【侯爵令嬢の借金執事 許嫁になったお嬢様との同居生活がはじまりました】  七野りく/mmu 角川スニーカー文庫

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父の作った膨大な額の借金、さらに祖父と先代侯爵の遺した誓約

『子供達を結婚させ、一族となろう!』

により、侯爵令嬢エミリアの執事兼、許嫁となったジャック。
対するエミリアは――「い、言っとくけど、貴方の許嫁になったつもりはないからっ!」
「! そうだよな! 破談になるよう頑張ろうな!」「……バカ」

しかし、言葉とは裏腹に片時もジャックの側を離れようとせず、帝国魔導学院にジャックを入学させ、
自分を頼るように仕向けるが――金はないけど器用なジャックは一人で何でもこなしてしまう!
(少しは私の気持ちも考えなさいよ……!)

『公女殿下の家庭教師』著者、新シリーズ始動!
ツンデレお嬢様×借金執事、甘々なお屋敷同居生活スタート!

うん? うん? これ執事になった、という事になっているけれど、執事らしい事一切していないように見えるんだけど。仕事をしていない以前に、態度姿勢言葉遣いも主君令嬢に仕えるバトラーのものじゃないんですよね。
ただこれ、ジャックのせいじゃなくて侯爵家が名目だけ執事にして常にエミリアと一緒に居るための理由をこじつけたせいなので、ジャックは執事として教育を受けたわけでもなく執事としての仕事を教示されたわけでもなく、上下関係皆無の態度もむしろ侯爵家側からそのように、と促された向きもあるので、繰り返しになるますけどジャックが全然執事していないのはジャック自身になんの責もないのです。
でもジャックが全然執事していないのもまた事実! これタイトル詐欺じゃないの?
そもそも、婚約者として引き入れたい侯爵家が彼を執事にする必要性って、皆無なんですよね。ストーリー展開ゆえの必然ではなく、主人公を執事にしたいから、という設定ありきな事になってるんじゃないだろうか。
そもそも、ジャックの扱いが完全に間違えている気がするんですよね。彼は辺境出身の貧乏貴族の子息なので、貴族の子女らしい所は殆どなくて野生児じみた野趣があり快活で後腐れないスッキリとした性格をしていて、背の低さを気にしている可愛らしいところもあり、言ってみれば好漢なんですよ。非常に気のいい気持ちの良い好人物だと言えます。
この子には、誠心誠意真心をもって話せば大概のことは聞いてくれると思うんですよね。変に借金で首輪をつけて、執事なんて役職で無理やり一緒に居させる、なんて真似はむしろ遠回りになってるんですよね。実際、侯爵家の意図もエミリアの真意もジャックは見事に勘違いしてしまって、相手のことを思ってなるべく距離を置こう、と最初の段階で心がけようとしてしまっているわけですし。
彼への対応としては悪手にしか見えないんですよねえ。
エミリアの態度も問題である。ツンデレはいいんだけれど、なんでこの娘ってジャックにツンツンしてるんだろう。素直になれない性格だから? 昔のこと覚えていなかったのを拗ねているから? あれだけ好き好きオーラだしてベタベタしてるのに、無理やりツンツンしているように見えるんですよね。そういうキャラだから? そういう設定だから? うーん、エミリアという娘さんのキャラとして積み上げられたものは、あのジャックを好きで一生懸命好意を伝えようとしているところ、可愛くあろうとしているところであるように見えるんですよね。でも、ツンツンしているのは無理やり接続された属性に見えてしまって、話の流れそのものや作品の雰囲気を阻害してしまっている気がします。実にもったいない。
それに、彼女のツンってエミリアを嫌な子に見せてしまってると思うんですよね。彼女のヒロインとしての魅力につながっていないどころか邪魔しているようにすら見えてしまう。おまけに独りよがりで自己完結して、結局ジャックばかり見ているようでなんにも見えていなかったようになってしまっているし。
これ、全部ジャックが察して汲んでくれたから良い方に転がっただけで、ジャックの姉ちゃんが借金返済するから弟返せ、と言ってきた段階で借金ネタは大失敗だったのが露呈しているし、エミリアの現状をちゃんとジャックに伝えていれば、婚約者問題もここまで拗れなかっただろうしなあ。
殆どジャックの好人物っぷりに救われてるんですよね、これ。
ネイもあれ、なんでジャックとマジになって戦ってたんだろう。あそこで彼が本気になる理由が本当にさっぱりわからないんですけど。ジャックとの決闘、八百長の出来レースだと話が盛り上がらないから? さすがにあそこでネイが頑張ってしまう理由がわからなくて、首を傾げてしまいました。自分の恋路的にもまったく勝つ理由なかったのに。
なんか、全体的に最初に用意した設定やプロットに強引に寄せることで、自然なストーリー展開やキャラクターの感情の動き方に違和感を催してしまうような作りになってしまっていた気がします。
個々のキャラクターの描き方や、掛け合いの溌剌さ、好きな気持ちが目一杯に籠もった甘酸っぱい言動など、見るべき所はたくさんあっただけに、ちょっと残念な部分が目立ってしまった気がします。
あとあれ、自分はどうも相手に聞こえない小声でブツブツ本音をつぶやく会話はあんまり好きじゃないたみたいです。単にこの作品でのそうした手法の扱い方が好みじゃないだけかもしれませんが。

七野りく作品感想