【デート・ア・ライブ 22.十香グッドエンド(下)】 橘 公司/つなこ 富士見ファンタジア文庫

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さあ――私たちの戦争を終わらせましょう
精霊が存在しないはずの世界に現れた謎の精霊“ビースト”。目的も正体も不明の中、五河士道への執着を見せる謎の少女に、少年は命懸けの対話を試みる。元精霊の少女たちも士道の決意を叶えるため、覚悟を以て戦場へと集結する。精霊としての力があろうがなかろうが、関係はない。デートして、デレさせる―それこそが、これまで積み重ねてきたすべてなのだから。
「―おまえを、救いにきたんだ」「―シドー…」
そして戦争は物語の始まりでもある運命の日、四月一〇日を再び迎える―。新世代ボーイ・ミーツ・ガール完結!

終わった……。しばし感慨に浸る。
あらすじのいつもの「さあ――私たちの戦争をはじめましょう」がこの巻に至って、「さあ――私たちの戦争を終わらせましょう」と綴られているのを見てから、最終巻の雰囲気たっぷりだったのですが、読み終わって改めてぼんやりと終わったなあ、という感慨を噛みしめる。
長い、長いシリーズでしたけれど本作ってどちらかというと尻上がりのシリーズだった気がするんですよね。巻を重ねるごとに面白くなっていった。盛り上がっていった。キャラが掘り下げられ、世界観の深淵が覗けて、増えていく精霊たちが一人ひとりの出番が薄くなるどころか化学反応を起こして、むしろ自己主張や存在感が増えていくような。そんなどんどん広く大きく密度濃くなっていく物語でした。
正直、グッドエンドというサブタイトルは……この次にトゥルーエンドとかグランドシナリオとかがあるんでは、と構えてしまったのですけれど、どうやら本当にこれが最後の模様です。
あとがきで作者さんが登場人物の一人ひとりに、感謝の言葉を綴っていくんですよ。キャラの感想とか紹介じゃなくて、一人ひとりに語りかけてありがとうを告げていく。この物語とキャラクターたちへの愛情の深さと温かさを感じさせてくれる光景でした。
さながら卒業式みたいで、じんわりキてしまった。

涙腺に殴りかかってきたと言えば、冒頭からの六喰の話は初っ端からガンガン来られましたけどね。六喰という娘は後発も最後発の登場で、日常編なんかでも新しい顔を見せてくれてこれからもっと色んな側面を見せてほしいと思わせてくれる娘だったんだけれど、この家族との再会編はあの「頑張って」に送り出されるシーンの破壊力はほんとパなかった。
対してなかなかショックだったのが七罪の過去。この娘の過去って、本人が匂わせていた人間不信気味のコミュ障とか学校で虐められてたっぽい反応から想像していたものと、実際のそれはかけ離れてたんですよね。悪い方向に。
虐められてたレベルじゃないじゃん。うん、いや学校ではいじめというか阻害されてたみたいだけれど、それ以上に家族関係が最悪すぎてちょっと絶句レベルでした。むしろ、あんな環境で育ってよくこんないい子に育ったものです。七罪の強さ優しさは家庭環境に負けなかった、歪まず屈折せず七罪が個人で勝ち取ったものと言えるのでしょう。多少捻くれてたり自虐気味だったりするの、むしろよくその程度で押し留めたよ、と言いたくなる。
皆がなすすべなく倒されてしまった中で、ひとりビースト相手に大金星をあげてみせたのも、七罪らしい活躍でした。普通に考えても、七罪の精霊の能力って他の精霊の力ほぼ完コピできるって尋常でないよなあ。
そして、ついに八舞完成体の登場。そうかー、元々耶倶矢と夕弦って別々の双子の姉妹が精霊化したわけじゃなく、本当に一人の人間「風待八舞」が二人に分裂した形だったのか。精霊が元人間、という設定が確定してからも彼女たちについては詳しく触れてこなかったのでどうなのかな、と気になってはいたのですけど。
でも、ここで覚醒した風待八舞は本来の八舞さんとはまたちょっと違うんですね。耶倶矢と夕弦という人格がそれぞれ確固としたものになり、幾多の経験を経て確立された結果、その融合体として現れた八舞は、二人の性格的特徴を引き継いだ全く新しい八舞だったのである。
……なにげに、まだこれキャラ定まってないですよねw 耶倶矢と夕弦のキャラ混ぜた感じがマーブル模様みたいになってるし。ただ、今まで居なかった「お姉さまキャラ」(二亜はナチュラルに切り捨て)だっただけに、八舞日常編も見ていたかったけれど。
いやでも、この風待八舞って精霊たち全体で見てもこれ普通に登場してたら最強格だったんじゃなかろうか。
誘宵美九はブレることなく一貫してヘンタイ美九でした。うん、ホントブレなかったなこの娘!
というかこの娘の場合、可愛い元精霊の女の子たちと同居生活、という時点でハッピーエンディング、ハッピーウェディングだったのでその時点で彼女の物語は完成してしまってたわけか。海外進出とかも、こうなると余技だわな。

そして、異世界平行世界でも相変わらず大便利な狂三さん。この人、冷静に振り返っても世界救いまくってません? 滅びが確定した世界をどれだけひっくり返して救世してるんだか。なにげに、色っぽい大人の女性になった狂三さんが見られたので、それはそちらで大満足である。
狂三に関しては、まだ物語としてのやり残しが正直あると思うので、そちらは短編であるアンコールがまだ出るようなので、そちらで決着つけるんだろうか。

そして、サブタイトル通りのエンディング。うん、これってね最後まで崇宮澪の愛の物語だったな、と思うのですよね。世界に溶け込んだ彼女の意志、十香を産んだのもまた彼女だとするならば、このエンディングこそが母の愛だったんじゃないだろうか。
親友だった令音さんに思い馳せる琴里が、ようやく流せた涙が胸を熱くする。
この世界は、きっと彼女がずっと見守ってくれているのだろう。

そして、再び訪れる四月一〇日。五河士道と精霊たちの戦争の始まりの日は、ついに終戦の日と相成ったのである。

長い長いシリーズでした。完結、お疲れ様でした。そして、良い物語を、本当にありがとう。


シリーズ感想