【ウィッチクラフトアカデミア 2.この世の果てを目指す魔女】 逢空万太/bun150 LINE文庫エッジ

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グリゼルダとのレースを経て学院内で一目置かれるようになったティノだったが、あの時のように上手く飛ぶことが出来ていなかった。
悩む中で、ティノはレッタが毎夜こっそりと学院を抜け出し、命を賭けて運河の直上を高速で飛ぶ水上飛箒に臨んでいることを知る。
その飛箒を見て心が躍り、一緒に水上を飛びたいと思うティノだったが、レッタが求めるのは、最高速の世界だけで……。
それでも諦めることなく、ティノは無理矢理レッタとの勝負に挑む!
取り巻く少女たちとの関係も加速する、ウィッチレースバトル第二弾!!

ティノくんがお姉様方に弄り倒される際に見せる反応がかわいくてかわいくて、もはや自分もお姉ちゃんになりたい! 不思議と、ティノくんになってイジられたいとは思わないのはなぜだろう。ベタベタひっつかれて、羨ましいスキンシップ受けているのだけれど。それにもまして、ティノくんが可愛すぎるのが悪いのだ。このグループの場合、ティノくんだけが愛でられるのではなく、マルタちゃん様が同じようにイジられ役なので、偏重にならずうまいこと分散されているのがいいのだろうけれど。
でもティノくん、純真でひたむきでお姉様方にいじられるとアワアワと顔を真っ赤にして慌ててばかり、という初々しい子なのだけれどでも大人しいとか引っ込み思案とはかけ離れた積極的な子なんですよね。
孤高の氷の女王だったグリゼルダに空気読まずにグイグイと接触していき絡み倒して、ついにレースまで仕掛けたようにかなりズケズケと相手の領域に踏み込んでいく子でもある。
そもそも、女だけの領域だった魔女の箒レースという舞台に男の子ながら気にせず飛び込んできたように、いっそ図々しいくらいの図太さがある。
今回も、直線レースに命賭けているレッタの領域に、この子は遠慮なく踏み込んでいく。一度は敢然と拒絶されたのにも関わらず、だ。
思えばこの物語の登場人物、ヒロインたちはティノくんにものすごく好意的である一方で、それぞれが魔女になるという目標を持つに至った根源については、そこに誰も踏み込むことも触れることも拒否している。箒レースそのものを憎み根絶しようとしていたグリゼルダも、スピードの向こう側を覗こうとしているレッタも、出自を誤魔化しているマルタちゃん様も、そして何もかもを曖昧に誤魔化しているウルスラにしても。全員だ。
きっと遠慮していたら、彼女たちの「本当」には絶対に届かないのだろう。とは言え、ティノくんが彼女たちが一人で大切に抱えている部分にズケズケと踏み込んでいくのは決して彼女たちのためではない。
ティノくんが、彼女たちの「本当」と一緒に飛びたい。彼女たちが見ている「領域」を自分も見てみたい、感じてみたい、という自分勝手なまでの欲求に基づくものだ。その行いはいっそ傲慢、とすら言って良いのかも知れない。
しかし一方で、ティノくんの飛行は決して一緒に飛ぶ人が大切に自分だけで抱えているものを奪い去ってしまうものではない。横取りして持っていってしまうものではない。
一緒に飛ぶことで、ティノくんは彼女たちが一人で飛んでいるのでは決して見られなかった領域へと連れて行く。お互いを高め合って、引っ張り合って、見たことのなかった景色へと届かせてくれるのだ。だから、彼女たちはティノくんの飛行に魅せられる。
それはきっと、光で、希望なのだ。

でも、そんなティノくんを最初から導き抱きしめ応援し続けているウルスラが、一番そんなティノくんの特性に反するような闇を垣間見せているのは、不気味であり得体の知れなさをますます増幅點せてるんですよね。
ティノくんが一番なついているのはそのウルスラなのですけれど、マルタちゃん様もグリゼルダもウルスラが一番何を考えているかわからなくて不気味で怖い、と心から感じているのがなんとも先の展開めがけて「溜め」ている感あるなあ。

しかし、グリゼルダはその素っ気なさは変わらないものの、冷たく固い態度のまますごく勇気出してティノくんと関わろうとしてきてくれるの、なんとまあ可愛らしいことで。まさに氷系ツンデレの雪解けである。ポンポンと噴火しながらツンデレしている火山系ツンデレなマルタちゃん様との対比的にもよい感じで。

さて、こうなると次の当番回はそのマルタちゃん様か。彼女に関しては今回、その出自の秘密らしいものがチラリと語られていたし、バックグラウンドも見えてきたのでキャラ的にも一番あたりこそきついものの一番優しいだろう好ましい娘でもあるので楽しみ楽しみ。

逢空万太作品感想