【最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 3 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する】 タンバ /夕薙 角川スニーカー文庫

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外交でも完璧に暗躍し、弟・レオナルトの評価を高めた出涸らし皇子・アルノルト。安堵も束の間、次は皇族最強の将軍・第一皇女リーゼの縁談を取り持つよう皇帝に命じられる。一方、流民の村で起きる人攫いの解決を命じられたレオナルト。しかし、調査の最中に帝国を揺るがす異常事態が発生し!?
帝国とその民の危機を前に、獅子奮迅の活躍を見せるレオ。その成長と決意を目の当たりにしたアルは
「未来の皇帝が俺に本気を見せてみろと言った。その返礼はせねばならんだろう」
弟を助け、帝国を護る為、出涸らし皇子は戦場で暗躍する! 最強皇子による縦横無尽の暗躍ファンタジー、決意の第三幕!

リーゼ皇女の旦那候補のユルゲン公爵がちょっと格好良すぎて男惚れしてしまった。幼少の頃から一途! ホントに一途! 
頑なに結婚しようとしない姉の縁談を取りまとめろ、とかまた無茶振りだと思ったら今回に関してはちゃんと相手いるじゃないですか。一方的に言い寄り続けているのかと思ったら、他の縁談候補には梨の礫なリーゼ姉さまはこのユルゲン公爵相手にだけはずっと交流続けてるんですよね。詳しく話を聞いてみれば見るほど、満更でもないじゃん! 満更でもないじゃん!
となってきて、実際にユルゲン公に会ってみたら本当にいい人なんですよ。その上、一代で衰退していた公爵家を経済的にもり立ててみせた経世の巨人だったりするんですよね。有能! とびっきり有能! その能力も公爵家を大きくしたのもリーゼに見あう自分になるため。また姫将軍として武力を重視しているその眼鏡に叶うために武術の鍛錬も欠かさず、才能もないのに努力で一端に使えるようになってるし、率先して自分から戦場に先頭で立つ勇気も欠かさない。それでいて押し付けがましくなく、忠犬ワンコのように許されるまでその場におすわりしたまま身じろぎもしないような所もあるし、リーゼにアタックを続けているとはいえストーカー的なものではなくて、リーゼが許す範囲に留めてるんですよね。
逆に言うと、リーゼの方が許しているからこそずっとアプローチし続けているということで。
いやこれ、目があるどころじゃないですよね?
人柄的にも誠実で紳士的で、なにこのパーフェクトジェントルマン。今まで帝位争いのために様々な人とコンタクト取って味方に引き入れたりしてきましたけれど、ユルゲン公を味方に引き入れたらお釣りが来るくらいなんじゃないだろうか。能力的にも人間的な信頼においてもちょっと今までの人材と比べても別次元すぎる。
何より、この人はなんというか義兄として家族として迎え入れたい、そう本気で思わせてくれる人だったんですよね。
帝位争いからは一線を引いている長女のリーゼだけれど、彼女が一番仲良く心許しているのは同母妹のクリスタと、アルだけなんですよね。あれ? レオは? と思ったら、過去に一悶着あって今は疎遠になっているらしいものの、アルとレオの兄弟はリーゼにとっても一番身近な家族であったわけだ。
味方になってくれれば、とてつもなくありがたい人だったわけですけれど、これにユルゲン公がくっついてきたらとんでもないアドバンテージを帝位争いの中で確保できるんじゃないだろうか。
まあ、リーゼ姉さまってば横暴な姉、のテンプレみたいなジャイアン姉なんだけど。
で、直接この揉めてる二人と会ってみたらですよ……いや、リーゼ姉さま満更じゃないどころじゃないじゃん。もうべた惚れじゃん。その口からユルゲン公に関しての惚気しかこぼれてこないんですけど。
結局、彼女が結婚しようとしないのは相手が悪いわけじゃなく、二人の関係がどうこうじゃなく、リーゼの問題であり、皇太子の死によって起こることになってしまった帝位争いが鍵になってたんですなあ。

今回は、皇帝陛下の父親としての側面がよく見える回でもありました。皇帝としての父の姿をアルに見せて、アルの生き方にある方向性を与えたように。未来を託していた皇太子の死に、誰よりも皇帝陛下こそがダメージを受けていたことに、今更気付かされるんですね。
皇帝陛下だって、自分の子どもたちが殺し合ってでも争い帝位を奪い合う状況を喜んでいるはずがなかったのだ。子供たちを一人ひとり、ちゃんと愛しているのが今回は特にその行動や言葉から伝わってくるんですね。
最初の印象とは違って、血で血を洗う争いを行うことになるこの皇帝一族に家族としての親愛などないか薄いのか、と思っていたのですけれど、帝位争いに参加しない皇族の兄弟とは仲良いし、むしろ家族愛を深く感じさせてくれるような間柄も、方方で垣間見えることもある。この争いを起こさせた皇帝陛下からして苦渋の選択であり、家族への愛情には事欠かない事を今回よく見えてくれたわけで。
だからこそ、その父である皇帝からもリーゼからも敵意を向けられているザンドラとその母はちょっと異様なくらいハズレてるんですよね。この母子だけは他に家族に愛情なんかひとかけらも抱いていない。どころか、どうも第二王妃や皇太子への暗殺疑惑はガチみたいで……。
ちょっとこのあたりとは徹底しての潰しあいになりそう。

アルと離れて南部の人身売買疑惑への監察使として派遣されたレオは、今度こそ兄の手助けなく一人で獅子奮迅の活躍を示すことに。本作の主人公はアルなんだけど、レオもまたもう一方の主人公と呼ぶに相応しい成長をメキメキと見せてきたなあ。
かつて、アルにも知れずにリーゼの暴走を止めていたように、アルのオマケなんて印象を吹き飛ばすだけのスケールを見せてきた感がある。それでいてアルから独り立ちするとかじゃなく、アルとレオ二人揃ってこそあらゆる方面に大きな力を発揮する双頭の竜みたいな感じになってきているのが本当に好みかと。
しかし、今のレオやアルをして二人揃ってようやく皇太子に比肩するように、って亡き皇太子殿下がいったいどれだけ偉大な人物だったのか。そりゃ、皇帝陛下も心ひしゃげるわなあ。