【メイデーア転生物語 2.この世界に怖いものなどない救世主】 友麻碧/雨壱 絵穹 富士見L文庫

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“世界で一番悪い魔女”の末裔マキアは、“救世主の守護者”となり引き離された元騎士のトールと、舞踏会で再会を果たした。ところがマキアに守護者の印が現れたことで、事態は一変。“救世主の少女”アイリの相談役として、王宮通いを始めることに。トールに会えるようにはなったものの、使命の前に力不足を感じたマキアは、魔術師として成長するため魔法学校の授業に励む。だが救世主を狙う刺客は、否応なくマキアの前にも現れはじめ…。魔法世界“メイデーア”に選ばれた者たちの物語が交差する。

マキアが精神的にも弱っていて、凄く繊細で儚げな女の子になってしまってる。パワフルで前向きでガンガンいこうぜ、な元気いっぱい天真爛漫なマキアさんが、えらい落ち込んでしまって俯いてため息をついている様子を見るのは、やはりつらい。傍若無人なくらいにドーンと胸を張ってトールを引っ張り回すくらいの彼女が好きだから、やっぱりつらい。
でも、“世界で一番悪い魔女”も前作ベースだとしたら、わりとこう肝心な所で内気というか、大事な所で引っ込み思案になってしまう所があったし、精神的にも決して強いわけではなく恋に対して凄く臆病な所のあった人でしたから、こうもマキアとトールの間を引き離そうとする境遇が舞い込んでくると、そりゃ落ち込んでしまうわなあ。へこむし、不安を振り切れなくなる。
守護者になる、ということはトールと同じ立場に立つということで、離れ離れになっていたのがこれで一緒に居られるようになるんじゃないか、とも思ったのだけれどそう簡単な話ではなかったんですね。守護者とは、他のすべてを排して何よりも救世主を優先して守るもの。勿論、トールはいざというときマキアではなく、マキアを見捨てても救世主であるアイリを守らなきゃならないし、アイリを差し置いてトールとマキアで仲睦まじく、なんて真似をしてもいけない。
救世主をこそ、唯一無二としなければならない。
そんな守護者という役割が、むしろ今まで以上にマキアとトールの距離を引き離してしまうことになる。お互いに、こんなにも求めあっているというのに、手を伸ばしてお互いを抱きしめようとしているのに、彼らはこうして分かたれてしまう。
魔法学校で頑張って良い成績をとって、少しでもトールのそばに居られる役職につこうと頑張っていたのが、余計に変な形ではしごを外されたようになってしまい、踏み出すべき地面がかき消えて宙を掻くみたいになってしまったのも無理からぬことだろう。
それでも、トールに自分と救世主の二者択一を迫ることのないように、トールが自分を守る必要がないようにもっと強くなるのだ、と自他に宣言するマキアだけれど、どうしても無理しているようにしか見えなくて、痛々しいんですよね。前向きに奮起して頑張ろうというのなら、どんな無理でも無茶でもなんとかしてしまいそうなバイタリティのある娘なんですけど、今回のこれは空元気のようでほんとにツラい。
今となってはラピスたち魔法学院の同じ班のメンバーが心の支えだ。事情を知らずとも、マキアを心から応援してくれる彼らの存在こそが、マキアを支えていてくれる。他にも何だかんだとユリウス先生をはじめとして味方も多いのが幸いなのだけれど、肝心の救世主のアイリがマキアを絶対的に敵視しているものだから、否応なくトールとの間を引き裂くお邪魔虫になってくる。何より、その姿勢が陰湿なんですよね。それでいて、自分が被害者、弱者のように振る舞っている。
元々、マキアの前世と友達だった頃からあちらの地球でも陰鬱な内面を煮込んでいたみたいだけれど、こうなってくると果たして挽回の余地があるんだろうか。
一方で、株を爆上げしたのが傲慢令嬢だったベアトリーチェである。そのプライドの高さが彼女に品位をさげるような行動を許さなかったのか。ギルバート王子に後ろ足で砂をかけられたような状況であったにも関わらず、恨み言を一言も言わずに毅然と「諦め」てみせた上に自身の身内である執事を全霊をもって守ろうとした姿勢は、敬するに値するものでした。マキアも琴線に触れるわなあ、これ。だからこそ、ベアトリーチェを信じられたのだろうし、最後まで決して疑うことなく自分を信じて守ってくれたマキアに対して、ベアトリーチェのあの何があろうと自分は絶対に味方になる、助けるから、という宣言はホント、胸が熱くなる頼もしい言葉で、色々と弱ってたマキアにとっては嬉しいどころじゃなかっただろう。あんな風に決然と言ってのけれるベアトリーチェはホントかっこいいですわ。

マキアも、いつまでもグジグジとしていられず、このメイデーアの世界を、そこに生きている人たちの意志や尊厳を蔑ろにして悪びれない、悪いとも思っていない、そもそも人だと思っていない、自分の都合の良い物語としてしか捉えようとしていない現実から目を背け続けるアイリに、一発かましてやった展開には、やはりスカッとするものがありました。いっぺん、誰かがバシッと言わなきゃいけなかったところですし。一歩引いたままではなく、敢えて前に踏み出し、かつての親友として、恋敵として、真っ向からアイリと向き合って喧嘩する覚悟を決めたマキア。それは、前に踏み出したということ。やる気になったということ。まだまだ迷い落ち込み弱気になることもあるでしょうけれど、マキアらしいパワフルにガンガン行く姿が、この覚悟を持った今なら見られる気がします。
というか、あのヤンキー司祭なエスカがついに登場してマキアに絡みだした以上、お尻蹴っ飛ばしてでも俯いていられなくしてくれそうですが。このヤンキー兄ちゃんは色んな意味で頼もしいからなあ。
藤姫もまたその姿を現し、悪役たる道化師もまた暗躍をはじめ、そして最後にあの「本物」が現れる。
メイデーアという世界の物語が、歴史上の英雄たちの再臨によってとうとう本格的に動き出してきたぞ。