【わたしの知らない、先輩の100コのこと2】  兎谷 あおい/ふーみ MF文庫J

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おはようございますせんぱい。『今日の一問』してもいいですか?

"最寄り駅が同じ"以外接点がなかった先輩と後輩がある日、朝の通学時に約束を交わしました。その内容とは『1日1問だけ、どんな質問にも絶対正直に答える』というもの。
そうして先輩と後輩は毎日質問をし続け、お互いのことを少しずつ知っていき……もう最近では『今日の一問』と言いつつ、お互いのプライベートをどんどん知っちゃう関係に。そうして1ヶ月が経ち――冬目前。2人の距離は普通の先輩と後輩よりも、ちょっとだけ近い距離になりました。さて今回は、どこまで2人は距離を縮めるのか。どうぞお楽しみください。

まだ50問!? 二ヶ月経ってなかったの!? と、ちと本気で驚いてしまった。それくらいには、この二人の距離感が近くなってるんですよね。それも、長年とは言わずとも一年以上交友が続いてると思えてしまうくらいには。それだけ、二人のお互いへの理解度が深まっている、という事なのだろう。
まあ真春のぐいぐい攻める姿勢が積極的どころじゃない、というのもあるんだろうけど。付き合ってもいないのに、出会って一ヶ月経たないで家まで来るってなかなかの勇気ですよ、怖いもの知らずですよ。
それでなくても、休日に出不精な慶太を連れ出すことに早々に成功して、それ以降度々休みの日になるとデートみたく一緒に遊びに行くようになって、家にもチャンスあれば上がり込むようになり、慶太の母とはLINEでやり取りするような仲になり、通学時だけじゃなく学校内でも交流するようになり、と着実に進展していく二人の仲。というか、これもうただの友達とか先輩後輩の関係じゃないですよね。時間と空間の共有が明らかに特別で、お互いのために多大なプライベートを割いている。慶太に関しては本を読む時間が確実に大幅に減っているにも関わらず、これを負担や損害に感じていない。それは真春と一緒にいる時間の方が彼にとってもう優先事項になってるんですね。
そうやって二人での時間の過ごし方は、交際している男女のようにしか見えない。見えないですよね? え? 若い子って異性の友達でもこのくらい普通にしてます? してないですよね?(ジェネギャップ!
なんにせよ、彼ら二人の一緒にいるときの日常感は、なんともリアリティがあって感心してしまった。ラブコメラブコメしてなくて、自然体な感じがすごく「普通」のリアリティがあったんですよね。だからこそ、余計に付き合っている交際している男女関係、という空気感を感じてしまうのですけれど。
二巻に入って、お互いへの一問一答に探りがなくなってきた、というのもあるのでしょう。自分たちでも自己分析して、質問の仕方や内容について段々と変わってきていると認めていましたけれど、もうプロフィール情報を得るためじゃなくて、二人にとってのより良い一日、より良い時間を過ごすためにこの時に何を求めているか、何が必要だと思うか、どうしたらいいか、というのを率直に聞きあっているような内容なんですよね……。
意外と、相手に意見を聞く、という行為自体、交際の有無に限らず人間関係のなかでやってない事なんじゃないだろうか、とふと思ったり。一問一答を一日の中で義務付けている、というか権利付けているおかげか、相手に問う、という行為がこの二人の間では常態化しているのだけれど、これが思いの外お互いへの理解度を深めるだけではなくて、今この瞬間の相手の気持ち、考えを放っておかない事に繋がっているようなんですよね。
それが、二人の関係が育まれる時間の短さを補うだけの密度の濃さをもたらしているのではないだろうか。わずか一ヶ月半にも満たない交流の中で、これだけ深く気心が知れた関係になれたのは、率直に問うことで相手のことを知り合う機会を、一日一回以上という多大な回数得ているから、というのはアリ得る話じゃないだろうか。
もちろん、相手のことを知るために一気に情報を得る、という方法もあるのだろうけれど、それは単に上っ面の情報を入力しているだけで、相手のことを本当の意味で知ったわけじゃない、というのは真春の前の交際が早々に破綻したことからも明らかだろう。その意味でも、一日一問だけ、というのは想像以上に有効な方法だったのかもしれない。その一日一度知った情報をその一日の中で味わい噛み締め活用し身に染み込ませることで、そこから派生した出来事、エピソードが血肉となって思い出の中に残ることになる。
そう、それは単なる情報ではなく、積み重なる思い出の一つとなるのだ。そんな思い出を、毎日毎日積み上げていく。真春は毎日の一問一答をちゃんと日記に残しているようだし、全部振り返って思いかえることが出来るんですよね。そうやって積み重なっていった50日は、本当に密度の濃い50日だったのだろう。
時折、交際からわずか3ヶ月とか半年とか、一年にも満たない期間でスピード結婚するカップルとかが居て、今まではそういうの何を考えているんだろう、と胡乱に思えていたのだけれど、この作品の二人のように毎日密度の濃い一日一日を過ごしての三ヶ月とか半年なら、それは全然早くなんてないのかもしれないなあ、なんて事を思ったりもしたのでした。

さて、この物語における二人も順調に進展する関係をそのままただの先輩後輩、同じ時間に通学する同行者、という枠組みで囲い込むには無理が生じてきたようで。うん、ごく自然に次のステップへと進む心積もりが、二人の間に生じていく。まあ最初から真春はそのつもりだったのだけれど、慶太の心境の変化を目の当たりにすると、真春の行程はまったく見事としか言いようがない。
タイミングとしては絶妙すぎる59日目のあれは、まさか狂言か? と疑いたくすらなったのだけれど、どうやらガチだったみたいで、まあ真春としても焦るタイミングではなかったので急かす意味はなかったものね。
ともあれ、この件で慶太としても腹が据わり、でもここで焦って一気に飛び越えることをせずに着実に目標を定めるあたりが、この生徒会長の性格が見えてきて面白い。なるほど、真春とこういうところでバランスが取れているのかもしれないなあ。