【俺の女友達が最高に可愛い。2】 あわむら赤光/mmu GA文庫

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バイト先の女友達も最高に可愛い!?
「お前、俺のこと好きだったの!?」
中村カイ、16歳。人生で初めて女の子から告白され、しかも相手は美少女――仲良くしていたバイトの後輩、アニメ大好き布袋琴吹さん!
青天の霹靂とも言えるこの事態にカイの頭は大混乱。琴吹は嫌いではないが「友達として好き」と「異性として好き」の境目はどこにある!?
一方、琴吹は果敢な猛アタックで、
「でしたら、まずはお試しデートで」
と、絶妙な提案を持ちかける。豆腐メンタルなはずの後輩の、懸命かつ健気なアピールをカイも無下にはできず、お試し交際してみることに。
そして始まる、人生初ガチデート。でもその場をジュンに見つかり――
ピュアフレンドラブコメ第2弾!!
おぅおぅおぅ、くっそ可愛いなあこの後輩ちゃん!
まずこの表紙絵が最高じゃないですか? これほど表情豊かでキャラクターが伝わってくる日常のワンシーンを切り取ったような表紙絵はなかなか見ないですよ。
お試しデートってラノベのラブコメではなかなか実行まで漕ぎ着けられないコンテンツなんだけれど、あっさり何の障害もなくデートまでたどり着けた上でちゃんとデートとして二人で一日中存分に楽しめた、という所に中村灰という少年のラブコメ主人公としての類を見ないポテンシャルを感じるのだ。
この子、一般的なラブコメ主人公と戦っているステージの種類が違う感じなんだよなあ。ラブコメ的環境や人間関係に対しての当事者意識というか視点が一般的なそれとどっか違うんですよね。自分の中のロジックというか。恋愛が面倒くさいという考え方自体は珍しくないと思うのだけれど、それを女の子と接する事が面倒くさいとイコールになっていない、或いは同世代の女性に対しての接し方が熟れていて意識の壁を持っていないというか。
よっぽどジュンに女の子との接し方を鍛えられたのか。いや、そもそもジュンとこういう関係になれた時点で女性への接し方が違うんですよね。決して相手を女として見ていないわけじゃなく、ちゃんと異性として認識している所なんぞも顕著だし、凄く尊重もしているし。馴れ馴れしいわけじゃないんだよなあ。
それは藤原怜奈との関係でも見られるところで、彼が女性と「友達」を出来る資質なのだろう。
でもこういう男の子って、女性の側からしても負担が少ないと言うか楽なんですよね。いや、楽どころか男に対して、というか他人に対して接するのに問題を抱えていたり色々と気を回したりしてエネルギーを使ってるタイプとか逆に圧を与えたりするタイプの女の子からすると、中村灰って子はちょっと特別感があるのかもしれない。
中でも布袋琴吹という娘にとってこのバイト先輩は、自分のクソザコメンタルに基づく結構面倒くさい言動を十全理解してくれた上でパーフェクトに対応してくれて、無理することなく自分の趣味とも相性良く、つまり何の負担も感じずひたすら楽しく一緒に過ごせる異性って、人生において一度出会えるか否か、というとんでもねー神物件に見えると思うんですよね。楽どころか、面倒くさい自分をあるがままありのまま見えてもニコニコと楽しそうに受け止めてくれる。そりゃあ、好きになるよねえ。
多分、琴吹という娘もカイとそんなに変わらないレベルで、恋愛とか面倒くさいと思うタイプだと思うんですよね。でも、そんな面倒くさい諸々が全く気にならなくなるのが、異性を好きになるという事。恋愛感情なのでしょう。面倒くさいことが、楽しくすらなるのが恋なのでしょう、夢中になるって事なのでしょう。
しかし、それはどうしたって琴吹からの一方通行に過ぎなかった。
多分、カイにとっての女友達が琴吹だけだったら、彼女と過ごす楽しさは恋愛を面倒に感じる思いを内包していても手放せないものだったでしょう。面倒を踏まえても恋人になる事に否はなかったんじゃないでしょうか。
でも、カイにはもうジュンが居た。ジュンと過ごす時間こそ彼にとって一番であり、何よりも優先される事だった。彼の人生にはもうジュンという存在が欠かせないものになってしまっていたのだ。
それを、布袋琴吹は知ってしまった。自分が彼と恋人となることを望んでも、カイは必ずジュンと友達として一緒にいる時間の方を選ぶだろうという事も、それが選べないのならジュンと一緒に居られなくなるのなら、自分と恋人になる事自体を断ってくるだろう事も。
琴吹はわかってしまうくらいには、このバイト先輩が自分を理解してくれるのと同じくらい、彼の事を理解していたが故の、懊悩の始まりであった。
懊悩の末に、琴吹はカイにジュンと過ごす時間よりも自分を選ぶメリットを、恋人になる事で得られるものの魅力を提示することで、体当たりの自己PRで訴えてくるのだけれど、それは相手にも自分にも1か0かを強いる強硬策だったんですね。否応のない選択の強制は、全部を得るか全部を失うかのハイリスクハイリターンで。同時に今のカイに対しては無謀の特攻でしかなかったのである。
それだけ、琴吹も切羽詰まってたんですね。クソザコメンタルからさらに余裕が失われてはそりゃあ玉砕必至をいい考えと、必殺の攻撃と思ってしまうかー。
カイはよく致命的になる前にインターセプトできたものである。いや、本来なら琴吹のそれは一線を越えたと言える段階だっただけに、カイは琴吹が自分から外そうとしたハシゴを捕まえて下ろしてあげたとも言えるんですよね。バッサリと切り落とすことも何も考えずに流される事もせずに収められたあたりは、やはりこの男ちょっとモノが違う部分があると思います。
それでも、クソザコメンタルにとって自分の暴走を気付かされるというのはダメージが大きいのは事実。なけなしの勇気を特攻に費やしてしまって、この気まずい状況をもう一度自分からなんとかする気力が琴吹にあるはずがなく、まあ動けなくなっちゃいますよね。
それに対して、速攻で連絡取ろうと自分から動いてるカイはほんとこいつ偉いです。でも、どれだけ連絡取ろうとしても全然反応なくてめげてしまうのも当然ちゃ当然なんですよね。
そこで諦めてしまうのか。このまま気まずいまま自然消滅してしまうのか。所詮はバイト先で一緒なだけの学校も違う年齢も違う者同士。そのバイト先でも指導役だった前までと違ってシフトもだいぶ重ならなくなっている現状、そのままズルズルと現状を続けていけば、お互い二度と前みたいな気安い関係には戻れなかったでしょう。
それでいいのか。それでなくなってしまってもいいのか。布袋琴吹と過ごす時間は、無くしたくないと思えるだけの楽しい時間だったのか、琴吹はなくしたくない大切な友達だったのか。
それをわからせ思い出させてくれるのが、背中を押してくれるのが、ここぞとばかりのジュンの親友ムーブなんですよねえ。
ただ一緒に居て楽しいだけじゃない、以心伝心ってのは遊びだけじゃなくほんとに真剣で必死な状況で心を重ねてくれること。その意味でも御屋川ジュンという少女は中村カイにとっての唯一無二なのだろう。
友情も恋も、タイミング次第で簡単に失われてしまうものでもある。ちょっとしたすれ違いで遠ざかってしまうものでもある。それを自分から離さないように

