【異世界国家アルキマイラ 2 ~最弱の王と無双の軍勢~】 蒼乃暁/bob GAノベル

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異世界転移に巻き込まれた無双の魔物国家・アルキマイラとその王・ヘリアン。
辿り着いた異世界で悪逆を尽くすエルフの国家・ノーブルウッド先遣隊を撃滅し、無辜の民を救ったことで新たなる地でもその力と名声を拡げつつあった。
国家基盤が整う中、現実世界への帰還を願うヘリアンは、信頼のおける軍団長と共にこの世界の調査を決意する――
その最中、自らと同じ黒髪黒眼の少女・シオンを助けた事を契機に運命が動き出す。
この世界最強と謳われるに存在に力を見込まれ、猛る魔獣ひしめく迷宮攻略のクエストを受けたヘリアン達を待ち受けていたのは、神代から残された古の力!!

「万魔の王の名に於いて、アルキマイラが瞳、リーヴェに命ずる――撃滅せよ!」

今――万魔の王の命を受け、光纏いし月狼が覚醒する!!
無双の配下と歩む王道ファンタジー戦記、待望の第2弾!

王とは孤独なもの。特にただのゲーマーから突然魔物たちの王に祭り上げられてしまったヘリアンからすれば、王としての体裁を繕い続ける事は自分の生存を賭けた命がけのロールプレイなのだ。配下の魔物たちに決して隙見せてはいけない、という存念が彼を縛り続ける。
それが、部下たちの心理的な距離の隔たりを感じさせるのだろう。
見ていると、ヘリアンは部下たちよりもこの異世界に飛ばされてから知り合った人たちとの方が打ち解けてるんですね。ハーフエルフの王族姉妹、特にリリファなどはその最たるもので他の誰にも見せていない素のヘリアンを彼女の前だけでは解放している。
彼女の前でだけ、緊張を解いている、と言っていいかも知れない。そうやって、辛うじて心理的な休息を、癒やしを得ているのだ。
それ以外の時の彼は強迫観念に駆られたように王としてのロールプレイを走り続けている。彼自身の責任感の強さも大きいのだろうけれど、それだけ周囲に心許せる環境になく、王であり続けなければならないという切迫感が、彼に立ち止まることを許さないのだろう。
リーヴェをはじめとして、少なくともはじまりの三匹は、彼が王でない頃から付き従う魔物たちは、ヘリアンが王だから慕っているわけではないというのに、それをヘリアンが知る事はないのだ。
それが、どうしようもない壁となって両者を、リーヴェとヘリアンを隔ててしまっている。
仕方ない側面もある。リーヴェにとっては、彼の従者となって成長して側近に取り立てられてこの異世界に飛ばされて、という経験は地続きの体験だ。でも、ヘリアンにとって異世界に来るまではリーヴェたちはゲームの向こう側の存在だったのだから。
リーヴェにとって、生まれたての頃の無力で何も出来ずに悔しい思いをして、でもヘリアンと一緒に走り回って泥だらけになって、一緒にはしゃいで可愛がってもらって、という経験は色鮮やかな得難い思いでなのに、ヘリアンにとってはゲーム上の話でしかないのだから。
ヘタに生の人間として出会ったリリファやシオンたちと比べて、やはり配下の魔物たちはゲームを隔てた際の記憶が付きまとうのかもしれない。どこか、そういう意識で見ている向きもあるのだろう。それでいて、今は生身の魔物たちとしてすぐ側で息づいている。そのギャップが、ヘリアンの場合は無意識に距離を置く形となって出てしまっているのかもしれない。
リーヴェも、今となっては忠実な側近を務める事に頑張ってしまって、本音を繕い冷静沈着な仮面のうちに収めてしまっている。
そんな二人のどうしようもない隔たりが、なんともモヤモヤさせてくれる展開でした。せっかく少人数での人類圏への調査遠征であるというのに、リーヴェは冷遇されてると勘違いして落ち込み、ヘリアンは心の余裕無くリーヴェの不安に気づかず、という微妙な状態が続いてしまいましたからね。
要はほんとにワンコなんですよね、リーヴェって。それに対して飼い主ではなく王様として振る舞っているからか、細かい所に心配りが行き届かないというべきか。彼女に対しての絶大な信頼を、ちゃんと示してあげられていなかったというべきか。
その意味では、最後にヘリアンがちっちゃい頃のリーヴェは、たとえNPCでも実に可愛らしいキャラクターだった、というのを思い出して、あの頃のようにダダ甘にもしゃもしゃして褒めて可愛がってあげたのはこの時点においての満点だったような気がします。今までみたいに考えて考えての行動ではなくて、思うがままに感情のままにの行動でしたけれど、きっと本当はそれが一番正解なんだろうなあ。
まあ、臆病で慎重なヘリアンはそうそうそんな考えなしの行動には出られず、心に鎧を覆わずには居られないのでしょうけれど、せめてリーヴェには信頼以上の親愛を注いでそのように接してあげて欲しいものです。