【外れスキル【地図化(マッピング)】を手にした少年は最強パーティーとダンジョンに挑む 1 】 鴨野うどん/雫綺一生 オーバーラップ文庫

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15歳のノートが『贈与の儀』で与えられたスキルは“地図化”―レア度は高いが他のスキルより使いどころがない、いわゆる外れスキルと呼ばれるものだった。幼馴染みに見限られ、失意のどん底に落ちたノートは、冒険者として稼いだ日銭を酒に溶かす日々を送るが―そんな毎日はしかし、唐突に終わりを告げた。
「そのスキルを持つキミを、ボク達は必要としているんだ」
最強パーティー『到達する者』に所属するジンから勧誘され、ノートの運命は大きく変わり始める―今度こそ、努力することを諦めず、足掻ききろうと。最強パーティーに入った少年が、やがて高みに至るファンタジー成長譚、開幕!「小説家になろう」発、第4回WEB小説大賞“大賞”。

ふと夏目漱石の【こころ】の中で描かれた「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」という台詞が思い浮かんだ。言葉の強さとは裏腹に、この言葉を発したKは紆余曲折の末に自死を選んでしまうし、決して字面そのままだけではない意味合いを作中の登場人物の中に残し続ける台詞ではあるものの、やはり字面通りの言葉の意味がもたらす強烈さは否めない。
主人公のノートは、「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」というその言葉通りの後悔を自分自身に向けて痛切に抱えている少年だ。彼の失態は外れスキルを引いてしまった事ではなく、そんなノートを見捨てずに居てくれた少女に甘えきり精神的にも能力的にも頼り切り、怠惰を極め寄生するだけのクズに成り下がってしまった事だ。
あらすじには幼馴染に見限られ、と書かれているけれど実際は際限なく依存し堕落していくノートのためにも自分は離れるべきだ、と考えたのではないだろうか。描かれている限りにおいては、自分の都合や利益を優先して役立たずを切り捨てていく、というタイプの娘さんではなかったですし。
実際、幼馴染と別れてようやく彼はそれまでの行状を後悔し、独り立ちするのである。そのままズルズルとノートを甘やかしていたら、彼は際限なくダメ人間になっていたのではないだろうか。
彼の得たスキルである【地図化(マッピング)】は、近似スキルと違って既存の地図がない未踏地であるダンジョンにおいて非常に有効である事が、彼をパーティー誘う『到達する者』によって教えられるのだけれど、よくあるような実はチートスキルでしたというような話は「今の所」ない。ダンジョン探索に極めて有用ではあっても、そこから派生して様々な恩恵が得られるものでは今の所だけれど、なくてノート自身は最上位冒険者パーティーの一員となるにはあまりにも力不足だった。
それを補うのは克己しての努力しか無い。結局、彼が『到達する者』の足手まといにならず不足分を補うために鍛えたのは、スキル【地図化(マッピング)】とは直接関係ない部分だった。
ただただ努力と研鑽によって、自分を最上位パーティーについていけるだけ磨き上げたのだ。その向上心は称賛に値するだろう。言われたことだけやっていてそれに満足して自分は頑張っている、なんて思い込んでしまうのも「あるある」なんですよね。
妥協するのもありでしょう、自分の限界を見定めるのもありでしょう、この程度で十分と判断するのもいいのです。自分のポディションを決めるのは自分であり、どんな位置をどんな状態を選ぶのかも根本的に自由です。良い悪いの問題ではなく、満足も幸福もそのヒト次第だ。
でも、ノートは選んだのです。自分で、もっと高みに行くのだ、と選択したのです。ならば、妥協は自分への敗北だ。仲間になってついてくると決めて宣言したノートのために、先に進むことを止めて彼の成長を待ってくれている新たな仲間たちへの裏切りだ。
そんな自分への妥協、自分に負けることなく、奮い立って努力し続けた。良き、男の子だ。
おんぶに抱っこではなく、自分自身で最高のパーティーの一員である参加資格を手にしたんですね。
ただまあ、きっちりと育成プラン立てている教導役のヒトに無断で自分で自主トレしてしまったのはあかんと思いますけどね。自己流に勝手に訓練して、場合によっては変な癖ついて取り返しのつかない不可逆のいびつな成長をしてしまった可能性もあるわけだし。報連相はほんと大事、大事ね。

しかし、この『到達する者』の人たちも最強パーティーという立ち位置に奢らない凄い人たちなんですよね。いくら必要だからってスキルを持った素人同然の冒険者をほんとうの意味での仲間にしよう、なんて凄い忍耐力と先を見据えた展望力ですよ。実際に、ノートがものになるまでダンジョン探索を止めちゃってるわけですし、手取り足取り協力してノートの育成に勤しんでくれてるわけですし。もっと便利使いする事も出来たでしょうに、本当に冒険の醍醐味を分かち合う仲間として扱ってくれたわけですから。そりゃ、ノートも頑張らないといけないですわ。

とまあ、第一巻では結局ダンジョン探索まで行くこと無く終わってしまった上に、パーティーメンバーの女性問題が拗れに拗れてすげえトラブルになってしまう、という顛末が待っているのですが。
ノートが囮になって逆美人局みたいなことするわけですけれど、ノートくん堕ちかかってる堕ちかかってるw
ガチの魔性、ガチの傾城じゃないですかー、このビッチ聖騎士。何気にこんなヤベえ女仲間になってしまって、大丈夫なんだろうか。サークルクラッシャーどころじゃなさそうなんですがw