そうしてカイと琴吹は気まずい関係を解消でき、元の位置まで戻った上でコスプレという趣味を通じてより親密に打ち解けた友達として仕切り直し、また琴吹はジュンと本気で遊ぶことで友達として縛られずに楽しく過ごすのが今の自分にもぴったり合うものだと認めて、ジュンと遊ぶのはカイと一緒に過ごすのと同じくらい楽しいと受け入れることになる。

そこから、布袋琴吹という娘が本当は何を考えて動いてたかは描かれていない。ただ行動だけが描かれる。友達として、カイと再スタートした琴吹。でも、彼女の本心はどこにあるのだろう。
きっと、好きという気持ちはなくなっていないだろう。あの感情はなくなるものではない。封じ込められるものでもない。ならば戦略転換か? 強攻が文字通り自爆特攻になりかけたのを反省し、友達という立場からの浸透戦術で徐々に自分の存在をカイに刻み込んでいく方針に転換したのだろうか。
友達として、まずカイにとってのジュンを上回る。それは、カイとジュンの様子を見て自分もあんなふうに先輩となりたい、とベッドの中で悶え転がった琴吹の様子を思い返せば、決してなくはないと思うんですよね。
でも、恋人はまだ無理で友達のままがより楽しいというのも嘘じゃなく、本心でもあると思うんですよね。今の自分では、カイの恋人にはなれない。なれるところまで、彼の心の居場所にたどり着いていない。
でも、琴吹が現状の友達関係を維持していくだけのつもりじゃないのは、ラストシーンからも伺える。友達という枠組みのまま、実際のカイと自分の友達関係の内実をどんどんと更新していくつもりなんじゃないだろうか。先へ先へと進んでいくつもりではなかろうか。
閾値を超えるのを虎視眈々と待つ、という風に。
でも、ジュンとカイの関係はその閾値を最初からぶっ千切ってる関係でもあるんですよね。既にもう、望めばどこまでもいけるだけの到達してしまった関係の深度でもある。だから、二人は現状維持で満足していて、友達という関係に対する固定観念やジュン兄の王子先生がマメに設置する制止ラインの範疇で収まっているとも言える。時々、無意識に友達関係というレベルを振り切った行為をナチュラルにしてしまっているけれど、友達という関係の標準点は早々変わらなかったと思う。
でもむしろ、琴吹がぐいぐいと友達のまま友達ならこれも普通、という行為を先に進めていってしまうなら、この友達の標準が変わっていく。ジュンとの関係もじゃあ友達なんだからこれくらいしてもいいよね、という具合に心理ハードルがなくなっていく可能性は否めない。
既に膝枕とか恋人もかくやという行為を平然としてる二人に琴吹が負けずに追いすがった場合、ジュンとのそれがほんとなんでもありになりそうじゃないですか。
琴吹との友達関係強化は呼び水、或いは火に注ぐ油、既に通常と全く異なるレベルの違う友達関係がこれも自分たちのような友達同士ならありというバイアスになるんじゃないか。
ジュンとカイの友達関係の、さらなる起爆剤として刺激とか対抗意識によるエスカレートではなく、友達同士ならこれくらい当たり前という意識の基準範囲の通常からの逸脱、つまり二人にとっての自然がもっともっと深い所に行ってしまうのを期待してしまうのだ。
まあそうなると、琴吹ちゃんも同様にとんでもない深みに一緒にハマっていく事になるので、ほんとこれどうするんだ、という人間関係になってしまい兼ねない期待なのだけれど。
いやしかしこれほんとに、着地点どのあたりに見据えてるんでしょうね。はたして、友達を最後まで貫いて友達関係の新たな地平を切り開くのか、それとも恋愛は面倒という意識をぶち破るくらいの好きを芽生えさせて、やっぱり友達ではいられなかったというランディングにするのか。
いずれにしても、この子たちが本当に心から望んで喜べる結末が見れたらなあ、と思います。個人的には行き着く所まで逝ってしまったアブノーマルなまでの友達関係の成れの果てを見てみたいという歪んだ願望ガガガw