【昔勇者で今は骨 5.東国月光堕天仙骨無幻抜刀】 佐伯 庸介/ 白狼 電撃文庫

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骨になっても心は勇者な冒険者(※ただし骨)が往く、異世界ファンタジー!

「まーじーでー……転移してるじゃん、これ」
森中の見知らぬ転移装置を抜けると東国であった――仲間と離れ離れになって、師匠の故郷・東国ヤマへと転移したアル。
すわ妖かと怪しまれながらも、剣の師匠マガツのもとへと向かってみれば、そこは魔王軍を離反した堕天王と戦の真っ最中だった。しかも、その軍は古の秘密兵器「月」を擁した最悪の布陣で……。
「出来なきゃまた戦争だ。言っておくが、その場合は容赦せんぞ」
人と和平を目指す魔軍令フギムニからは戦のついでに取引を持ち掛けられ――
「魔王以来の神命だ、我が勇者」
果てには太陽神マルドゥから討伐の神命まで下ってしまい……人から魔から神までも、頼みの綱は骨勇者!
コツコツ世界を救う異世界ファンタジー、待望の最新刊!

これ、サブタイトル!! こういうの好きだわー。ただ語音、音韻的にはあと四文字八音あったらスッキリだったんですけどね。
前巻がまさにクライマックスオールスター総力戦な内容で、シリーズも完結だと思っていた所にまさかの続編続行ということで狂喜乱舞してしまいました。
今回は舞台を和風の東国に移しての、ド派手な剣劇バトルでありますのよ。前回の総力戦で力尽きるどころか、スケールも相変わらずどでかいエンタメ大作となっておりました。
表紙絵だけだと、新キャラ二人でしたしあらすじからするとアルだけが東国に飛ばされたような感じに見えたのですけれど、ちゃんといつものメンツ込みで東国に飛ばされた上での、バラバラにバラけて着地といった体で、表紙を捲ったページには見開きで表紙絵の続きというか右側も描かれており、そこには今回出演の敵味方問わず全員盛り込み、な総登場絵図になっていてなかなかの壮観でありました。
前からの傾向ですけれど、この作品って骨勇者なアルだけが引っ張る物語じゃなくてメインの登場人物がみんな主役張ってそれぞれの物語を引っ張っていく群像劇の体もなしてきてるんですよね。だからこそ、前回なんぞの総力戦が映えたというのもあるのですけれど。今回もチームがバラけた分、ハルベルとミクトラがそれぞれに仲間を引き連れてそれぞれ東国各地でドラマを牽引していってくれます。これって物語の焦点というかエンジンがそれぞれ別に起動しているようなもので、あっちこっちで話がグワングワンエンジン吹かして回して動かしてくれるものだから、全体がすごくパワフルになるんですよね。
下手すると焦点がとっ散らかって尻すぼみになってしまう危険性もある群像劇ですけれど、こっちはもうキャラが立ちに立ってるものですから、アルが居なくても自由闊達に動きまくってくれる。
その末に、物語がクライマックスへと向かう中で一同に結集するという形になるので、それぞれ動きまくっていたエネルギーが一点集中されるということもあり、さらに盛り上がってくるんですよねえ。
このへんの動かし方なんぞ手慣れたもの、というほどになってきているような気がする。
勿論、新キャラ・ヤトノ。アルのヤギュウ流の兄弟子にあたる若きサムライとアルとの剣客二人旅もさすがは主人公という活劇っぷりで。今回は特にヤギュウ流の看板にまつわる剣術モノとしての見せ場も多く、剣撃アクションをこれでもかと堪能させていただきました。
勇者のパーティーメンバーであるマガツ師匠の出番が必要となる段階となると、ただの撃剣チャンバラどころではなく、空間斬ったり次元斬ったり幻で斬ったりとドンドン自重無くスケールデカくなっての神を斬り星を斬るド派手なチャンバラになっていくのですが、これがまたこれで楽しくて楽しくて。
精妙な理合に基づく剣撃と、一刀で神も仏もぶった切るデタラメ剣法、これを両方並び立てて両方両立存分にやったるぜー、となってくれるとそりゃ楽しいってなもんですよ。
しかし、勇者のパーティーメンバーってどんどん非常識というか人間辞めてってるよなあ。骨になってる勇者アルヴァスが段々可愛く思えてきたぞ。
いやでも、「まーたすぐパクる」とマガツ師匠に呆れられてるように、アルのあれ見せられるとやっぱり「こ、こいつー」ってなりますよね。やっぱり勇者が一番非常識だ。
しかし、東国のサムライ連中もみなぶっ飛んでますねー。精鋭とはいえ、そこらの一般武士まで一騎当千じゃないですか。なにあの弓兵たち。高射砲かよ。あれ冗談じゃなく爆撃機くらいなら落とせるんじゃない? 
結局、堕天軍を東国全体ではなくムデ藩国だけで撃退した、という形になりましたしね。ここ、モデルがおそらく仙台藩、伊達家で大藩ではあるんですけど、それでも世界相手に戦争してる魔王軍の一方面軍を一藩で撃退したんだから、東国の武力たるや凄まじいの伝わります。
もちろん、アルたちやヤギュウ流の合力あってこそではあったのですけれど。

