【氷川先生はオタク彼氏がほしい。1時間目】 篠宮 夕/西沢5ミリ 富士見ファンタジア文庫

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オタクでつながる男子高校生×先生の禁断甘々ラブコメ!

「可愛くて優しいオタク彼女がほしい」
儚い願望を抱くオタク高校生の俺、霧島拓也は春休み――理想の彼女に、出会った。
「そ、その、もう少し君と話せたらなって思ってて……」
オタク美少女、氷川真白さんに!
趣味も相性抜群な俺たちはすぐに仲良くなって、氷川さんの手料理をご馳走になったり、オタクデートを重ね、晴れて恋人になったんだけど……新学期。

「私が皆さんの担任となりました……えっ?」
「……はっ?」

彼女の正体は、学校の鬼教師“雪姫”こと氷川先生だった!?
ちょ、え……生徒と教師って絶対アウトなやつじゃねぇか!

これは俺と氷川先生の、禁じられた二人の、秘密の恋物語だ。

先生、可愛いです可愛いです。25歳はまだ美少女だよ、うん。高校生から見ると、先生なんてのは若かろうが凄く大人に見えるものなんですけど、当の25歳からすると中身はそう簡単に社会人になったからといって大人になってるわけじゃないんですよね。まだこのくらいだったら、気分的には高校生たちとそんな変わってないつもりなんじゃないだろうか。
中身が大人になるって、経年によるものじゃないもんなあ。いい年した自分だってとてもまだ中身大人になってるとは思わんもんね。
しかし、中身がどうだろうと二人の関係は先生と生徒という禁断の関係なのである。でも、この二人の場合珍しいことに教師と生徒という関係から恋愛に発展したのではなくて、お互い自分の立場を知らない間に関係を育み恋人になってから、自分たちが同じ学校の先生と生徒であったと知ってしまうパターンなんですよね。
不思議なことに、こうなると社会的立場によって理不尽に引き裂かれてしまう恋、という観念が芽生えてくるのである。まあ、未成年にちょっかい出してしまっている時点で昨今では十分アウトなのですが。付き合いだした時には二人ともお互いの年齢とか知らなかったんですよねえ。拓也くんは先生が持っていた参考書から女子大生と勘違いしていたわけですし。先生は若干怪しいけどw いや、まさか高校生とは思ってなかったんだろうけど、年下彼氏ーとはしゃいでいた節はあるw
ともあれ、いけないとわかっていて結ばれた関係ではなく、最初にまず恋があっただけにそれが外部要因によって遮断されるというのはやっぱり納得がいかないものがあるんですよね。
それでも、この関係が発覚した場合自分も失職してしまうし、それ以上に未来ある高校生の拓也の将来に傷がつく、という事で一線を引こうとする先生のそれは、それで立派な覚悟であったと思います。
その上でお互い悩み、好きという感情が本物同士であることを確認しあって、それを貫く覚悟を決めるのもまた立派な決意だったんじゃないでしょうか。決して軽く考えていたわけではないし、浮ついた気持ちのまま先走ってしまったわけじゃない。二人とも、身近に建前じゃなくて本音を後押ししてくれるような人たちがいたのも大きいのでしょうけど。禁断の関係である以上、二人きりの孤立した世界となるのは本当に危ういことです。そこに味方になってくれる人がいるというのは、無視できない影響があったでしょう。
それでも、拓也が高校生の間はちゃんと節制したプラトニックな関係を堅持しようというのは、先生なりのケジメではあるんでしょうけれど……卒業まで待ってたらアラサーになっちゃうけど大丈夫ですか先生!?w

とはいえ、先生と生徒の恋人関係というのは難しいものです。秘められた関係であるからこそ、おおっぴらに出来ない関係であるからこそ、拓也には高校生らしい恋愛を経験させてあげたい、という先生の気持ちは……こういうの、大人な部分なんだろうなあ。ただそれは恋人としての責任感とはまた違うわけで。
禁断の関係という重大事に先生も拓也も意識を囚われ、引っ張られていた、と言えるのでしょう。自ら、そういう枠組みに自分たちを当てはめてしまおうという強迫観念に囚われていたのかもしれません。でも、そりゃそうですよね。二人の関係の最大の特徴で特異性は、自分たちから見てもよそから見ても、先生と生徒の恋愛という点がどうしたって目玉になってしまっているのですから。
まず、自分たちの関係は禁断の恋愛関係なのだ、と思ってしまうのも仕方ない。
でも思い出してみてください。最初の二人には、そんな先生だの生徒だのといった立場なんてなかったわけです。氷川真白が好きになったのは、同じ趣味の話が合う男の子で、霧島拓也が恋をしたのはオタク趣味の優しいお姉さんだったのですから。
目の前のどうしようもないくらい厳然とした障害から意識を引き剥がし、原点に立ち戻ることが出来た拓也くん。まずもって自分たちはオタクカップルだったじゃないか、という事に気づいてみせた拓也くんはホント大したものです。
この作品自体も、決して先生と生徒の禁断の恋がメインじゃないんだぞ。オタク趣味の年の差カップルのラブコメであって、先生と生徒であることだけに縛られた話じゃないんだぞ、というところまで引き戻して見せたと思うんですよね、最後の拓也の告白は。あれは、拓也と恋人であり続けると決意し覚悟を決めながら、そこに縛られ先生である自分に自縄自縛になっていた真白先生を文字通り解き放ったんじゃないでしょうか。
恋愛ってのは、苦しむもんじゃないですよね。どんな形の関係であろうと、楽しくないと。
この二人は、今の関係をちゃんと楽しみ続けていくことが出来るカップルに、最後になれたんじゃないでしょうか。うん、よいラブコメです。

篠宮夕作品感想