【終末なにしてますか? 異伝 リーリァ・アスプレイ #02】 枯野 瑛/ue 角川スニーカー文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

聖剣セニオリスの調整に訪れた幽霊船都市国バゼルフィドルで、正規勇者リーリァにできたはじめての友人・エマ。
「正規勇者は、正義の味方じゃねぇ。あくまでも、人類の味方であって、人類の敵の敵だ」
そんな守護者が、友人を奪われたとき。そしてその友人が、人類の敵になったとき。リーリァは必殺の聖剣を手に、何を想うのか―。いつかは滅びゆく大地で、いまを生きる勇者と人々の烈しくも可憐な日々、その第2幕。

ヴィレムくん、この頃はまだ年相応の少年らしいムキになる所とか垣間見えて、若いなあと思わず目を細めたり。少年少女の冒険活劇、と呼ぶには彼ら正規勇者や準勇者たちに求められる振る舞いはあまりに子供らしさからは遠いのだけれど。でも、その胸のうちに秘めたるわ老成と達観だけではないのだと。
男の子らしい意地だってあり、女の子らしいトキメキだってちゃんとあるのだ。確かに彼らは正義の味方なんかじゃなく、常に現実に直視して情に流されず人類の敵を掃討する決戦兵器たる事を求められているのかもしれないし、彼らは直向きにそれを成し遂げ続けている。
でも、人間辞めてるわけじゃないんだよね。男の子や女の子するのを辞めてるわけじゃないのだ。諦めてるわけじゃないのだ。
だから、友達が人類の敵になってしまったからといって、機械的に自動的にそれを討ち滅すなんて真似、揚々とするはずがないのだ。そういうものだと思いこむのは、リーリァ・アスプレイという人を随分と見縊っているって話じゃないですか。割り切らなきゃならない時だってあるし、必要ならばどんな酷な状況だって涙一つ流さずにやってのけるのが彼女でしょう。でも、思考放棄して悩むの辞めて考えるの諦めて、とっとと楽な方に流されてるようじゃあそんなの正規勇者なんて呼ばないのだ。勇者って名称は伊達じゃない。
聖剣セニオリスに選ばれた者として、リーリァは数限りない別れと共にあゆんできた。でも、その歩みの中に諦め手を放し突き放した末のものは決してなかったに違いない。少なくとも、ヴィレムがそんな方面でリーリァという少女を心配していた事はなかったと思う。リーリァがそんな方に逃げてしまえる子だと、ヴィレムは昔から一度も考えたことなかったんじゃないだろうか。
そういう娘だからこそ、そんな彼女がそういう状況に直面させられ一人で頑張らさせられてるのをヴィレムはずっと腹立たしく思っている。理不尽、に思えるんだろうか。
なんかもー納得いかねー! という憤懣やる方ない気持ちになってるんだろうか。負けず嫌い? 面倒見の良さ? 放っておけない、黙って見てらんない、そういうの受け付けない。そんな感じなんだろうか。
そういう心持ちだけで、普通の人たち……人々の群れの先頭の突端に居て特別という枠組みに類される人たちですら、最初から当たり前のように別枠に除してしまっている「天才」たちの、その唯一無二性を、凡人の枠のまま否定しようと。凡人の自分ですら並び立てるんだ、と追いすがろうとしているの。それはそれで、十分精神性がぶっ飛んでますよねえ。
そして、それはそれで言ってしまえば「男の子の意地」とも言えるのだ。
そうやって身の程を知らず無様を晒しみっともなくも這いつくばって、追いすがってくるその無謀さが、最初から当たり前のように孤独を運命づけられている、独りという枠組みの中に区切られている天才たちにとって、眩しい光そのものなのだろう。独りにしない、という意地が嬉しくてたまらないのだろう。
天才のお嬢さんたち、ちょっと内心キュンキュンしすぎであるw
その原動力が思慕とか恋とか愛情なんてふわふわしたものではなく、意地っ張りとか負けず嫌いとか向こう気の類である事にこそときめきを生じさせているあたりに、彼女達の業のようなものを感じてしまうのでありました。

しかし、ヴィレムがこの時点で「インプ」と関わりがあったとは。これがのちの下地になっていた、という可能性もあるんだろうか。

また、聖剣四方山話じゃないけれど、幾つかの聖剣について来歴が語られることに。というか、この時期に誕生していた聖剣もあったのか。人類の時代としては最末期にあたるのだけれど、アイセアの愛剣であるヴァルガリスもその一つだったとはねえ。

なんて事を考えながらラストシーンまで読んだら、なんか目を擦って見直してしまう事が書いてあったんですけど。
鬼か! 作者は鬼か! 
いや待って。これって初情報ですよね。これまでの本編シリーズでこの事書いてありましたっけ。「すかすか」の最終五巻でリーリァが星神エルク・ハルクステンを討ち果たしたあのシーンですべては終わったものだと思っていたんだけれど……。
むしろ、ここで終わらせないとか鬼じゃないですか? だって、人類の終末はまさにここからだってのに。そこにはもうヴィレムはいないというのに。
これまでの人生、ずっとまとわりついてきた柵ともいうべき肩書のすべてを失って、ある意味すべてから解放されて、でもやっぱり正規勇者の常として一番守りたかったもの、一番大切だったものは失ってしまっているというありさまを、なおも彼女に突きつけるというのか。
酷すぎるだろう。それこそ、ここで終わっておけば満たされずとも幸せだったかもしれないのに、という案件じゃないですか。ヴィレムがもういないって、本当の絶望じゃないですか。
これでもかこれでもかと際限のない奈落へと突き落とされていくの、リーリァさん作者に愛されすぎてやしないだろうか。
人類にも、リーリァ個人にももう救いたるは残っていないように見える。それでもなお、彼女は存分に生き切る事が出来るのだろうか。彼女にもう本当に救いは残っていないのだろうか。
彼女の本当の最期を、この続きで見せられる事になるのかと思うと、怖くすらありますよ。

シリーズ感想