【EDGEシリーズ 神々のいない星で 僕と先輩の惑星クラフト〈上〉】  川上稔/ さとやす(TENKY) 電撃の新文芸

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気づくと現場は1990年代。立川にある広大な学園都市の中で、僕こと住良木・出見は、ゲーム部で8bit&16bit系のゲームをしたり、巨乳の先輩がお隣に引っ越してきたりと学生生活をエンジョイしていたのだけれど……。ひょんなことから“人間代表”として、とある惑星の天地創造を任されることに!?
『境界線上のホライゾン』の作中で言及される“神代の時代”――人類が宇宙に進出し神へと至ったとされる時代に人々は何を行なっていたのか?
AHEADとGENESISを繋ぐ《EDGE》シリーズ! 「カクヨム」で好評連載中の新感覚チャットノベルが書籍化!

神々がいない星で……って、神々いっぱいいるよ!? ってか、神々しかいないよ!? 神々しかいない神々がいない星、って謎掛けみたいだけれど、これもこれでちゃんと理由があるんですね。
そんな片っ端から神様ばっかりな星の上の唯一の人類、人間、猿! なのが彼、僕こと住良木・出見くんなのである。
……この馬鹿、なんの脈絡もなく女体化しやがったぞ!? 住良木君じゃなくなったぞ!? 前作の主人公は何の脈絡もなく出番の大半を全裸で過ごすガチモザイク野郎だったけど、こいつはこいつでとんでもないなー。いや、女体化してしまったのはコイツのせいではまったくないのだけれど、なぜか住良木くんの自業自得だよね! と思ってしまう不思議!
でも、自業自得どころか当人自分が男でも女でも特に関係なく平常運転の巨乳信仰先輩信者なので、別に関係ない気がするぞ、うん。
にしても、唯一の人類にも関わらずなんでこんな人類の極北みたいなのになってしまったんだろう。平均値とは言わないまでも、いやぶっちゃけ極端なやつでも良かったんだろうけれど、彼に関しては極まったキワモノ! って感じだもんなあ。
馬鹿である。
しかし、彼の馬鹿はブレない馬鹿だ。揺らいではいけない部分が一切揺らがない馬鹿なのだ。
おのれが名前を名乗れない神である「先輩」。その理由は神話的由来によるものなのか、彼女の自信の欠如によるものか、その双方であるのかは定かではないのだけれど、それでも彼女が勇気を持ってこの惑星クラフトに挑めているのは、「先輩」を大好きで居続ける住良木くんがいるからなんですよね。彼が信じているからこそ、彼女はこの綱渡りに行われている惑星創世神話創造を続けられている。幾度も幾度も、ミスって死んでしまって記憶の大半を失ってしまっても、ただ「先輩」を大好きだという事実だけは一切変わらず揺らがずブレることのない住良木くんのバカ正直なあり方が、希望を繋いでいてくれる。
実質、何度も何度も最初からやり直して、住良木くんへの説明も何度も繰り返すはめになっているの、先輩に限らずこの事業に協力してくれている北欧神話群の徹先輩たちもかなりツラいと思うんですよね。一種の苦行の側にあると思うのだけれど、住良木くんのお馬鹿はそんなルーチンワークをワーク感覚からすっ飛ばしてくれて、シッチャカメッチャカに酷いことになるんだけれど、そのドタバタが苦痛をもふっとばしてくれている気がするんですよね。そんな存在自体がおバカな住良木くんが、どうしようもなく愛おしくなるほどに。

しかしこれ、最初テラフォーミングって言っているから居住可能に星の環境を改造するのかと思ってたんですよね。言ってみれば、リフォーム感覚? 通常、SFでもテラフォーミングというとそんな感じじゃないですか。でも、本作の場合だとこれ人類が生存可能か不可能か、という段階じゃなくて、生命が存在できない環境。大地も水も大気も見事になくなっちゃってる状態じゃないですかー! なるほど、タイトルがテラフォーミングじゃなくて惑星クラフトになってるの、こういう事だったのか。
最初、AIたちが行っていたテラフォーミングがどうして見事に大失敗して、失敗どころか「星」そのものと敵対状態になっちゃう過程が、単なるSFじゃなくてこれが確かに川上ワールドである事が実感できる面白い話になってるんですね。
なぜ、神々がいない星にいまこうして神様たちが大挙して存在しているのか。どうして、90年代の地球が仮想形成されているのか。どうして住良木くんが、唯一の人類として重要キープレイヤーとして存在しているのか。
色々と前提となるお話、解説、説明、漫才が独特のチャット形式で描かれているわけです。って、このチャット形式って境界線上のホライゾンで使われていたものを本格ベースに乗っけたものなのかー。
古くは都市シリーズの【電詞都市DT】でメール形式とかやってたのを思い出すと隔絶の感がありますなあ。あれ、凄まじく読みにくかったし。というか、DTはちと早すぎたのか。

上巻はまだ前提情報を開示する、という感じで色々と説明が大半を占めるのだけれど、惑星という天体の成り立ちから生存環境が形成されるまでの道筋。神話というものがいかにして生まれ、世界各地に広がっていったのか。そんな話が結構本格的に語られているのが面白くて、ついつい読み耽ってしまう。
そして、唯一の人間である住良木くんの存在は、世界各地の神話群からも注目の的で、彼の存在が握っている主導権を巡って、政治的駆け引きが繰り広げられるのであるが、住良木くんは先輩が大好きな巨乳信者なので、そこだけは揺るがないのだ。まさに巨乳に捧げるアンビシャス!

ちなみに、先輩は神道由来の神様らしい。慈愛に満ちた懐のおおきいお姉さん、に見える表紙ですが案の定、相当のポンコツである。とりあえず、こんな余裕いっぱいの顔している時間は微小ですね、微小。アワアワわたわたしているのが大半の実に可愛らしい巨乳である。いやー、これほど「巨乳!」という圧を感じるジャケットデザインはなかなかお目にかかれないぞー。さすがはさとやす様である。

とまあ、住良木くんと先輩がわいわいイチャイチャしているお話でもあるのですけれど、彼らの協力者でもある徹先輩と紫布先輩のカップルも設定的にご夫婦なせいか、ナチュラルにイチャイチャしてて色々と毒ですよ? 徹先輩、ちと性格もイケメンすぎて嫁に対しても器が大きすぎるので、総じて格好良すぎる問題。