【魔術破りのリベンジ・マギア 7.再臨の魔人と魔術破りの逆襲術士】 子子子子 子子子/伊吹のつ HJ文庫

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九曜に告げられた「己が何物であるかを知れ」という命題に向き合うべく、晴栄は自身の母親・葉子の足跡を辿っていく。幸い、大和へ帰国していたことで調査の足掛かりを掴むが、同行していたティチュを発端に、陰陽寮を揺るがす大事件が発生。その事件の中で、兄・晴雄から語られる真相とは―!?「―この土御門家は、俺が完膚なきまでに終わらせてみせます」かつての復讐者と、今もなお憎悪の炎に身を焦がす復讐者。二人の邂逅と激突の先に、新たな物語が紡がれる。

シリーズ完結編は、最終巻に相応しくオールキャストによる総力戦。それ以上にシリーズ通してのテーマを見事に帰結させた集大成となっていたのが素晴らしかった。
物語のはじめは、母を殺した土御門の家そのものを憎み、当主に成り上がってこの家そのものを滅ぼそうと復讐の念を滾らせていた主人公の晴栄。彼の孤独な憎悪と復讐心は、留学先で出会ったティチュをはじめとした様々な人達が抱え持っていた苦しく辛い人生を目の当たりに、彼らに寄り添い時には向こうから手を差し伸べられ、共に困難を乗り越えていく中で徐々に晴栄の心は解きほぐされていきました。
そうやって心の余裕を持ち得て今まで自分が歩いてきた人生を振り返ってみると、新たに得た友人だけではなく、復讐の同志だった狐狼丸や幼馴染の鴨女をはじめとして故郷日本でも様々な人に助けられ、一度実家に帰ってみれば兄・晴雄やその側近である斎藤藤子や剣の師匠であった法麗らに暖かく迎え入れられ、憎しみの対象でしかなかった土御門の家ですら本当は晴栄を孤独にはしていなかったと気付かされたのでした。
晴栄の心が晴れ渡っていく過程は、その様々な出会いの描写もあり丁寧なもので、彼の復讐はこうして周りの人たちによって癒やし解きほぐされる事で消え去ったのでした、めでたしめでたし、でも十分綺麗な纏め方となるだけの晴栄の変化は良きものでした。
でも、それで終わらずにさらに一歩踏み込んで、晴栄と全く同じ復讐を、晴栄と同じ孤独にまみれた憎悪と怨念ではなく、なくなった晴栄の母への敬愛と晴栄という弟への愛情によって成し遂げようとしていた人を、復讐を辞めた晴栄の前に立ち塞がらせたことで、この復讐の物語はステージを一つ駆け上がったように見えたのでした。
実際、晴雄の思惑はこの最終巻に至るまで判明せず、決して悪い人には見えなかったけれど結局自分の都合で何かを企んでいる人で晴栄を利用するつもりだったのか、と思っていたのが理由が判明してみれば、そりゃもう凄く情愛溢れた人ゆえの思いつめた行動で、弟への愛情が満ち満ちていて思わず目尻が熱くなるほどだったんですよね。
愛深いからこそ、その一念は決して止められない。止められるのは、それこそ同じ復讐者であった晴栄だけ、という構図がまた素晴らしかった。
お互いを愛し何よりも大切に思うが故に、刃を交えることになる兄弟。この熱量は、熱かった。

ラスボスも、最終決戦に相応しい大物で、それを前にこれまで出会ってきた人たちの助力と、これまでの旅路で知ることになった母の出自に基づく家族としての縁あるアヤカシたちの支えも受けて、最終決戦に挑むという構図は実にオールキャストの決戦に相応しいもので、それに加えてスペックや数の過多で押すのではなく、相手の仕掛けを逆利用して術を反転させて起死回生の一手とする、というのは歴史における魔術という媒体をふんだんに取り入れ、丁寧に解きほぐして物語の中に取り入れて、目玉にしてきた作品らしい、ギミックでありました。

それに、怨念無念を晴らした、という意味では土御門兄弟だけではないんですよね。シリーズ通して多くの登場人物が経てきた行程であり、多かれ少なかれ皆が気持も新たに自分の未来を歩みだしている。それが、ラスボスの彼にまで当てはめてくるとは思わなかっただけに、彼の執念怨念があの一言で祓われたのは、清々しくもありました。

しかし、邪悪の樹の首領の正体についてはちょっと吃驚でしたけどね。その行動原理というか目的も含めて、思いもよらぬ方向からボールを投げられて、なんかこう「うわっ、そう来たか!」とちょっと心跳ねるような驚きでした。邪悪とかそういう方向性じゃなかったもんなあ。というか、この人ありなのか。歴史上の実在の人物をちょくちょくガチの登場キャラとして放り込んできた本作ならではの横入りでありました。

このシリーズ、設定や魔術の使い方などは非常に面白く、物語の展開そのものはオーソドックスな面もありつつ紆余曲折あって良いな、と思いつつそのお話の語り口がちと固かったり運び方が性急だったり、と物足りない面が垣間見えることもあったのですが、この最終巻はキャラの内面描写も含めて最初から最後まで勢いよく情緒も揺さぶられる緩急もあり、前のめりにのめり込まされました。良かったよー。特に主人公の物語としては、見事に完成を見ていてお見事でした。
次回作も、この調子この勢いで期待したいです。

……しかし、エピローグってば晴栄くん、もう自分に何の疑念もなく女装してましたなw

シリーズ感想