【キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 5】 細音 啓/ 猫鍋蒼 富士見ファンタジア文庫

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ネビュリス王宮までシスベルを護衛することになったイスカ。他勢力より早く妹の身柄を確保すべく捜索に出たアリスリーゼは、そんなイスカと妹が腕を組んで歩く姿を見てしまい…。
「これぞ星の運命。わたくしたち、良い主従関係を結べますわ」
「イスカは帝国には靡かないわ。わたしが誰より知ってるの」
どんな手を使っても唯一の味方としてイスカを手に入れたい妹。使命でも責務でもなく己の意志でイスカと唯一の好敵手であろうとする姉。姉妹の想いが交錯する中、イスカはシスベルを狙う皇庁の怪物と対峙。高潔な意志もなく人であることを捨てた敵―初めて戦う本当の魔女に、剣士は怒りの剣を抜く!

アリスご乱心である。妹シスベルと敵国の兵士であるイスカが一緒にいる場面を目撃してのアリスの反応が、完全に狙ってた男を横から掻っ攫われて歯噛みする女になってて、建前のライバルだの好敵手だのはどうした、と言いたい。
多分、側近の燐も言いたいに違いない。
しかしこれ、対外的には敵国の部隊を自国に引き入れた利敵行為そのもので、シスベルが内通者の歌切りもの扱いされてしまうのを補填していると言われても仕方ないんですよねえ。ただ、それを軽薄というにはシスベルには信頼できる相手がいなさすぎて、頼る相手がイスカしかいなかったというのもわかるだけに二進も三進もいかないところ。
せめて、姉のアリスが信用できる相手だとシスベルに伝わるように両方と親しいイスカが仲介できればいいのだろうけど、現状むしろ姉妹の間を別の意味で決定的に引き裂く火種になりかねないのがイスカくんである。
このまま行くと姉妹で戦争だよね!?
にしても、イスカの立ち位置が相変わらず中途半端。
ミスミス隊長が魔女化してしまったのをバレないようにシスベルに助けてもらう、と目的があるにしてもこの子基本的に場に流されてばっかりな気がするなあ。
彼が言う所の、ネビュリスの皇族を人質にして和平交渉をするって目標、最初からそうなんだけれど希望的観測だけで、仮に人質に取れたとして和平交渉が成立する根拠がまったくないんですよね。
どうやって交渉に持ち込むか、以前に身内の上層部にその案を通すためのツテらしいものもなにもないですし、皇族を人質に取られたからといってネビュリスが交渉に応じるかどうかは、身内の誰も信用できず命の危機を感じて敵国の兵士を頼るしか無いシスベルの現状を見てたら自ずとわかりそうなものだけれど、イスカって自分の考えに固執したまま現状に合わせて修正とか破棄して新しい方策を模索しようという様子が一切見られないんだよなあ。
まあ、情にかられて実行に移そうというつもりがないみたいなので、仮初の目標を立てたままで挿げ替える必要性を感じていないのかもしれないけど。
ネビュリスはネビュリスで、ひらすら権力争いの足の引っ張りあいで女王暗殺事件にまで発展する始末。中立を標榜するヒュドラ家までこうして裏で悪巧みしていたとなると、三大氏族全部が身内で喰らいあいして敵である帝国に内通してるものはいるわ、人間捨てて怪物化してまでマウント取ろうとするやついるわ、控えめに言っても酷い有様である。
しかも、同じルゥ氏族で姉妹であるアリスやシスベル、イリーティアの間ですら時代の女王としての後継争いで信用しあえず牽制しあっている始末ですし。
まあ長女イリーティアが一番怪しい動きしていますけれど、怪しすぎて逆に怪しくないんじゃないかと思えてくるんですけどね、これ。なにしろ、ポンコツアリスとシスベルと同じ血を分けた姉妹なわけですしぃ?

シリーズ感想