【痴漢されそうになっているS級美少女を助けたら隣の席の幼馴染だった】 ケンノジ/フライ GA文庫

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「諒くん、正義の味方みたい」
高校二年生の高森諒は通学途中、満員電車で困っている幼馴染の伏見姫奈を助けることに。そんな彼女は学校で誰もが認めるS級美少女。まるで正反対の存在である姫奈とは、中学校から高校まで会話がなかった諒だったが、この件をきっかけになぜだか彼女がアピールしてくるように?積極的に行動を移す姫奈、それに気づかない諒。「小説家になろう」の人気作―歯がゆくてもどかしい、ため息が漏れるほど甘い、幼馴染とのすれ違いラブコメディ。本作は幼馴染との恋模様をストレス展開ゼロでお届けする物語です。

ちょっと待って? なんで幼馴染だと知れ渡ったら特定の男の子と親密にしていたことのない姫奈とあれだけいつも一緒に居ても気にされなくなるの!?
そりゃ、高校入った直後からいつも一緒にいるなら、セットで認識されるかもしれないけれど、今までずっと疎遠でろくに接触してこなかったのが、突然一緒にいるようになったんですよ? それが、元々幼馴染だったとわかっただけでなんで警戒されなくなるんだ? 普通、付き合い出したとしか見えないじゃん。この世界では幼馴染って絶対に付き合わない、恋人関係に発展しない存在だとでも思われてるんだろうか。幼馴染は負けヒロインというのが常識になってる世界なんだろうか。
なんだか納得いかないぞ!?

それはそれとして、中学からずっと疎遠で関係が途切れてしまっていた幼馴染の姫奈を、通学中の満員電車の中で痴漢から助けたことで再び話しをするようになった高森諒。
……ってかこれ、また話をするようになったどころじゃないですよね? しばらく疎遠になっていた間の時間がすっ飛んでしまったかのように、直後から物理的にも精神的にも距離感ゼロでベタベタと引っ付くように諒につきまとう、付きまとうというと印象悪いかも知れないけど何かとあれば一緒にいるようになる姫奈。
普段クラスメイトに見せている余所行きの顔を脱ぎ捨てて、ちょっと幼いくらいの気を許しきった素顔で接してくる、どころか登下校も他の人の誘いを断り一緒にしたがり、家にまでついてくる。どころか言葉に出して好き!と囁いてくる。
はいもうこれどこからどう見ても、好意満天ですよ。スキスキダイスキもう辛抱たまらん状態ですやん。これはもう勘違いのしようも誤解のしようもどこにも見当たらないのですけれど……。うん、これを気が付かないというのはありえないですね。
でも、逆にですよ? 小学校以来久々にまともに喋るようになった途端にここまであからさまにグイグイ来られたら、逆にちょっとのけぞってしまうんじゃないでしょうか。「え? なにこれ? どういうこと?」と好意があからさますぎて、警戒してそのままの意味で受け取るのを躊躇してしまう、腰を引いて様子を見てしまう、というのはこれあり得るんじゃないでしょうか。と、思ってしまうくらいにはいきなり突然に好感度がカンスト状態なんですよね。
とは言え、見ず知らずの美少女からいきなり一目惚れしましたとばかりに付きまとわれるのと違って、相手は幼馴染。ちょっと間があいているとはいえ、その為人は十分わかっている相手なのですからドン引きして距離を置いてしまったり避けたり邪険にしたり、という警戒線を張るような行為に走ってしまわなかったのは、幼馴染ゆえの距離感なのかもしれません。
この姫ちゃん、美人で文武両道であるがゆえに高嶺の花となってしまって、どうも他の人達と距離感があるんですよね。彼女とお近づきになろうとしている人たちは男女問わず、みんな姫奈にレッテルをはってその恩恵に与ろうとしたり、利用しようとしたりと彼女本人をちゃんと見るような人はおらず、どうもちゃんとした友達らしい友達が見当たらないのである。その対外用の品行方正な外面を剥がして接することの出来る人がいない。彼女自身、周りからの認識や扱いを自分でコントロールできるほど器用でもないようで、クラスの中心にいるようでどこか孤立していた、と言えるのかも知れません。
そんな中で諒と再び仲良くなれたのは彼女にとっても福音であり、姫奈が必要以上にベタベタと彼に接するのは彼への好意だけではなかったのではないでしょうか。鳥越さんと趣味通じて仲良くなった時のあの気の許し方を見てるとねえ。
とまあそんな結構不器用な幼馴染のことを諒くんは結構よく見ていたみたいで、なんだかんだと影に日向にフォローするわけですよ。時には声を張り上げて傷つく彼女を守ろうとすらしてくれたわけで。
うんまあ、男を見る目は大いにあった、という事なのでしょう。実際、結構気配りも上手だしカッコいいじゃないですかー。
姫奈の不器用さはどうにも世渡りベタにも通じていて、おまけにファッションセンスも欠けてたり、ポンコツ要素も散見されるだけに放っておくと危なっかしいタイプなんですよね。その意味でも、この娘にとってこの幼馴染は必要不可欠な存在なのではないでしょうか。
ラストあたりではもう諒の警戒心というか、様子見も解けてきていて、好意をそのまま好意として受け取ってそれに対して素直に自分も好きだなあ、という感情を抱き出しているわけですし、妹ちゃんも再び姫奈と打ち解けて、もう障害らしい障害もなくなったじゃないの。
と、思ったらラストで爆弾の存在発覚である。まあ爆弾と言ってももう不発弾かもしれないですけど。果たして信管が抜いてあるのかまだあるのか。

ケンノジ作品感想