【ロクでなし魔術講師と追想日誌 3】 羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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グレンが学生時代の後輩と、フェジテの事件を万事解決!?―『魔導探偵ロザリーの事件簿』。学院の体験学習会に、魔術学院の誇る変態講師陣が登壇!―『魔術学院わくわく体験学習会』。学院のストライキに生徒会長・リゼが暴動鎮圧へ動く!―『生徒会長と混沌議事録』。グレンが想い人(!?)へのプレゼントのためブラックマーケットへ参加!?―『誰がために金貨はなる』。そんなロクでなしな日々が綴られる!そして―「私は…好きだよ。グレン君の夢」正義の魔法使いになろうと足掻くグレンと、それを支えるセラ。二人の足跡を辿る軍属時代のエピソードがついに解禁!

本編の方はもうクライマックス近くまで進んでしまっているのですが、そう言えば短編集のホウを全然読み進めていなかったのでここらで挽回していかないと。本編との時間ギャップがかなり出てしまっているので、本編での人間関係の変化とこっちでの様子がだいぶ違うんですよね。
イヴなんぞ、この頃まだただ野心剥き出しの頭おかしい娘さんだし、白猫はまだまだツンツンしてるし。

【魔導探偵ロザリーの事件簿】
この作品、グレン以外にも立派なロクでなしがちょっと沢山居すぎやしないだろうか。学生時代の後輩ロザリー。グレンよりも魔術の才能無い、という時点で終わっているのに生活力ないのに趣味に生きようとして困窮死しかけてたり、交渉力も観察力も計画性もないのに探偵やってたり、立ち居振る舞いがひたすら貴族ムーブの上から目線だったり、とダメな部分しかないじゃないか。
むしろ、わりと何でもスラスラと熟せてしまうグレンが超有能に見えてしまう。というかグレンってホントにほぼほぼなんでも出来るんだよなあ。こうしてみると探偵も密偵もその分野に集中すれば簡単に名をあげられそうで、生きていく分には苦労なさそう。何気に「ヒモ」の才能もありそうだし。


【魔術学園わくわく体験学習会】
この頃にはグレンも教師として前向きになってた頃なのか。最初の頃なら魔術に対して絶望していて、魔術に対して目をキラキラさせているような魔術学園入学希望者なんぞ、腐った魚の眼で見てそうなものでしたけど。
それにしても、この学園、ろくな教師いないなホント。それらを出汁にして、最後にいい所取りするグレンもまあ大概な気もしますけど。でも、教師としても有能なんだよなあ、この男。


【生徒会長と混沌議事録】
本編でも才知に長け有能さを損なう事無く終盤まで準レギュラーとして活躍し続けているリゼ生徒会長のメイン回。本編ではあんまりサブキャラの単体エピソードが描かれないわりに、一人ひとりイキイキと描かれていたのは、ちゃんと短編集で一人ひとり時間を割いてこうやって丁寧に個人エピソードが描かれていたからなのか。
品行方正でありつつ、事前の裏交渉や寝技も使ってきっちり相手には止めを刺すという清濁併せ持つこの手の資質はなかなかいないスキルの持ち主なだけに、次代の生徒会長は誰がやるにしても苦労しそう。いや、リゼさんの場合はきっちり引き継ぎもやってくれて後継が困らないようにしてそうですけど。にしても、この話読まなかったらリゼ生徒会長の身元とか知らんまんまだったよなあ。
ヤダ怖い人っじゃないですかーw


【誰がために金貨はなる】
オーウェル博士の作るものって、どれも一作品のエンディングに至るための鍵になるようなアイテムだったり、逆に最終戦争を引き起こすようなとんでもない代物だったり、物語の根幹を担いそうなとんでもないものばかりだったりするんだけど、どうやったらそんなものをどれもしょうもない目的で作り出せてしまうんだろう。そしてその価値も自分で理解せずに平気でぶっ壊せるんだろうw
今まで彼が作ったものを保存できてたら、このロクでなし魔術講師シリーズってわりとイージーに世界に危機もクリアできそうな気がするんだけどw
そして、そんな彼の反則品を元手にしたとはいえ、わりと簡単に大金稼いでしまうグレン。だからこの主人公、ただ生きていくだけなら本当に簡単に何でも熟せてしまいすぎる。大金稼ぐのも、ひょいひょいっとやってのけちゃってるわけですからね。その金を惜しげもなく、こういう事につぎ込めてしまうあたりに、彼の金銭に対する価値観が伺えるわけですけど。そのわりに、狡っ辛い真似して小金拾い集めるような真似ばかりしているのは、才能の無駄遣いしてるよなあ、と。


【White Dog】
白犬、というタイトルの通りグレンの中の消せない傷であるセラとのお話。グレンの過去編、特務分室づとめの初期の頃のお話。特務分室で正義の味方の現実を思い知らされだした頃、なわけだけれど、もう初期の段階で既にグレンくんってば精神的に一杯一杯じゃないですかー。理想と現実とのギャップに悩み苦しみ、という段階を既に突破してしまって、溺れて水を飲み沈んでいく体を必死にバタつかせて辛うじて浮き沈みさせているような状況で、既に自分も周りも省みる余裕を無くしているような有様。
これ、普通にもう持たないですよね。これだけ精神摩耗してたら任務中にミスって殉職するのも時間の問題。という限界に達していたグレンを、救ってしまったのがセラだったわけだ。
救って、まだまだ頑張れる、理想を手放さないで、と膝を付きかけていた彼を支えて立たせて背中を押したのがセラだったわけだ。理想以外にすがるものがなくて、もう諦めかけていた彼を救ってしまった。そりゃ、グレンにとってセラの存在は絶対的なものになってしまいますわ。彼女の存在が、グレンにとっての拠り所になってしまった。ドロップアウトも出来ずに、前に進み続けないといけない理由になってしまった。
なるほど、作者の人がわざわざ彼女をグレンにとっての福音であり救いであり、呪いでもある、と語るわけだ。
これ、よくセラが居なくなった時にグレン、心折れただけで済みましたね。これ見てると、心折れるだけですまなくて精神的に再起不能になってもおかしくなかったんじゃなかろうか。
セリカ、相当頑張って息子のケアに務めたんだろうなあ、これ。どれだけダダ甘やかせたなだろう。