【超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです! 10】 海空りく/さくらねこ GA文庫

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ネウロの召喚魔法により、突如戦場に現れた皇帝リンドヴルムと麾下の精鋭たち。
リルルを殺して封印を解こうとする彼らと超人高校生たちの激突は、圧倒的な皇帝の力と、その考えに共鳴した《超人医師》桂音の裏切りにより幕を閉じた。
《超人王》となった皇帝の下、平等な世界へと作り替えられていくフレアガルド帝国。
勝人や林檎、葵までが取り込まれた中《超人政治家》御子神司は不敵に言い放つ。
「リンドヴルム皇帝。私と勝負しろ」
エルム村から始まった超人高校生たちの戦い。果たしてその行き着く先は!?
異世界革命物語・最終章!

この局面でよりにもよって桂音が裏切るのかー。以前、ロボトミー手術めいたものを平気でやらかしていた事からも、彼女の倫理観というものは普通からかけ離れているのはわかっていたけれど、優先順位が他の人と違ったんだろうなあ。それだけ、医療キャンプでの虐殺事件が彼女の心に傷を負わせたのか。そりゃそうだよね、いくら超人だろうと当時の桂音はまだ十代前半から半ばだったのだから。
桂音に限らないけれど、超人高校生たちは高校生にも関わらずそれぞれが抱えている闇が深すぎる。成せる能力以上に、成してしまった罪や業が大きすぎ、体験してきた事柄が惨たらしいんですよね。
果たして、この異世界の旅で彼らの幾人が自身の中に抱えていた闇を払拭できたのか。
唯一、暁だけがそういう闇とは一線を画していたわけだけれど、だからこその純真さと真っ直ぐな勇気が仲間たちにとっても「光」だったんだろうなあ。
なので、個人的には桂音の闇を幾分なりとも払ってくれるきっかけになるのは暁に期待してたんですけどね。司にやらせてしまうと、どうしたって思想を叩き潰す形になってしまうからなあ。まあ、超人皇帝と桂音の理想は、最初から矛盾していた実現不可能な理想である事は自明だったのですから、司としては現実を突きつけるしかなかったのだろうけど。
そうだよねえ、愛もまた欲である。理想を欲する、という事自体が欲なのだと思えば桂音もまた大いなる欲に従って世界を革命しようとしたのだし、それを否定してしまえば何もはじまらなくなってしまう。
救いは、超人皇帝も桂音も決して権力を握り続ける建前としてではなく、本気で世界を救おうとしていたところでありましょうか。やってたことは殆どポル・ポトの原始共産制めいたディストピアだったわけですけれど、それが実現不可能だと証明されたあとで現実を認めなかったり無駄な足掻きをしなかったり、というあたりがリンドブルムの強さでもあったのでしょうね。
伊達に邪竜の意志を塗りつぶすだけの超合金超人メンタルの持ち主ではなかったわけだ。自分の生涯の夢が実現しようというときに、それを全否定されて果たして並の精神で耐えられるだろうか。彼は耐え、事実を飲み込み、間違いを認めるという勇気を示した。それこそが、彼の超人たる証明なのだろう。
この人なら、極端に走らなくてもそれこそ臨機応変に柔軟に、目の前の困難を克服してよりよい社会をリアルタイムで構築し更新していけそうなだけに、むしろこれからの方が楽しみなんだよなあ、帝国は。エルムに留学して司たちが残してきた新しい学問を吸収した若い官僚たちも彼のもとに集うことになるのだろうし。さっそく地球文化をノリノリで楽しんでる皇帝陛下見ると、ねえ。

終わってみると、いやわりと最初の方から司たちはその常人ならざる超人っぷりを見せつけながら、けっこう余裕とは程遠いギリギリの局面を渡ってきたわけですが、最後も力押しではなく思想の対決、それも自分の足で立ったエルムをはじめとする各国が自ら主導する形での未来を示す万博、というイベントで帝国は超人皇帝との最終決戦へと持ってきたのは、このシリーズらしい結末だったのではないでしょうか。まさに初期の宣言通り、彼らは世界を数百年進め、人民が近代を担う意識を育むことに成功したわけだ。有言実行である。
なんか、この世界と地球と行き来できるようになったみたいだけれど、ここまで文明が進んだなら地球から一方的に搾取されることもないだろうし、対等のプレイヤーとして付き合うことも出来るでしょうし。
ラブコメ方面ではリルルがメインという事で収まりましたけれど、林檎ちゃんともはっきりしていないだけに、さてどうなることやら。
個人的には暁ハーレムでもよかったんですけどねw