【超高度かわいい諜報戦 ~とっても奥手な黒姫さん~】 方波見咲/ろるあ MF文庫J

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"一見普通"の高校生による「だまし愛」ラブコメ、開幕!

「凡田君と、もっと仲良くなりたいの!」
高校生にして秘密諜報機関を指揮する天才少女、橘黒姫は初恋の真っ最中。好きな人のために組織の力を濫用し、超高度な諜報技術で接触を図る。
「……誰かに監視されている?」
それに勘づいたのは初恋相手・凡田純一。一見影の薄い、平凡な男子生徒の彼は、実はある秘密を持っていて……?
「私が……凡田君と友達になるの!?」
そんな中、組織の命令で凡田と接触することになった暗殺少女・芹沢明希星。友達の作り方なんて知らない彼女の行動は、とんでもない波乱を巻き起こす!
高校生の三角関係に裏社会の命運が揺るがされていく超本格学園スパイ・ラブコメ、開幕。

わははは、なんだこれなんだこれ、滅茶苦茶面白い!!
あらすじでは「だまし愛」とか銘打たれてますけれど、実際の所誰も関係者意図的に騙してはいないんですよね。勝手に誤解しているだけで。いや、これ正確に見ると誤解らしい誤解や勘違いもしていないんじゃないか?
とにかく、錯綜具合が神がかってるんですよね。表向きの立場と裏の本性、そのオモテウラが本来の意図と違った形で噛み合ってしまい、お互い誤解したまま進行してしまうラブコメ、というのはこれまでも幾つか見たことがありましたし、それもお互いの言動が正確には伝わってないのに噛み合っちゃってる、という形態が大変面白かったのですけれど、本作はそういう凸と凹がハマったような展開からさらにこねくり回して捻られてるんですよね。
さながらルービックキューブだろうか。てんでバラバラの色のパネルが、ガチャガチャと回していたら綺麗に色が揃って完成してしまったような、なんでそうなるの!? と思わず唖然としてしまうような芸術的なまでの本来誰も意図していない形での無茶苦茶な錯綜からの綺麗な噛み合い方だったわけですよ。

メインヒロインな黒姫ちゃん、ラブコメするつもりで諜報戦を仕掛けてたら、対象である凡田が本物の裏側で指名手配されている重要人物だったがために、黒姫ちゃんも誰も知らない間に本格的な諜報戦がはじまっていた!
でも、その諜報戦を展開するために用いられた要員である明希星が凡田に近づく選んだ手段がラブコメ! 
なので傍目にはどう見ても甘酸っぱいラブコメがはじまってしまい、最初から一貫してラブコメのつもりな黒姫ちゃんは目の前で繰り広げられるラブコメに大パニック(明希星が自分の組織の手勢と知らないので!)。
しかし凡田も明希星も相手の正体も不明なまま、それぞれ必死に片や正体を隠すため、片や任務のために諜報戦に勤しんでいるだけ。
だったのだけれど、凡田も明希星も相手をエージェントではなく、ただの素人と誤解してしまったがために、ラブコメに見える諜報戦を仕掛けているようで実際にラブコメみたいになってしまう。
が、ここで凡田の正体が黒姫にも明希星にもバレてしまい、改めて本格的な諜報戦に。なのだけれど、いつの間にか明希星の感情的にもラブコメになっていて、初恋を切り捨て組織の長として動き出した黒姫も、土壇場で明希星と正対することで恋模様が再燃し、と。
うん、時系列的に書いてても本気のラブコメと本格的な諜報戦がパタパタとそのキャラの目線から目まぐるしくひっくり返って止まらないんですよね。
というか、これは本人がエージェントとして頑張っている時にはラブコメになっていて、ラブコメ気分で動いている時には諜報戦になっているというべきか、或いは場合によっては完全に同時進行になっていたり、エージェントとして鍛えられた能力をフルに発揮したら、その御蔭でシリアスな展開だったのがそれが決め手となって決定的にラブコメ展開になってしまったり、と見事なくらい統制されたシッチャカメッチャカになっている。
とにかく構成がめちゃくちゃ凄えや。なんだこれ。

肝心のエージェントたちの仕事っぷりが、なんちゃってとは程遠い結構ガチめの描写が多いのも特徴で、彼らの裏の社会の人間としての心構えとか底冷えするような在り方とか、きっちりとした仕事っぷりなどが際立っているのだけれど、その御蔭でギャップとして彼らの仕事がそのままラブコメに直結してしまうのがやたら笑えてしまうんですよね。明希星も、スリーパーの殺し屋として機械じみた在り方をしていたのに、畑違いの情報収集に駆り出されてしまったために、本人は真剣なのに傍目には一匹狼だったぼっちな女性が恋をして、不器用に凡田くんにアプローチしてなんだかんだとうまく言ってカップルになりましたー、というふうにしか見えないのが微笑ましいのなんの。
本人たちは全くそんなつもりなかったのに。
でも、回り回って最終的には少なくとも明希星の方は気持ち的にかなり「傍目」通りに寄ってしまうのは、一周回って……ってやつになるんだよなあ。
黒姫ちゃんの、一人外野で大騒ぎしながら回りを振り回しているのか、自分で自分に振り回されてるのかわからないはしゃぎっぷりは、ほんとポンコツ可愛くて、いやそれにしてもまったく凡田くんに直接関われない奥手っぷりはどうしようもなさすぎるんですけど、でもかわいい、うん。
側近の女性の、命令されれば黒姫さまのために自分の命も当たり前に使い捨てる、というハガネのような覚悟と敬愛を備えながら、それはそれとしてこのご主人、くそ面倒くせえ。いい加減にせえよ!? とうんざりしてる姿がなんとも面白すぎて、いやはやw
いやでも、明希星の迷走しまくりながらも、使い捨ての駒から傍目通りの初々しい恋する少女にすっ転んでいく様子なんかも、なんかたまらない微笑ましさがあってねえ。

うん、なんかもうまとまらなくて困ってしまいましたが、この誰の思惑通りにもうまく行かないのに、変にうまく噛み合いまくってる構成の絶妙さといい、キャラクターたちの有能さとポンコツさが並列起動している可愛らしさといい、実に素晴らしいラブコメであり物語でありました。
いやもう、ほんと面白かった、最高!

方波見咲作品感想