【最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 2 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する】 タンバ/夕薙 角川スニーカー文庫

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優れた才能とSS級冒険者の力を持ちながらも、無能を装う出涸らし皇子・アルノルト。国を狙う謀略を正体を隠して阻止したものの、皇帝の戯れにより、国の代表として他国に赴く双子の弟・レオに同行するはめに。更に、その船旅の途中で『海竜』に遭遇してレオと引き離され、2人は入れ替わることに!?レオのフリを完璧以上にこなし、異国でも暗躍するアルだったが、目覚めた『海竜』が民に襲い掛かり―「竜の誇りか、くだらないな。人間を舐めるな」爪を隠した出涸らし皇子は、聖剣を召喚したエルナと共に、外交も『海竜』も完全制圧する!最強皇子による縦横無尽の暗躍ファンタジー、激動の第2幕!

どれだけ有能でも一人で出来ることには限りがある。当たり前だけれど、その当たり前を踏まえて現実に当てはめて動くことは案外と難しい。アルノルトも決して慢心して自分が派閥の裏仕事を一手に担っているわけではなく、そういう仕事が出来るのが自分ひとりしかいないという人材不足から、暗躍という名の謀略に駆けずり回っているわけだけれど、余裕綽々で熟せるほどにはキャパシティ大きくなかったんだな、というのが伝わってくる回でした。
はからずもまたレオに化けて予定にない他国との交渉に乗り出さなきゃいけない、という仕事をこなさなくてはならなくなった事もありましたけど、今回ほんとに疲弊してヒーヒー言ってましたもんね。
逆にアルに化けなくてはならなくなったレオも、慣れないぐーたらを演じなくてはいけなくて、こっちもヒーヒー言う羽目になってましたけど。ストレスが貯まるとはいえ、ほぼほぼ完全にレオを演じられるアルと違って、怠ける事に全く慣れてないレオの方はアップアップしてましたもんね。ぐーたら怠けることになんでそんなに頑張らなきゃならないのか。しかも、全然怠けられてなくて、アルさま勤勉になった、みたいな目で見られてた節があるし。
おかげで、二人がようやく合流して入れ替わりをもとに戻せた時の、お互いの安堵感と重石を外したような伸び伸びとした息のあった空気感は、この兄弟がなんだかんだとお互いなくてはならない間柄なんだな、と。二人一組でそれぞれの得意分野で頑張ることが一番うまく回るんだな、というのが伝わってくるシーンでもありました。1巻では、若干ですけどあれだけ完璧にレオに化けられるなら、最悪レオ無しでも場合によってはアルだけで何とかなってしまうんじゃないか、と思われるところがありましたけど、うんこれレオがいないとアルが精神的に過労死するわ。
裏方だけでもこんな疲れ切っているのに、表舞台でまでレオ並に働きだしたら、完全に死ぬわー。
そんな一杯一杯になってるアルを精神的に癒やしてくれるのがフィーネ嬢。彼女、自分の名声をいかして、看板役として以上に勘所で重要な役目を担ってくれたり、よく働いてくれているのですけれど、それより何よりアルのストレス浄化役としての役割が大きな仕事だというのが今回よくわかりました。シルバーとしての正体や、レオやエルナという身内にもあかせない幾つもの事情を踏まえて、あるがままのアルをまるっと受け止めてくれる献身的なフィーネの存在は、今のアルにとってもう生命線みたいになってるんですよねえ。

今回印象的だったのは、前回は見ることができなかった此方も幼馴染同士のはずのレオとエルナのコンビ。レオって結構、エルナとアルの関係についてよく見てるんですよね。ちょっと離れた所から見ているからか、当事者たちよりもよほどそれぞれがお互いに抱いている心情がわかっているようで。アルに対してはムキになって迷走しがちなエルナを、レオがあんな風に諭すとは。彼なりに仲人役を買ってるようにも見えますし、エルナもレオには割と素直に自分の気持ちを吐き出してるんですよね。アルとエルナとはまた違う形ではありますけど、レオとエルナも仲の良い幼馴染なんだなあ、と。
ダイバー卿というもとはエルナの家の騎士だった近衛の隊長も、幼い頃のアルを見知っていた事もあって、アルの人柄や能力、レオを守り立てていくという目的の理解者となり、よき助言者となり支援者となってくれましたし、フィーネの護衛役に雇うことになった傭兵のリンフィアがまたえらい拾い物で。この娘、政治統率謀略武力と軒並み優秀な万能選手じゃないんですか、これ? 色々と任せられる所が多すぎて、一気に人手不足が解消されてしまった感すらあるんですが。
レオのメイドのマリーさん、もっと頑張れw

ともあれ、アルの個人的な手の広さの限界が見えてくると同時に、それを補って余りある人材の確保、人脈の拡大が着々と進み、またレオとアルの一心同体っぷりがよく伝わってくる回でもありました。
しかし、手強いとはいえザンドラやゴードンは性格的に瑕疵が大きすぎて早々に脱落しそうだなあ。

1巻感想