【覇逆のドラグーン 1 ~落伍竜機士は運命の姫と、暁の極光世界を翔け上がる~】 榊 一郎/もねてぃ HJ文庫

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16歳の竜機士たちの反逆英雄譚!

科学と竜の力が共存する世界。竜機士を育成する軍学校に通う少年・クロウは、ある日突然、異常事態に遭遇する。空を覆うオーロラの下、大人たちが突如、劣等世代とみなされていた「16歳」の少年少女を虐殺し始めたのだ。
学内随一の戦闘力を持ちながらも、反抗的態度から落伍者扱いされていたクロウは、混乱の中、同じく16歳の王国の姫・ルティエと出会い、軍の浮走艦を奪取。仲間とともに謎の敵と戦いつつ、一団を結成し空に旅立つ……!
若き竜機士たちが「世界」を取り戻すべく牙を剥く、反逆の英雄譚!

群像劇、群像劇ですぞ。今までとはアプローチを変えて、敢えて難しい多数の登場人物を描こうという意欲作。さすがはベテラン榊先生というべきで、短い描写やシチュエーションで見事にメインの登場人物たちのキャラを立てることに成功している。むしろこれ、脇の連中の方に力入ってないだろうか、と思うくらいに。
男性キャラも三人いるのだけれど、何気にそれぞれが今までの榊作品の主人公っぽいキャラ立てがされてるような気がするぞ。ヤサグレ系に真面目な優等生タイプにうらぶれた退廃系という三点セット。その中でもうらぶれた三十路のおっさんが委員長キャラな娘とガッツリフラグ立ててしまっていたのには唆られてしまいましたがな。生真面目系のお嬢様が頼りになるけどだらし無い大人の男性に絆されてハマってくというのは、こう、うん、いいね!!
いやまだ、フラグがたったくらいでなにも始まってもいないのだけれど、心折れて立ち直れなくなりそうになっていた所に、そっと背中を支えられて大人の包容力にキュンと来て、みたいな展開があったらそりゃあねえw
今回は群像劇ということで、これまで培ってきたストックを惜しげもなく投入するかのように、最近得意の無感情に見えて感情豊かな我道をゆくタイプのヒロイン、しかも幼馴染というキャラも登場。この娘、完全に【棺姫のチャイカ】のアカリタイプだよなあ。

さて肝心のストーリーですけれど、生まれて来る子を祝福するのに年に一度輝くオーロラの光をお腹に赤ちゃんがいる妊婦に浴びさせる、という世界で気候変動によりオーロラの光を浴びることの出来なかった世代、祝福されざる者たち16歳の男女が主人公となるわけですが、ある祭りの日を境に突然、この16歳の子どもたちをそれ以外の年代の人間たちが無慈悲に、というか無感情に殺戮しはじめるのが、物語のはじまりとなります。
差別感情とか信仰とかによる個々の意志や社会の雰囲気によるものではなくて、この世代の子たちを殺そうとしている時の人間たちは、まるで意志を失った人形かロボットかみたいな感じになってるんですね。そこに意志や感情はなく、まるで原理原則に基づくように機械的に殺戮が行われていくのである。元は仲の良かった親子や知り合いであっても、突然無感情にゴミを廃棄するように殺しにかかってくるのですから、これもうホラーである。
そんな、世界中の人間が敵に回ったような、自分たち以外が全部怪物と化してしまったかのような悪夢の中で、必死に集い身を守りあい生き抜くために戦う少年少女たち。
異世界ファンタジーでありつつも、どこかコズミックホラーかゾンビパニックものの様相もていしている本作。この惑星外からの光とか電波を定期的に浴び続けていた人間たちがおかしくなって、世界が狂ってしまう中でその光だかを浴びることがなかった人たちだけが正気を保っていて、その原因を探りながら生き延びようと抗うサバイバルもの、って前にも似たようなのを読んだような気がするのだけれど、なんだったかなあ、思い出せない。
ともあれ、孤立した少年少女の集団が生き残るために結束して集団を作り、というサバイバルなシチュエーションはやはり燃えるものがあるんですよね。カップル厨的にも色々とくっつきそうなカップルが既に幾つも見受けられるし、メリダ、シビル、カトリーナの三人トリオがまたいい味出してるんですよね。何気に、全員修羅場潜ったのが良い方に作用して、覚悟も決まってて、無闇に暴走する方向に走っていないのも好印象。覚悟が理知に繋がってるんですよね。主人公のクロウも、粗野に見えて非常に気遣い上手な方ですし、この凄惨な状況に一番ダメージ受けていた委員長なクラリッサもアラサーなおっさんのカイルのおかげで立ち直っていますし、メリダたち含めてみんないい意味で自立した優秀さを兼ね備えているので、よく纏まったグループになってるんですよね。
まあこのシチュエーションだと、誰かが馬鹿やってしまった途端に全体がデッドエンドになってしまいかねない過酷さなので、みんなが最善を尽くさないとどうしようもないのですが。
取り敢えず、この絶望的な状況を打破するための糸口が見つかって、そこへと進むことに。でも、この段階で姫を中心に建国を宣言するあたり、最悪自分たちだけで生きていくという覚悟も決まっているんですよね。これは次回以降の展開が非常に楽しみ。

榊一郎作品感想