【公女殿下の家庭教師 5.雷狼の妹君と王国動乱】 七野りく/cura 富士見ファンタジア文庫

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夏休みも後半戦へ。ジェラルド元王子による謀反の一件を受け、療養中のアレンは、「兄は妹を甘やかさないといけません!」―ベッタリなカレンと兄妹水入らずの時間を過ごしていた。一方、それぞれの実家へと帰省したティナたちもまた、アレンという家庭教師との出会いがもたらした日々を振り返りながら、残りの夏休みを家族団らんで満喫していた。しかし、そんな穏やかな日々は、すべて嵐の前の静けさだった―!?東都が戦火に包まれる時、無自覚規格外な教師が世界を救う魔法革命ファンタジー―王国動乱編の幕が上がる!

うーん、今回は、ちょっと構成もね。ぶっちゃけ、アレンと別れて地元に戻ったお嬢様方のお話、2章3章は冗長だったと思います。同じような、アレン好き好きな話題の繰り返しで新鮮味もなくて、なんかダラダラとした調子になっていましたし。それに、ステラの執事くんはなんでああいう設定にしたんだろう。あれだとステラがそこらの鈍感すぎて無神経になってる主人公みたいになってしまってるじゃないですか。脈があるならともかく、ステラは先生に夢中なんですからただ執事くんが可哀想なだけになってるような。彼のルートが有るなら今は臥薪嘗胆の時期で済むのでしょうけど。

そして相変わらずアレンの在り方にはモヤモヤさせられてしまう。これまでの巻の感想記事見直してみても、どうしてもそこに引っかかってしまっているみたいでどうしても言及が増えてしまっている。
彼のそういう部分が解消されていっているかというと、全く変わってないですからね。これって作者さんからして問題と捉えられていないのかもしれませんね。
リディアをはじめとした女性陣、いや女性陣に限らず親しい人たちからの愛情や好意に自己を低く評価する事で向き合わない不誠実さ、いや無神経さというべきか。
自分が不当に扱われたり蔑ろにされることが、彼を好きで大切に思っている人たちをどれだけ傷つけ悲しませているのかが分かっていれば、そういう扱いを当たり前のように受け止められないと思うんですよね。実際に、アレンは自分の扱いで周りの人たちが怒り、悲しみ、憤っているのを直接目の当たりにしているのに、彼ら彼女らの痛切な感情に対して配慮を見せてくれないのだ。
自分は、周りの大切な人たちが蔑ろにされたら、許さないくせに。
自分は決して許さないのに、周りの人たちには許せ、気にするな、と強いるのですよ。
自分は周りの人達が嫌な目にあうのを前にして辛い思いをしたり悲しい思いをしたり、傷つく事を受け入れられないくせに、周りの人たちには自分が不当に扱われて悲しむのを、傷つくのを受け入れろと促すのである。これを一方的と言わずに何という。これを無神経で自分本位だと言わずに何という。
ほんと、そういうところだぞ。モヤモヤさせられるのは。
カレンの危地においての、もっとちゃんと自分を見て、という叫びは趣旨こそちょっと違うかもしれないけれど、アレンにとっての痛切な指摘だったんじゃないだろうか。これをきっかけとして、アレンには少しでも自分の足りてない部分に気づいてほしいのだけれど。
死地とも言える戦場で、彼女たちのためにも生きて帰らないといけない、とリチャード公子と励ましあった事で、リディアたちにとっての自分の価値を、彼女たちが感じる痛みを彼が理解しようとしている、となってくれればいいのですけれど。
その意味でも、うんアレンの親友としても、絶体絶命の防衛戦の精神的支柱としてもリチャード兄ちゃん、今回八面六臂の活躍だったんじゃないだろうか。株爆上がりだよ、最初から最後までカッコよかったよリチャード兄ちゃん。だから、せめて家族の人だけでも心配してあげてくださいw アレンとリチャードMIAの一報に、家族の誰もリチャードの事言及してくれないのが不憫で不憫でw
でも、ほんとにリチャード相手だとアレンも遠慮ないんですよね。一緒に死地を駆ける事を厭わない、本当の意味で対等で背中を預けられて、生死を共にすることが出来る間柄だったのが、この戦いを通じて伝わってきた。彼が促してくれたからこそ、生きて帰る意味を考えられた、カレンの本気の叫びを受け止められた。そう思えば、得難い親友じゃないですか。イイ男だなあ。
だから、そんな彼、リチャードと包囲下にある新市街へと突入するラストは、今までのように自分を軽く見て、の事じゃないと思いたいんですよね。彼を止めようとする母の悲痛な叫びは、今度こそちゃんと届いていたと思いたい。それでも、自分の価値を理解しても、残された人たちの悲しみをわかっても、痛みを知ってもなおここは行かなくてはならない場面なんですよね。
わかってなおそれでも行く、からこそ決死行にも重みが生じるのである。本当の意味で、親しい人たちの想いを背負えるのである。生きて帰る意志を保ち続ける事が出来るのだ。
そうであって、欲しいと願うばかり。

シリーズ感想