【賭博師は祈らない 5】 周藤 蓮/ニリツ 電撃文庫

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賭博師と奴隷の少女、二人に訪れる結末は。

ロンドンの裏社会を牛耳るジョナサンと対立し、一度はすべてを失ったラザルス。だが賭博師としての矜持を奪われ、地の底を這いつくばったその先で、彼は自らが進むべき新たな境地へと辿り着く。
再起したラザルスはフランセスにも勝利し、ジョナサンとの全面対決を掲げた。かつて帝都にいた友人たちが残した、ちっぽけな約束を守るためだけに。
一方、ラザルスの無事に安堵したリーラだったが、彼女は故郷へ帰る為の乗船券を渡されたことに戸惑い、自分が主人に対して抱いていた想いに気付かされる。

――『私は、ご主人さまが好きです』

そしてラザルスはリーラとの関係にひとつの答えを出すことに。二人の物語に訪れる結末は、果たして。

嫁さんになってしまったフランセスを連れて帰って、リーラと一揉めあるかと思ったのだけれど、フランセスもリーラも思ってた以上に大人だった。というか、フランセスがずっと部屋に引きこもって寝倒してたのって、変に自分の存在がリーラの居場所を奪わないようにという配慮ですよね、あれって。かと言って出ていかずにラザルスの家に居続けるというのもラザルスへの配慮だろうし、何気に気を遣ってるんだよなあ、フランセス。もっと色んな方面にマウント取るかと思ったんだけれど、そう言えばそんなグイグイ自分押し出すタイプじゃなかったよなあ。
リーラはリーラで平素と同じ対応で、ホントにできた娘さんである。

そんな女性陣を放っておいて、ラザルスはというとボウ・ストリート・ランナーズと協力して、ジョナサン打倒に駆けまわる日々。その動機が、かつて罪人として街を追放され豪州へと旅立った友人夫婦との約束のため、というのだから……これってロマンチストというのだろうか。
師の言葉に従って厭世的というほどの醒めた生き方をしてきたラザルスが、地べたを這いつくばった先で見つけた自分に正直な新しい生き方は、なんというか裏の世界で生きる賭博師としては望外なほどの、ピュアな生き様なんですよね。約束を守るため、とか信念に殉死しようとしている女を死なせないため、とかあんな人と関わる事自体を忌避し、他人のことを考えること事態膿んでいた男の生きざまとは思えない、光のような在り方なのだ。
多分、それがラザルスにとって「人」になるという事だったのだろう。薄汚れ俯き未来を諦めるゴミクズのような存在だった自分が、真っ当な人になるというのは、そういう眩しいほどの在り方だったのかもしれない。
そうしないと、リーラと対等になれなかったのだ。彼女を人として愛するのなら、自らもまた人にならなければならない。
まあそんなクソ難しいことを具体的に考えていたわけではないのだろうけれど、リーラに恥ずかしくないように、という意識は常にあったはずだ。
だけれどそれは、リーラを愛玩するというくびきから解き放たなくてはならない、という意味でもあったんだなあ。回りの優しい人達の反応から随分と忘れてしまっていたけれど、リーラの立場は異民族の奴隷という社会に公然と差別される対象。ラザルスとリーラの関係は、正しく契約に基づいて結ばれた奴隷と主人という主従関係。どれだけ当人同士が愛し合おうとも、はじまりから二人の関係はいびつなものでしかなかったのである。だからこそ、このままでは二人の関係に瑕疵が生まれる。いずれ、どこかでひびが入る。当人同士がどれだけ固く結ばれていても、社会はそれを許さない。未来は苛まれるだろう。
二人共、このまま一緒にここに居たい、という願いを胸に宿しながら、しかしそれは叶わぬ願いだったのだ。
本当に対等になるのなら。愛玩ではなく、人と人として愛し合うのなら、一度関係を精算しなくてはならない。そして、ラザルスもリーラも「人」に戻らなくてはならない。そうやってはじめて、愛玩の関係ではなく、相手を一人の人として尊重し愛し合う関係になれるのだから。
それでも離れがたい気持ちは強く強くあっただろう。それを手放す勇気を示した二人は、敬服に値する。本当に相手が大事だからこそ、今は一度離れるのだ。それが、永久の別れになろうとも。
もっともその行く先は、まあラザルス曰く、賭け事にもならないのだそうだけれど。なにそれ、惚気け?

シリーズ感想