【魔弾の王と聖泉の双紋剣(カルンウェナン) 2】 瀬尾 つかさ/ 八坂ミナト ダッシュエックス文庫

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ティグルとリムはアスヴァールの王女ギネヴィアに助力し、三百年前から蘇った始祖アルトリウスと戦うことを決意する。そしてついにギネヴィア派と偽アルトリウス派の決戦の火蓋が切られた。会戦でティグルたちの前に立ちはだかる敵将は、かつてのジスタートの戦姫、サーシャと呼ばれていた女性。「僕は死んで、蘇った」神器を持つサーシャの圧倒的な剣技と体術に苦戦を強いられるティグルたち。彼らの苦境を救ったのは、あまりにも意外な人物だった。「空間エザンディスの力か」円卓の騎士サーシャの言葉と共に、戦いは更なる次元に突入する!


サーシャの復活で、新旧双剣の戦姫対決だー! と無邪気に喜んでたんですが……あのぉ、サーシャの最強度合いが想像より桁2つくらい上だったんですけどw
新旧対決どころじゃないよ! 双剣使いというと、どちらかというと技倆重視の軽量ファイターという印象だけど、もうこれ呂布じゃん!? というくらいの豪傑っぷりで。
膂力があがったのは復活してかららしいのだけれど、スピード、技倆、パワー全部別次元ってなんですかこれ。後書きでもサーシャの強さについては語られているのですけれど、総合するとロランに匹敵するって事ですよね。
ただでさえ手に負えないのに、これでアルトリウスはもっと強いとか、どうするんですかこれ?

ただ、幸いなことにサーシャみたいなのがゴロゴロと集まった円卓騎士団集結、突撃ーー! という有様にはなりそうにないんですね。
ようやくアルトリウス側の内実が描かれだしたのですけれど、確かに過去ではアルトリウスは王であり、円卓騎士たちは臣下として彼に従っていたのですが、この時代においては一応主従ではあるものの、復活した目的については厳密な所でアルトリウスと円卓の騎士たちは異なっているようで、そのまま配下の将軍として付き従う、という様子ではないということ。
そもそも、どうも魔物を相手にすることを主目的としているようで、むしろアルトリウスが本来の復活の目的からはズレた意図の読めない行動をとっている、という事らしい。
モードレッドがむさいおっさんで出てきたときには吹いてしまったけど。いや、Fateシリーズではなくても、モードレッドってアーサー王の「息子」という扱いだから若い騎士、という印象だったんですよね。いや、ここで出てきたモードレッドも実際は肉体年齢的には若者なのかもしれないけど、挿絵のデザインむさいおっさんなんだよぉ。しかも、見事なくらい噛ませ犬の小物だし。
そういえば、この世界での円卓騎士団はモードレッドの反逆で潰えた、というわけではないようで。そもそも、アルトリウスとモードレッドは親子関係ではないようなんですよね。むしろ、この関係は外部からお目付け役で派遣された軍監みたいな?
どう見ても悪そうな黒幕が別にいるので、アルトリウス自身はしたたかながら清廉な王様のようだし、何を目論んでいるかわからないにしても決して邪悪な事を企んでいるのではないのだろうけど。
でも、それはそれとしてギネヴィアの家族など王族を鏖殺しているわけで盛大に血は流しているのだが。あの殺戮には何らかの理由があったのだろうか。もし、魔物の討伐が目的なら、アスヴァールの征服は必ずしも必要とは思えないし。いや、どうも魔物は各国の上層部に食い込んでいるらしいし、ブリューヌはあいつだとして、ジスタートは誰なんだろう。
ともかく、ギネヴィア側との和解はどうしたって無理なようで。
そんなアスヴァールを二分する争いの片方を担うギネヴィア軍を事実上差配しているのが、若き公爵令嬢リネット・ブリダイン。
なにこの政治チート娘はw この若さ、わずか16歳で立派に宰相職をこなして、というか宰相職どころじゃないですよね、ほぼワンマンフリート状態。父親のブリダイン公爵が軍に参加してようやく一息ついているようだけれど、ほぼ彼女ひとりでギネヴィア派は持っていたようなもので、すげえなこの娘。
ちなみに、川口先生が手掛けるシリーズでは彼女の存在は見受けられないのだけれど、この娘が居ると居ないとではギネヴィアの政治基盤の強固さがパンケーキと大理石くらい違いそうなんですよね。
あっちのギネヴィアはまだ政治できそうな器用さを見せていたので、何とかなるのかもしれないですけど。
何れにしても、過労死しそうな勢いで八面六臂の働きをしていて、リネットさんの存在感が半端なく、またティグルを竜殺しの英雄として活用する手練手管も練達で、挙げ句にティグルへのアプローチも軽快快活と来て、これリムさんぼんやりしてたらヒロイン食われますよ!?
冗談めかしてますけど、わりとガチでティグルの事捕まえられたら捕食するつもりですし。まああんまり目がないだろうなあ、と冗談で済ましている節もあるのですけど。

猫の王というケット・シーがティグル一行に加わり、登場人物みんなが寄ってたかってニャンコ詣でしてて猫ご満悦、はまあいいとして、猫の妖精が仲間になり、また敵も伝説上の騎士たちに、精霊たちもそれぞれにティグルたちに力を添え、とこのスピンオフの雰囲気はより濃厚な神秘の匂いのするファンタジーになってるんですよね。
それでいて、リネットの奮迅によって戦記物としてアルトリウス派とギネヴィア派の、中立派の貴族を取り込みつつ随所で戦いを繰り広げる本格的な国を二分する内戦ともなっていて、本編とはまた味の違うファンタジー戦記として、色々と漲ってきたんじゃないだろうか。
騎士ガラハッドと騎士ボールスの無口と多弁のコンビがまた仲良くて、まさに好漢という感じがして見てて気持ちよかったです。円卓の騎士がみんな敵、というわけではなかったのは何にせよホッとしましたよ。戦力的にも心情的にも。
さてしかし、サーシャとは明確に対決に向かっているだけに、ほんとこれどうやって対抗するんだ!!?