【ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインX ―ファイブ・オーディールズ―】 時雨沢 恵一/黒星 紅白 電撃文庫

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熾烈極まる第四回スクワッド・ジャムの死闘から約1週間後。『ファイブ・オーディールズ』、すなわち“5つの試練”の意味を持つ謎のクエストに、レンたちLPFMはボス率いるSHINCとの合同チームで挑む!
「今回のクエストは、スクワッド・ジャムとは違って対人戦闘はナシ。フィールドに出る“エネミー”を倒しクリアを目指す。そして一番重要なのは十二時ジャスト一斉スタートの“競争型”ってこと」
 第一のフィールドに転送されエネミーを警戒するレンたちが目にしたのは――「こんにちは、皆さん」。言葉を喋るかわいい犬で……!?

あれ、神崎エルザが語った自分の過去の話で本当なのって、エムさんに最後に告げた「全然本当じゃないかもしれないよ?」だけなんじゃないの?
と、思わせてやっぱり豪志くんにだけは本当の自分の過去を語っていた、というのならそれはそれで綺麗なお話なんだけど、一連のお話はちょっと出来すぎなような気もするし、でもエルザの過去としてはぴったりなような気もするし、でもエルザの性格からして実は女子高生軍団に語っていた作り話の方が実は本当だったりしてもおかしくないし、ああもうこのあたりの迷彩のかけかたはさすがは時雨沢さん、と言ったところですか。

表紙はフカとワンコ。ワンコの絵がなんともリアルでなんだこの犬、と思ったら今回のゲームの案内人、案内犬? だったのですけれど、フカこと篠原 美優のワンコ愛が深すぎて、フカってばひたすらワンコ愛でるばかりだったじゃあないか。でも、フカ次郎の名前の由来って飼い犬からだったのね。この話って前にも出てたっけか。覚えてはいないのだけれど、彼女の愛犬への思いの深さは今更ながら伝わってくる。
その愛情の深さを知っているレンも加えた愛犬とのエピソードは、改めてレンとフカが昔からの家族ぐるみの親友だったんだなあ、というのを実感させてくれる話でした。
住む場所離れてしまっても、今はこうしてゲームで一緒に遊べて、繋がりはなくならないというのはイイ環境ですよねえ。まあ、何かあったらというかレンのデートの顛末を覗き見するためだけに北海道からすっ飛んでくるんだから、この二人に距離の隔たりというのはあんまり関係ないのかもしれないけれど。

というわけで、今回は対人戦なしのゲームに、女子高生アマゾネスチームにシャーリーとクラレンスのコンビを加えたオールレディース(プラスM)チームで参戦。いくらチャンスあればピトさんを暗殺仕放題権をもらったとはいえ、誘われたら参加してくれるようになったシャーリーはだいぶ打ち解けましたよね。ピトは除く、だけど。
そしてアマゾネス軍団は、今回はなんかロールプレイがだいぶ吹っ飛んでたぞ? 素の素直でひたむきなスポーツ女子高生集団っぽさが前に出てしまっていた気がする。いや、出てしまっていた、と言っても悪いわけじゃないんだけど。でも、文章では女子高生っぽくてもビジュアルはいつもどおりのイカツいアマゾネス軍団のはずなので、漫画とか映像で見たら若干異様な感じになってしまうかもしれないが。それとも、ピトを首領と仰ぐ規律正しいアマゾネス軍団、みたいに見えるんだろうか。

ともあれ、今回は5つの試練、というタイトル通り全五面の様々なシチュエーションに制限や条件を付与されたゲームをクリアしていく話になっていて、頭をひねる場面も対人戦闘みたいにお互いを撃ち倒すためにバトル脳をフル回転させて銃撃戦するような展開ではなく、用意されたギミックを文字通りゲームとしてクリアしていく話だったので、いつもの調子で見ているとちと熱量は足りないかもしれない。相手がいてこそ、という場面もありますからねえ。
でも、終盤になると対戦相手が、まあいつもの面々ですけど、現れて対抗戦になっていくんですけどね。
ただ最後のワンコの扱いについては、もっとシチュエーションを用意すればよかったのになあ、と思わないでもなかった。唐突感があって、そうしなければならないストーリー性がなかったですもんね。逆に言うと、そうしないストーリー性もなかったので躊躇しない人たちはあっさりと引き金を引いてしまったのかも知れませんけど、ゲームとしてもそこでやるかやらないかに煩悶を催させるのに、単に動物への愛情とか状況に違和感を感じるか、という感情とかメタ的な勘に拠るものじゃなくてもっと前フリがあったらよかったのになあ、と思ったり。今回のゲーム企画したの小説家先生のはずなんだがなあw

そして、あのラストのワンコ……スー三郎のフカへの別れの言葉はなんだったんでしょうね。どうして、犬の天国なんて言葉が出てきたのか。別に彼とフカの愛犬の繋がりなんてものは一切なかったはずなんだけれど、ちょっと意味深なお別れがひとひらの味わいを胸に残してくれるラストシーンでした。

シリーズ感想