【結婚が前提のラブコメ】 栗ノ原 草介/吉田ばな  ガガガ文庫

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“結婚できない人を結婚させる仲人”、白城縁太郎は今日も婚活女子のサポートに奔走している。言動がアレなエロ漫画家、牡丹(25♀)。ひたすら玉の輿を狙う元令嬢、カレン(年齢非公表♀)。究極のダメンズほいほい保育士、まひる(30♀)。そして、とある婚活パーティで出会った結衣(26♀)は、なにやらワケありの様子で…?結婚するには難アリな彼女たちと過ごす、第二の青春。そこには、笑いと涙、葛藤と希望が満ちていて―。ぜったい結婚したい系婚活ラブコメ、ここに開宴!

結婚相談所ってこんなんなの!?
婚活ってやったことないですし、結婚相談所というものがどういう活動をしているのか本当に全くと言っていいほど知らないので、実際の事情とか実態はわからないのでこの縁太郎が母親から引き継いだ個人経営の結婚相談所のスタイルがどれほど現実の結婚相談所を踏襲しているのかは定かではないのですが、少なくとも彼の相談所のやり方には呆気に取られてしまいました。
いやこれ、お金をもらってサービスを提供する顧客との関係としては馴れ馴れしすぎるんじゃないだろうか。登録した会員である女性たちとは下の名前で呼び合うわ、婚活関係なしに会員たちは事務所に入り浸って遊びに来たりご飯食べに来たりと、仕事上の付き合いではなくプライベートでの付き合いなんですよね、これ。
それだけ近しい間柄になり、会員の為人を把握して仲人として相応しい相手を見繕うため、と言えばそれらしいですけど、あまりにも顧客との距離感が「公」ではなく「私」によりすぎていてずっと違和感がまとわりついている感じだったんですよね。
結婚相手を探している女性に対して、仲人が一番近しく親密な異性となり最大の理解者となり、というのは正直どうなんだろう。紹介された男性だって、その女性が仲人とやたらと仲良くしてたり以心伝心でコンタクトしてたりしたら、なにこれとか思っちゃわないのかな。
なんやかんやと夜中にお酒が入った結衣の部屋に上がり込んでしまうわ、不可抗力とは言え部屋に泊まってしまうとか、彼の仕事の内容を考えたらあまりにも甘い考えで行動していて、不誠実であるように見えるのです。こんな仕事の仕方をしている人はちょっと信用しがたいなあ。
本人はいたく真面目で真剣な姿勢で会員にも向き合っているだけに、彼個人の人格の誠実さと仕事のやり方の締りのなさがどうにもチグハグ、というのも違和感の根拠の一つなのだと思います。

またヒロインである結衣をはじめとした会員たちが、どうして結婚したいのか。その結婚願望の理由についてはそれぞれ語られてはいるのですけれど、何というかよくある話の類ばかりでキャラを掘り下げて掘り下げてその奥底から覗けてくる剥き出しのナニカ、という迫真性のある理由は特に見当たらないんですよね。結婚したいという願望にそこまで根源的な理由など必要ない、というのならまあそうなのかもしれませんけど。
メインとなる結衣もまた、親の敷いたレールの上から逸脱したい、自分の心の奥底から湧き上がる願望に従いたい、自分の気持ちを見つけたい、という話は彼女が元々登録していた大手結婚相談所からの強引な引き抜き話に絡んで、彼女自身気がついていなかった本音という形で引き出されてくるのですけれど……うん、まだそこに熱量が、結婚というものへの強い渇望みたいなものが感じられたかというと。表層だけ、なんですよねえ。
ラブコメというほど、ラブなコメディもしていませんでしたし、というか仕事上のそれとは思えないやたら個人的な関係を築いておきながら、結衣と縁太郎の間にそれほど恋愛の絡んだ強い感情の交錯はなかったりするんですよね。結衣は自分にまとわりつく柵に苦しみ、縁太郎は本人の望まない婚活なんぞさせたくない、というあたりに終止していて、二人が向かいあってお互いに対して感情をぶつけ合う、相手に対する感情を強く発する、という所がまだ見当たらないので、コメディしていない以前にラブもしていなかった気がする。
ちょっとこのままだと唆られるものはないかなあ。