【ゴブリンスレイヤー 12】  蝸牛 くも/神奈月 昇 GA文庫

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「ゴブリンってやっぱ雑魚だな! 」
棍棒剣士と至高神の聖女に白兎猟兵の一党は、活躍の場を広げていた。
だが、勝てない敵もいる訳で――。

「騎士に魔術師、神官、野伏とそろったらやる事は一つだろう」
女神官は、女騎士の発案で、魔女と妖精弓手の四人で冒険に出かけていき――なぜか砦の攻城戦に巻き込まれていた――。

「ま、簡単な仕掛だから」
水の街の仕掛人は、ヤクの売人の始末に向かい、死体に出会う――。

そしてゴブリンスレイヤーは再び槍使いと重戦士に誘われ――。

四方世界で紡がれる、十の物語。
蝸牛くも×神奈月昇が贈るダークファンタジー第12弾!
珍しく、というかシリーズ初なんじゃないだろうか。最初から最後までゴブリンをスレイしないゴブリンスレイヤーである。
短編集という形式なのか、それとも元のメンバーをバラけさせて、いつもと違うメンツで組んだパーティーでの冒険をそれぞれ綴ったオムニバス。
こうしてみると、ゴブスレさんのパーティー以外にも作品内で活動を続けている常連冒険者たちも増えたなあ。ベテラン古参たちは相変わらずなのだけれど、目覚ましいのは新米冒険者たち。いや、新米だった冒険者たち。おそらく一番の成長株な女神官ちゃんを除いても、新米だった若者たちの名称からその「新米」がいつの間にか取り外されてるんですよね。あの少年冒険者が棍棒剣士なんて名前になっているように……いや、これはこれで何気に酷い気がするけれどw 棍棒と剣の二刀流なので名は体を表すにちゃんとなっているのだけれど。
それでも、ネズミ退治でヒーヒー言ってたルーキーが、白兎猟兵をメンバーに加えて、聖女ちゃんと今や飛竜と追いかけっ子するまでに至っているのだから。この子たちは、古参連中に教えを請いつつも若い子たちだけで頑張っているのがまた成長譚という感じがして好きなんですよね。幼馴染の聖女ちゃんとちょっと突飛な兎人の少女という女の子二人とのパーティーというのも、男の子を目一杯背伸びさせる構成で、頑張る男の子がまた可愛いのだ。
あの捻くれ者の少年魔術師も、順調に真っ当に着実に、自分にできることをきちんと見極めてまっすぐ伸びている姿を見ることが出来て、うん……うん、じんわりと来るものがある。
女神官ちゃんは、妖精弓手と一緒に今度は女騎士と魔女先輩と一緒にガールズパーティーである。で、一番ガチの戦争に首突っ込んでいるのだから大したものだ。攻め寄せてくる混沌勢を食い止める砦に入って、兵士たちと一緒に籠城戦。この娘も戦塵を被っても怯まない貫禄が出てきて、女騎士や魔女先輩というメンツと並んでも臆さないぐらい、貫禄が出てきてるんですよねえ、大したもんだ。
そしてここ数巻めっちゃ推してきているらしい仕掛け人な密偵組。今まででも一番らしい「仕事人」なお話で、いや彼らってホントに必殺仕事人シリーズがモチーフですか? 密偵くんが元はオモテで脚光を浴びた一種のスポーツ選手みたいな感じの人だった、というのがアングラの人間であり闇を背負いながらもその心根に涼やかさがあるのに納得を覚える過去であり、そんな彼が今は殺しにも手を染める、という姿にピカレスクロマンの風情を感じるんですよね。相棒のチェンジリングの森人の少女とのコンビも、お互いを大切に思いながらも寄り添い合いながら闇に沈んでいくような退廃さを感じさせるものがあり、いつ死んでも躯を晒すことになろうともそれは当然だと受け止めている精神性と、同時に仲間を思いやり傍らの少女を想う優しさがまた、ダークな温かみがあってほんとこのチーム好きですわー。森人の少女が密偵の彼のためにタバコの火をつける道具を持ち歩いていて、彼がタバコを吸おうとすると、そっと寄り添って火を点けるシーン、最高に好きです。

王様は遊びに行けず、不憫なりw
女商人さん、何気に王様の行動を掣肘したりしてるの、もう商人の枠飛び越えて側近格として働ける知見を示してしまってやいないだろうか。

そして我らがゴブスレさんは、重戦士の旦那と槍使いの兄貴に引っ張られて、三人で依頼を受けた冒険に。上記のガールズパーティーとは裏腹の凄まじい男臭い三人組トリオパーティーである。しかも戦士戦士戦士という前衛三人という偏った構成。普通に考えても、おいおいおい、としか言えない構成である。ゴブスレさんが斥候スキル持ち、槍使いの兄貴が呪文も使えるという面はありますけれど、本職は戦士戦士戦士!w
ところが、この脳筋編成でまったく危なげないあたりが、彼らの銀級というクラスの凄まじさを改めて実感してしまう次第。能力的な強さじゃなくて、冒険者としての強かさ、熟れた判断力こそが彼らをして銀級というクラスを得ているのだなあ、と納得である。優秀、というのはこういうのを意味してるんだろうなあ……でも、脳筋なのは間違いないw
わりと会話が弾んでいるあたり、ゴブスレさんもこれかなり楽しかったっぽい。今回は本当に一からゴブリン関係なしの一から十まで「冒険」でしたからね。
しかして、一連の冒険者たちの「冒険」が全部混沌勢との戦いという「キャンペーン」であり、みんなが各地で動き頑張った集大成として勇者ちゃんたち三人のボス戦に繋がっているのは、今までもあったことですけれど今回は特に明確に作戦として描かれた絵図だっただけに、歯ごたえのある「総力戦」でありました。今回、いつもは快活に敵ぶっ飛ばす勇者ちゃんたちが本格的に死闘を繰り広げていたのが印象的。いつも楽勝、というわけではさすがにないのか。一番の切り札である彼女らを万全の状態で投入できたにも関わらず、これだけ苦戦だったというのは結構全体としてもギリギリだったのかもしれない。砦の攻防戦もけっこう瀬戸際な場面もありましたし。

ともあれ、最後がまた印象的なんですよね。シリーズはじまった当初は復讐に存在そのものがソめげられ、その頭にはゴブリンを殺す以外残っていなさそうだったゴブスレさんが、ゴブリンを殺すことだけがすべてであった彼が、ゴブリン退治だけが世界のすべてではない、それは当たり前のことだ。「当たり前」だと思い馳せるのである。彼はこれからもゴブリンを殺し続ける、それは変わらないしそれを務めであると引き受けているけれど、もう彼にとってもそれだけが存在理由じゃなくなっている。その事実を、彼の内面から実感できた最後のシーンは、うん彼の変化はもう随分と前からだけれど、改めて感慨深く感じさせてくれるものでした。