【ゴブリンスレイヤー 11】  蝸牛くも/神奈月昇 GA文庫

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ゴブリンスレイヤー、砂漠《ゲヘナ》へ! !

「ゴブリン退治はもう飽きたっ!」
「なんじゃい、そんなら竜退治にでも行くんか?」
 夏、妖精弓手や鉱人道士が騒がしいギルドの酒場に、女商人が訪れた。
「お願いしたい冒険があるのです」
 砂漠の広がる東の国境にゴブリンが増えているらしい――。女商人は東国に商談に向かう護衛として、彼ら一党に同行して欲しいという。
「やはりゴブリンか。いつ出発する? 俺も行こう」
 文化の異なる砂漠の隣国、そこで待ち受ける残虐な罠、たまさか出会う砂漠の民、交錯する仕掛人。紅砂の先、彼らは邪悪な企みを知る――。
 蝸牛くも×神奈月昇が贈るダークファンタジー第11弾!


砂漠の国のゴブリンスレイヤー。砂漠仕様の衣装を着込んでご満悦な妖精弓手は何とも保守的な森人らしからぬというか、そういう娘だからこそ森を飛び出てきたんでしょうけどね。
しかしゴブスレさん、国外遠征ははじめてだったのか。エルフの森ってあれ一応王国国内だったのね。人間の踏み入らない密林の奥へと進むのも冒険なら、馬車で隊列を組んで砂漠の海をゆくのもまた冒険。今まで自分たちがいた国では絶対に見る事が出来ないだろう外つ国の幻想的な光景を望み、異国情緒を堪能する。まさにこれが冒険。まさにアドヴェンチャー。ゴブスレさん、今まちがいなく冒険してるよ!
というわけで、相変わらずのゴブリン退治なのですけれど、それ以上に冒険者冥利に尽きる旅程でありました。砂漠に流砂は定番ですよね!!
今回のゴブリン退治の依頼は国絡みということでなかなかきな臭くはあったのですけれど、依頼を持っていたのがあの女商人という事は断る理由がないですね。こちらを見込んで、の事なわけですし。
久々に令嬢騎士から女商人にジョブチェンジした彼女を一党に加えての旅。前回はゴブリンへの復讐であり彼女自身精神的に不安定ということもあって落ち着いて打ち解けた雰囲気には成りづらかったのですけれど、今回は旅の合間もゆっくりとできる時間もあり、大事な依頼ということで緊張感はありつつも、女商人として成熟した彼女としても自分に親身になって良くしてくれたゴブスレ一党との旅というのは感慨もひとしおだったでしょう。重ねて交流を深めていたとはいえ、一緒に冒険の旅となるとまた違ったものがありますしね。
それに、お客様であった前回と違い今回は依頼人という体ではありますけれど、みんなからはパーティーの一員として迎えられている感があり、実際よく馴染んでたんだよなあ。女神官と妖精弓手と女三人で姦しいほどに仲良くキャッキャしていた様子は、実に微笑ましいものでした。女商人って若いけれど成人してると思ってたんだけど、女神官ちゃんは密かに妹扱いしてるのがなんとも。いや実際どっちが年上かわらかないんですけど、神官ちゃんは先輩のつもりなんだなあ。
元魔法剣士というだけあって、今でも剣腕は鋭く魔法もかなり強力なのをぶっ放せるだけに、鉱人道士たちが本気で一党に入らない?と勧誘するのもよくわかるんですよね。前衛後衛両方熟せるの、便利だし強力すぎる。まあこの一党、それが出来るの揃いで何気に凄い強パーティーなんだよなあ。
にしても、今回もゴブリン退治が目的だったとはいえ、これまでとひと味もふた味も違っていて本格的に国絡みの案件だったんですよね。ゴブリンはあくまで危うい動勢の中のわりと重要めな道具だったわけで。ゴブスレさんたちは一連の暗闘の中でそのゴブリンという道具を叩き潰して相手方の一手を失わしめ混乱をもたらすために遣わされた、という形になるのか。
そして、彼らは幾つも伸ばされた謀略の中の一つであって同時進行で他にも幾つも動いていたんですね。その中に、前回登場して私にとってもお気に入りになった必殺仕掛け人パーティーも参戦していて、ゴブスレ一党とすれ違いになるのが何とも妙味があって好きだわー、こういうの。
死して屍拾う者なし、は仕掛け人とか仕事人じゃなくて大江戸捜査網だけど、闇の仕事人の至言としてこれほど相応しくしっくりくる格好良い言葉他にないですよね。韻の良さといい、考えた人天才か。

今回はほんと、最初から最後まで吟遊詩人に唄われるような冒険譚でありました。妖精弓手も満足しきれるような。しかも、最後に出てきた大物ときたら何気に槍使いの兄ちゃんやらが泣いて羨ましがるような相手だったんじゃないでしょうか。ってか、疲弊しきった所で遭遇してあれだけ対抗出来るというのが凄いよ、ゴブスレパーティー。
冒険者に憧れながらもゴブリンへの憎悪によって憧憬に蓋をして閉じ込めていたゴブリンスレイヤー。今の仲間たちと組むようになって、ゴブリン退治は欠かさないものの恐る恐るかつて蓋をした望みをオモテに出すようになった彼だけれど、今回の冒険はまさにかつて思い描いて憧れ焦がれたアドヴェンチャーそのもの。密かに感動を噛み締めている彼の姿がなんとも染み入るものがありました。
良かったね、ゴブリンスレイヤーさん。


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