【天才王子の赤字国家再生術 7~そうだ、売国しよう~】 鳥羽 徹/ ファルまろ GA文庫

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ディメトリオ皇子とその家臣達は、会議の場で困惑していた。
(どうしてこいつがいるのだろう)
会議に参加しているナトラ王国王太子ウェインも思っていた。
(どうして俺がここにいるんだろう)
三皇子のいがみ合いで長らく膠着状態が続いてきた帝国の後継者争い。だが、長兄ディメトリオが戴冠式を強行するため兵を挙げたことで、状況は大きく動き始める。
ロウェルミナ皇女から協力要請を受けたウェインは帝国に向かうが、なぜか一番勝ち目が無さそうなディメトリオ派閥に参加する羽目に!?
「だが、最後に笑うのはこの俺だ」
謀略と戦乱が渦巻く第七巻!

ロワとウェインが仲良すぎて、ほんとなんだコイツらw
ウェインに協力要請しておいて帝国に招き入れておきながら、速攻で自分の所に着く前にとっとと陥れるとか、ロワさんウェインの事好き過ぎるでしょう。
相変わらずなんでだー! と頭を抱えながらロワが何かしてくるのに備えてちゃんとカウンター仕込んでるウェインもウェインなんだけど。君ら、相手が絶対仕掛けてくると信頼した上で嬉々として謀(はかりごと)を投げつけ合ってまあ、なんというか海辺で水を掛けあってキャッキャとはしゃいでいるカップルか!
ロワもウェインも相手への悪意とか黒い感情とか皆無なんですよねー。これだけ後ろ暗い気持ちも悪意も善意も皆無で、めっちゃ楽しそうに相手を陥れようとするの、もう仲良しか!てなもんである。
だって、本当に楽しそうなんだもの。ウェインって誰彼相手問わず四六時中謀略を張り巡らせてるタイプのヤベー人間ですけれど、別に謀略そのものを楽しむ質でも相手を陥れる事に喜びを感じるような性癖の持ち主ではありません。でも、ロワ相手のときはやたら楽しそうなんですよね。
勿論、本気ではあるのですけれど二人してどこか通じ合っている。お互いに盤面を挟んで向き合って駒を指しあう盤上遊戯に興じているかのような、思いっきり遊んでいるかのような。
二人して相手を崖っぷちに追いやって蹴落とそうとドタバタ走り回った挙げ句、二人してやべー事になったら途端にこれまで相手を蹴り落とそうとしていたのをなかったかのように、息ピッタリ以心伝心で見事な連携での共闘を見せた、と思ったら危地を抜けた途端に事前に仕掛けていた相手を出し抜く謀略を発動させて「ざまぁ!」とドヤ顔する始末。
お互い、ドヤ顔して相手に「ぐぬぬ」と悔しがらせるためにやってんじゃないか、というどこか子供っぽい稚気があるんですよね。なので謀略にありがちな陰湿さが殆ど感じられない。だからこそ、遊んでいるように見えるし、君たち仲良すぎ! となってしまう。
まあ、三人の皇子はいい面の皮である。ウェインもロワも自分自身も駒として盤上にあがってはいるのだけれど、実際の所三人の皇子はロワとウェインの対局の駒としてイイように好き勝手に振り回され利用され、結局二人の蹴り落としあいの煽りを食ってこの三人の皇子が崖下に転がり落ちていったわけですから。
とはいえ、変な遺恨は残さないのがウェインらしくて、あれだけ散々利用したとも言える第一皇子のディメトリオに恨まれる事なく、むしろ彼を捕らえていた柵、或いは呪いのようなものを解くきっかけを与えてるんですよね。駒として利用しながら、不思議とウェイン王子って相手のことちゃんと人として相対している所があるのが面白い。
しかしロワはあれですねー、詰めが甘い。言葉としては変なんだけど、勝負に勝って勝負に負けた、みたいな。目的は達したはずなのだけれど、ディメトリオの最後の一指しのお陰で目も当てられない負債を抱えさせられた上での目標達成で、むしろロワさん涙目みたいな。
結局、ウェインにも毟られること決定で、帝国の後継者レースという観点では見事に皇子三人を出し抜いて勝負に勝った! はずなのに、ディメトリオには最後に出し抜かれ、ウェインには美味しいところ持ってかれる事になり、勝負に勝って「ぐぬぬ」なロウェウミナ皇女、なんかもうロワだなー、という愛嬌があってこの娘ほんと好きです。
まあウェインが毟り取った功績、ちゃっかりフラーニャが立てた功績に仕立ててるあたり、ただでは転ばぬ皇女様である。

そして、ウェインとロワがバチバチと張り合って遊んでいる一方で、ナトラ王国の妹姫フラーニャがウェインの言う通りに動くだけではなく、自分で考え独自に動き出してるんですよね。マスコットではなくちゃんとした王族として兄を助けたいという想いからであると同時に、兄に縛られない独自の派閥を持とうとしはじめている所に、この妹姫さまの急激な成長を感じさせられる。
フラーニャに関してはウェインとは別のアプローチから「フラム人」問題に関わってきそうな気配もあるんですよね。彼女が聞いた、かつて西側にあったとされるフラム人の国、そしていつか現れるとされるフラム人に百年の繁栄をもたらすとされる赤い髪のフラム人の英雄の伝説。今後物語のなかでフラーニャがどんな役割を帯びていくのか、興味深いところです。

次回、舞台は再び西側へ。何だかんだと友情と親愛と信頼あるロワとは異なる、人面の妖怪どもの巣窟である選聖侯らが一同に集う選聖会議に参加することになったウェイン。さあ荒れも荒れたり激動波乱の幕開けだ。