【超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです! 9】 海空りく/さくらねこ GA文庫

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「これが終わったら……ツカサさんに伝えたいことがあるんです」
ヤマト兵を率いた奇襲により、緒戦で大勝利を収めた超人高校生は、それでも埋まらない帝国との戦力差を前に、戦線を後退させていた。
十倍近い敵と対峙する過酷な防衛戦。全員の限界が近づく中、司は《青の元帥》ネウロを直接打倒するための作戦を発案する。
だが、かつて彼らと袂を分かった《超人実業家》真田勝人もまた、自らの信念に基づいた行動を始めていて――!?
決戦を前に自分の気持ちに素直になろうとするリルルと、それに正面から向き合う約束をする司。
それぞれの想いが懸かった戦いが幕を開ける!

超人高校生の中で唯一、暁だけが常人である。という描き方をこれまでもされてきましたけれど、彼はその常人という枠の中で怯え恐れ迷いながらも、強さと賢明さというものを掴み続けてきました。
その這い上がってしがみついて掴んだ強さや賢さ、というものは最初から持てる者だった他の高校生たちには決して手に入れる事の出来ないものなのでしょう。
彼ら超人高校生は、人として踏み外してしまったが故に超人と呼ばれる領域に至ってしまった者たちです。でも、その仲間たちの中で唯一暁だけが真っ当に成長し、もっとも素朴な真理を掴み取っている。それは他の高校生たちにとって憧憬であり尊敬であり、自分たちの仲間にそういう人間が居るという事自体が、というよりも暁が自分たちを仲間と思ってくれている事が救いなのかもしれないなあ、と桂音や葵の暁への態度を見ているとふとそんな事を思ったり。
この二人が暁をからかいつつも、凄く大事にしている様子が垣間見えるのはそんな思いがあるからではないでしょうか。彼女らに限らず、高校生たちは自分たちが人でなしであるという強い自覚がありますからね。
これは今回、司がリルルから好意を向けられて苦悩する羽目に象徴されるように、彼らは自分たちがマトモな人生を歩めるとも普通の幸せを享受できるとも思っていない面々が多いんですよね。ろくな死に方をしない、と思ってるんじゃないだろうか。林檎はまだそのへん、初心というか純真で先まで顧みていないようにも見えますけど、他の面々は司と似たような側面を自分の生き様に抱いているんじゃないか。
そういう意味でも、リルルがやろうと思っている告白は司の未来のみならず、彼ら高校生たちへの試金石なのかもしれません。それでも、桂音と葵の二人は特にハズレ切っているきらいがあるので、むしろ彼女らについては暁くんに期待すべきなのかもしれませんねえ。

と言ったところで、ついに登場してしまった帝国の超人皇帝リンドヴルム。この人、ある意味司の対比的な存在なのか。政治家という以上に政治装置に徹しようとしている司よりも、遥かに徹底して自らをシステムとして捉えているその在り方は、方向性こそ違うもののある意味司の見定める先にある存在なのかもしれない。そんな相手を目の前にして、果たして司はどう自分を省みるのか。
それ以前に、リルル大ピンチというありさまなのだけれど。
勝人は、さすがにあのままだと幾ら何でも周りが見えてなさすぎな近視眼的なことになってしまって、超人実業家とか名乗れないぞ、と危惧していたのでその展開はむしろ安心しました。あまりにも目先の利益と安定に囚われすぎて、全部台無しにしそうな勢いだったもんなあ。
ともあれ次回でラスト。はたしてどういう着地を見せるのか。ここまでくれば、しっかりとした結末を手繰り寄せてほしいものです。

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