえ。
一概に、彼らが無理解だったとは思えません。最初の方はちゃんと意見を聞き入れていたわけですしね。当然、責の大半は情報を信じなかった面々にあるのは間違いないのですけれど、会話を聞いている限りあれは無理だろうなあ。それが正しいとわかっていてもイラッとする物言いですしw
それ以上に話を聞いてもらうための、話す内容を信じてもらうための説得力を付与する前フリ、あるいは餌撒きがないんですよね。いきなり「A」が正しい、だからそうするべきだ、と結論だけ述べて採択を迫る。これをするなら、よほど強権を有するリーダー格でないと容易にチームとしては破綻してしまうでしょう。それか、よほどリーダーにその能力を信頼されるか。
それですら、彼の言うとおりにするリーダーも含めて不満や不和が募っていくでしょうから……なるほどなあトモヤスのあのやり方というのは、タイキというピースの扱い方としては最上にして最適だったと言えるのでしょう。正直、タイキの悪評があそこまで天井に達していなかったら、もっと簡単に彼をチームに組み込めたかもしれない。あそこまで周囲から敵意を集める状態になってしまっていたタイキを、あのままチームの一員としてうまく活用できたかについては、凄まじい綱渡りを要求されそうな難易度だったと思うのだけれど、トモヤスのあの腹芸はちょっと並外れたものがあっただけに、普通に話が転がっていけばトモヤスをリーダーとするあのチームで、タイキも順調にやっていけたのかもしれないと思うんですよね。

まあ、「学園」の中で常識とされていた事が大前提から「アレ」だった時点でどう転がってもそうなる未来は無理だったのですけれど。
しかし、あの執行部の。リンのやり方は振り返っても何がしたかったのかわからない。あのやり方だと損耗が増えるだけで探索速度があがるとは思えないですもんね。無駄に腕の立つチームを消していくだけで、ノウハウも加速度的に失われていくし、どんどんジリ貧になっていくばかりでしょうに。合理的じゃないんだよなあ。一応、彼らのバックの存在とその暗躍が明らかになったけれど、基本的な目的に関しては最初からリンが言っていた通りだったのだとしたら、やっぱり無駄が多すぎて何やってんだコイツラ、と思うばかりで。結局、無理を押した所から破綻して情報が漏れて、全部おじゃんになってしまったのですから、とてもあのリンという人有能だったとは思えないなあ。サイコパスの類だったのは間違いないのでしょうけど。
トモヤスなんか見てたら、彼をうまく活用してたら劇的に探索進むようになってたんじゃないか、と思えてならない。ラストでの展開を見ても、滅茶苦茶有能だもんなあこの人。

色々とリンを通じて、この世界の仕組みについて明らかになってきたわけだけれど、まだタイキたちを含めた「子供」たちの正体。彼らの失われた記憶や世界の謎は定かではないのだけれど……少なくとも出揃った情報から鑑みるに、これって異世界ファンタジーじゃなくてやっぱりSFの部類ですよね? 夏海さんは、やはり徹底してSF者だぞ、これw

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