【キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 7】 細音 啓/猫鍋蒼 富士見ファンタジア文庫

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帝国軍の襲撃により火の海に包まれた魔女たちの楽園―ネビュリス皇庁。皇宮のいたるところで、使徒聖と純血種という最強同士の戦闘が勃発する中、イスカたちもまたルゥ家の別荘にて、帝国軍に擬装したヒュドラ家から第三王女・シスベルを護るべく戦闘を続けていた。そして、新たな『魔女』が産声をあげ、帝国と皇庁が過去最悪の関係にいたったその夜。イスカとアリスは戦場で再び出会う。「わたしは帝国を滅ぼさなきゃいけない。それがキミであっても」―そして、始まる。好敵手でいられなくなったキミと僕の望まない決闘が。

ネビュリス王宮ではじまった使徒聖と純血種たちの頂上対決。なんだけどなー。うん、どの対決もはっきりとした決着つかないんですよね。どちらも自信と自負をたっぷりに余裕で見下ろすような強者感を醸し出しているのですが、使徒聖と純血種もその自信に遜色ない底知れない強さを実際に持っている、持っているのですけれど、それを発揮できていたかというと……。
別に出し惜しみしていたわけではないのですけれど、どちらも強者感を失わしめないためなのか、お互いにお前の能力など想定済みだ、想像の範囲内だ、効かぬわー、の応酬になってしまってる感じなんですよね。おかげで、なんかえらい中途半端に感じてしまったんですよね。結局、お互い大して通じてないじゃない、余裕めかしているのに押しきれていないじゃない、という風に見えてしまって。どちらも凄い、じゃなくてどちらも偉そうにしてるわりに……、と見えてしまって、なんとももやもやした気分に。そして、決着つかないまま水入り、という事になってしまってもやもやは晴れないまま。
折角の頂上対決だったにも関わらず、すっきり感が全然感じられなくて、ちとシュンとなってしまいました。マウント取り合ってるだけじゃあ自分は盛り上がらなかったなあ。

そしてイスカの方はというと、タリスマンと対決しているうちに結局イスベルを攫われてしまうことに。結局守りきれないのかー。どうしても謀略は防げず、黒幕の思惑通りにどんどん進んでいってしまう。イスベルの存在はそれを止めることが出来る切り札だったからこそ、彼女を守るということは敵のシナリオを潰すということで、そうなったらストーリー展開も予想もつかない方向に行くんではと期待していたのだけれど、結局当然のようにイスベル攫われてしまうというのは、フラストレーションたまりますねえ。
そして、それを救出に向かうイスカの前に立ちふさがるのが、母と姉を使徒聖に斬られて一杯一杯になってしまっているアリス。
妹が攫われてそれを助けに行こうとしているのをよりにもよって邪魔するアリス。うん、パニックになってるのはわかるし、八つ当たりの相手が必要だったのもわかるけれど、場面も状況も最悪である。アリスの激情を受け止めるのはイスカの役目だろうけど、妹が攫われてると他の誰でもない「イスカ」に告げられているにも関わらず、信じずに邪魔するというのは……。ほんとに、今はそんな場合じゃないだろうに。
丁度、この望まぬイスカとアリスの対決は、前世代のミラとサリンジャーの淡い交流が辿った誤解による破綻と同じ末路を辿るのか、というシチュエーションだったんでしょうけれど、さすがにこの状況でイスカ邪魔する、というのはどうなんだろう、という感じ方だったんですよねえ。今までイスカとの間に培ってきたものは、なんだったのかという。
結局誤解は解けるのですけれど、それもイスベルの従者が残してくれたメッセージでイスカの身の潔白が証明されたからであって、これイスカの事をアリスが信じることが出来たから、と言えるんだろうか、とちと首を傾げてしまいました。サリンジャーと同じ運命を辿らなかった、とはいえそれはイスカとアリスとの間に育まれた絆ゆえだったのです、と言えるのかなあ、と。
それ以前に、ほんとにイスベル助けに行くの話も聞かず聞いても信じず立ちふさがって邪魔したのが心証が悪すぎました、自分には。この娘、色んな意味で回りに影響されすぎのような気がします。果たして揺るぎない芯のようなものが、この娘にはちゃんとあるんだろうか。今のままだと、ただ強いというだけで、女王としてやっていけるのか甚だ不安だなあ。
あと、ミラとサリンジャーの過去は単純にサリンジャーが悪い。女王殺してないなら、自分じゃないとちゃんと言いなさい。黙るな。やってないことをやってないと告げるのは、言い訳じゃないんですよ。殺したのか、と問いかけて沈黙されたら、肯定だと思うの当然じゃないですか。
運命とか関係ない、言うべきことやるべきことをちゃんとしなかった、というだけなのにそれこそ運命なんて言うのは言い訳じゃないんだろうか。
色んな人の言動にシャンとしたものを感じられずに、もやもやしてしまうなあ。

だからこそ、イスカが話聞かないアリスにビシッと話を聞け、と怒った所はそれだよ、とうなずく所だったんですよね。その意味ではイスカはちゃんと言うべき事を言いやるべきことをしっかりとやっている、と言えるのか。イスベルの従者の信頼を得て伝言を託されてたのも、イスカが勝ち取っていたものだし、少なくともアリスと和解に漕ぎ着けたのは、イスカがやるべきことを間違えずにやり抜いていたからなのでしょう。
さすがは主人公。ジンくんもそうですけれど、彼とイスカが押さえる所押さえている分、ホッと安堵できるんだよなあ、うん。

シリーズ感想