【現実主義勇者の王国再建記 Ⅻ】 どぜう丸/ 冬ゆき オーバーラップ文庫

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傭兵国家ゼムから『大武術大会』への招待状を受け取ったソーマ。その大会は優勝者に「願いを叶える権利」が与えられるゼムの一大イベントであった。ソーマは国交が途絶えたゼムの招待に応じない構えであったが、元王国陸軍大将ゲオルグの娘が大会に参加すると報告が上がり!?
かつて王国の内乱で反逆者として処分されたゲオルグ。その娘が優勝して復讐を願えばゼムを率いて王国に戦争を仕掛ける可能性もある。彼女の真意を探るべくソーマはゼムへ赴くが、彼女に接触したゼム王もその思惑をはかりかねており……!? 革新的な異世界内政ファンタジー、第12巻!

いや、すっごい今更なんだけどまるっきりライオンの顔してる獣人が虎のマスク被って隠密やってるって見た目シュールですよね。カラー口絵にゲオルグの思いっきりライオンな顔が描かれてる所に、作中に黒い虎のマスクしたカゲトラが挿絵で描かれてたもんだから、ちょっと吹いてしまった。しかも、ライオン顔だと結構鬣のボリュームがすごいだけに、普段どうやって虎マスクの中にあの鬣収納してるんだろうと疑問に思ってしまって……。あの虎マスクかなりぴっちりした作りですよ? 見た目からして。もしかして鬣切っちゃったの? 散髪してスッキリしちゃってるの?
ともあれ、以前傭兵国家ゼムからの使者としてチラリと登場したカーマイン公ゲオルグの娘ミオ。内乱前にゲオルグから縁を絶たれて他国へと流れていたわけだけれど、この度ゼムの所属として出てきたわけです。叛乱者の娘という立場上、父親を討ったソーマと現在のフリードニア王国に対して思う所ありやなきや。いずれにしても、彼女を鍵として傭兵国家ゼムとの国家間の駆け引きが行われるかと思ったのですが……。あくまで、ミオ個人の考えによるフリードニアへの接触だったのか。
とは言え、ゼムの国家システムが武術大会の優勝者が国王と戦って勝ったらそいつ国王な、という強者勝者絶対主義、みたいな所があるので、ミオが優勝して国を手にしてしまえばそのままゼムとフリードニアの国家間問題へと発展しかねない状況だったわけです。
ゲオルグの反乱が、言わば国内の不満分子不穏分子を一手に集めて処分するためのゲオルグが仕掛けた策略だった事は国の中枢にいる人間はみな知っている事ですけれど、世間では未だ旧世代の叛乱者という扱いのままだったんですよね。彼の名誉回復についてはソーマも時期を見計らっていた、と言いますけれど、ミオに代表されるように関係者も決して少なくない以上、もうちょっと早く出来ていても良かったんじゃないでしょうか、と思わないでもない。現に、こうしてミオが行動に出ちゃってましたしね。彼女に野心や復仇の念、復讐心の類がなかったからまだ良かったものの、神輿として担ぐには便利な立ち位置の縁者を放置していたのは後手に回った、と言われても仕方ないような気がします。まあ今更、内乱の関係者が外からちょっかいかけてきても小揺るぎもしない程度には王国も安定していて、危機感を抱く対象ではなかった、というのもあるんでしょうし、裏方のカゲトラがそういう兆候を見逃すとも思えないので、予防措置はしていたのかもしれませんが。
でも、カゲトラって妻子の事ちゃんと様子見守っていたかというと怪しい気もしますけど。結局ミオが行動に移して姿を公に表すまで、カゲトラから妻子に関する報告がソーマの方にあがっていた様子もなかったですし。
まあミオってどう見てもアイーシャ系だったんで、放置してもよし、という考えだったのかもしれませんが。

さて、渦中におかれた傭兵国家ゼムですけれど、何気にこの国の位置って王国と帝国を挟んだ場所にあるだけに、現在王国と帝国の上層部が密に連絡を取り合う非常に仲の良い関係にある以上、ゼムが怪しい動きしても速攻で両側から潰されるだけなので、さほど怖いものじゃないんですよね。ゼムの王様は彼もかなり現実主義者の寝業師みたいですし、両国の仲が非常に良いものだと今回ゼムの国土で実現した両国首脳の会談を通じて悟ったでしょうから、よほど国際情勢が荒れない限りは自発的に地雷の上をスキップするような行動には移らないでしょう。
個人的にはマリアと対面しての、彼女と交わすことになった約束、それも口約束、が気になるところですけれど。帝国の行く末が微妙に見えないんですよね、現在。マリア陛下が健在である間はまったく問題なさそうではあるんだけど、彼女の配偶者候補に関してはさっぱり名前出てきませんし。
思考レベルと言い思想の方向性といい性格の相性といい、敢えて誰がいいかと言えばどう見てもソーマがピッタリではあるんですけど、それぞれの立場があるからなあ。帝国の帝妹将軍であるジャンヌと王国の宰相であるハクヤのいい雰囲気っぷりを見ると、本来立場上絶対に結ばれないだろう二人がどうにかなれるだけの何かが帝国と王国の間に起こりそう、などとうがってしまうのはメタから見過ぎかしら。

さて、話は東に移り、九頭竜諸国連合と王国との領海問題からの戦争を、ソーマたち王国側から仕掛けるような話になっていて、さて裏で一体なにが企まれているのか。またぞろ状況が動き出したところまで話を進めたところで次回へ続く、となっていて、この引きは相変わらず勿体ぶりますなあw