今回は既存のキャラクターたちもデザイン一新されていて、特にハルベルはイメージだいぶ変わったんじゃないだろうか。見た目にも結構しっかり格好良くなった気がする。アルにも、勇を与える側になったと評された彼女。もう既に一人の主人公として独り立ちしてるかのような立派さで。色んな意味で頼もしくなったよなあ。そのハルベルの片腕として八面六臂の活躍をしてるデケニー。いやこの蜘蛛ちゃん、毎回毎回大活躍してますけど今回は特に居なきゃ死ぬというくらいの勢いでMVPだったんじゃないですか? 色んな意味で便利過ぎる。
そして強くなってるはずなのにどんどん可愛さが強調されてヒロインロードまっしぐらな女騎士ミクトラ。今回は東国舞台ということで、対魔忍風味なエロタイツを装備するはめに。うん、エロ可愛いですよ。大丈夫大丈夫、エロいだけだから。
そういえば、表紙の青い鬼のおねーさん。あれ東国で登場の新キャラじゃなくて、苦労人こと魔軍令のフギムニさんだったのか。こんなシャープエッジな見た目のおねーさんだったのか。こう、見た目からして苦労背負ってるなあという感じの社畜系の顔しているのかと思った(失礼
これもう出来るお姉さん、ビジネスウーマンですよね。いや、実際出来る人なんですけど。
今回実際対面して話す機会があり、フギムニさんとは踏み込んだ会談をすることになりましたけど、こうなると先の展開どうなるんでしょうね。あらかたやばい案件は片付いたような気もするのだけれど、この人の運の悪さというかしんどいめに会うフラグを背負ってるキャラからするととても簡単には思う通りにいかないだろうし。彼女との会談自体が次の布石になっているんだろうか。

ともあれ、今回のテーマは失った居場所。敵にも味方にも、その失った居場所を取り戻すために必死になって突き進む人たちが出てきます。そうやって突き進むことで、新たに居場所を失う人たちが現れてしまっても、それはもう止めることができない。
ハルベルの示した勇は、そんな居場所を奪うものたちへの怒りであり、失った人たちが諦めずに踏ん張れる力になりました。
ルシフルスもヤトノも、本当に取り戻したい居場所はなんだったのか。それを見失ってしまった者と、新たに見出すことのできた者の差でもあったように思います。
そもそも、居場所を必要としていなかった人なんかもいるしなあ。いや、柵をぜんぶ捨て去り自由の空に羽ばたいた、師匠にとってはそこがずっと見つけられなかった本当の居場所なのかもしれません。
然して、アルには居場所なるものはあるんでしょうかね。この骨にも、そういうのなさそうなんだよなあ。せめて、隣を歩こうという「人」が居場所になればいいなあ。

シリーズ感想