【城なし城主の英雄譚 2.彼女の愛が止まらない!】 阿樹翔/八葉 GA文庫

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「レオンくんの希望、守りと仕掛けの対処が得意で……えっちな女の子だったわよね? 雇ってくれる?」

中型古城に挑み人員の不足を感じたレオンは、一人の傭兵少女を雇う。
彼女――アリスティアは、危うい言動と、露出度高めな真紅の衣装で誘惑を振りまく竜人の女の子。
しかしその実力は本物で、レオンとすぐに完璧な連携をとりはじめる。
心強い彼女の加入に、中型古城の攻略も目前と息巻くレオンだが――。

「アタシねぇ、彼女が欲しがってるモノを奪うの、大好きなのよ」

実はアリスティアは、とある少女への歪んだ執着から、レオンに接触してきており……!?
剣と魔法の英雄譚第二弾!
前回攻城戦で盛大に敵対したヴェルナーとも遺恨も全く無く、仲良くやれるのかー。前の巻では主人公のレオンの事を好人物と評したけれど、こうしてみると本作に出てくるキャラクターって男女問わず大方好人物なんですよねえ。性格も真っ当で人格的にも優れていて。
鬼人の桜子なんかは戦闘狂のきらいはありますけれど、基本的にちゃんと話は通じるしむしろ善人の傾向があるいい子なので、自分の性癖で迷惑かけた分には申し訳無さを隠さないくらいにはマトモなんですよね。
その意味では、実のところ今回のキープレイヤーであるアリスティアも、あれでマトモ、というのは変かもしれませんけれど非常に素直で自分の在り方にまっすぐ、とも言えるんですよね。
好きな人ほど虐めたい、苦しめたいと感じてしまう性癖の持ち主で、その在り方は歪んでいるとも言えるのですけれど、それは生来生まれ持った精神の在り方であって拗らせているわけじゃないのです。
オリヴィアが幼少の頃に彼女と仲良くなって、今も彼女を友達だと想っているというのも決してアリスティアに悪意があったわけじゃないというのが伝わっていたからなのかもしれません。アリスはアリスなりに思いっきり好意をむき出しにして、彼女なりの価値観でぶつけていたわけですからね。普通はそれに耐えられるものではないのだけれど、オリヴィアは素が図抜けていたからそれを全部そのまま好意として受け止められてしまったんだなあ、と。
しかし、その好意の攻撃がオリヴィアだけじゃなく周りの人たちにまで及ぶようになってしまっては、オリヴィアとしてもそのまま受け止められてはいられなくなってしまう。
終わってみれば、これはお互いをちゃんと友人と想いあっている二人が、これからも友だちでいるための妥協点をすり合わせるために必要な儀式だったのかもしれません。アリスティアも自分の在り方をこれっぽっちも悪いものだと考えてはいないのだけれど、それを絶対のものとして押し付けようとまでは思っていなかった時点で、悪い子じゃないんですよホントに。自分以外の人たちの真っ当な価値観を、理解も出来ないしまったくわからない伝わらないのだけれど、それが自分以外の人たちにとっては大切で譲れないものであることもわかっている。簡単に自分を引っ込めて自分の価値観を間違ったものなんて区分に貶めるつもりなんてサラサラないけれど、友達でいたいから尊重はするよ、というラインを見極めるためであり、理解できないオリヴィアたちの価値観を理解したいという気持ちの現れでもあったんでしょうね。オリヴィアたちが好きすぎて、アリスのやり方で突貫してしまった、というのもあるのでしょうけれど。それに、それほど期待もしていなかったかもしれない。一方的で終わる覚悟はしていたはず。それをオリヴィアは、今になってもちゃんと受け止めて、さらに自分を理解すらもしてくれようとしてくれた。理解する努力をすると言ってくれた。また友達になりたいと言ってくれた。こうして、歩み寄れる関係ってのはいいですよねえ。これもまた友情だ。

さて、竜人の問題児のアリスティアはこんな感じでしたけれど、最初の登場時に盛大に問題児として現れたリシアは、というともうこの子トラブルメーカーの気配欠片も残ってないんじゃないだろうか。荒ぶっていたのは一巻の最初の方だけで、中盤からもう聡い様子を見せていましたけれどこの二巻ではさらに器をデカくしたようで、トラブルメーカーどころか人間関係ゴタゴタしかけた即席チームで、孤立しかけたミネットをすごくなめらかに彼女が負担に思わない形でフォローして、トラブルなりかけた面々との間を取り持ってみせたり、オリヴィアにも色々と助言してたりと何気に人間関係の潤滑油になるような振る舞いを見せていて、非常に頼りがいのある姿となってるんですよね。
一方でヒロインとしても明るく素直で結構家庭的だったり家事の得意さを見せつけリ、お洒落も普通にこなしたり、とデートでは本当に普通にデートしていて、普通の女の子らしい振る舞いは胴のいったものですらありました。なにこの可愛げしかない生き物わ。
戦闘面でもひたむきに努力重ねて新しい大技を習得していたり、公私ともに隙なくスキルアップしてるんですよね。これもう正妻の貫禄すごいんじゃないだろうか。レオンのパートナーとして揺るぎない威風を見せている気すらします。
ほんと、レオンに対するものだけじゃなくて、どんな相手にも人当たり良くて何だかんだと誰とでも仲良くなれてて、信頼もされてて、とどこに問題児だった影が残ってるんだろうというくらい。

レオンがどうして城主として登録できないのか、という謎にもがっつり踏み込んできましたし、何よりメイン・サブ問わず出てくる登場人物みんなキャラがよく立っていて、面白かった。
これは先々も期待大のシリーズです。






世間の価値観とのギャップを抱えている。